迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

すべては紙切り縁切り結び。

2024-06-20 23:42:00 | 浮世見聞記
橫濱人形の家の「いざなぎ流のかみ・かたち─祈りをこめたヒトガタたち─」展を觀る。



土州北東部の山間部に位置する香美市物部町に、大昔から傳承されてゐる独特な民俗信仰「いざなぎ流」を、



やはり特異な姿をした御幣の展示を中心に紹介した、郷土性と土俗味あふれる企画展で、



その人の身辺や我が身に起きる現象はすべて自然に住む精靈の為せるわざであり、“太夫”と呼ばれる呪術師はその状況に應じた形の御幣を作って祈祷する。



いはゆる指南書の、決して流麗ではない字体で綴られた段取りを見てゐると、神佛神靈との自然を仲立ちにした共生ぶりが滲み出てゐて面白いものがあるが、祈祷で用ゐられる御幣はあくまで呪術の道具であり、一見可愛らしく映ってもとんでもない魔力を秘めてゐるものであり、愛玩具としての人形と同一にはならない。



やがて消えるかもしれない地方の民俗文化の紹介としては興味深かったが、しかし人形博物館の企画としてはなんとなく見當違ひな印象だったのは、そのあたりの認識ゆゑかもしれない。  


「いざなぎ流」の衰滅を危惧しつつ平成末期に亡くなった“太夫”が遺した、

『触らぬ神に祟り無し』

と云ふ意味の言葉がこの企画展に見事なオチを付けてゐて、たしかにそれが一番の防御だと納得す。











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