●渋谷５８

派出所内

　宏、ドアの窓際で、背伸びをして外を見ようとする。

　派出所前は人だかりで、ダンサーたちが全く見えない。

　博恵は、スケベな宏を見て、怒っている。

博恵「何を、やっているのよー？」

　全然、見えない。博恵には怒鳴られる。

ふてくされながら、ドアから離れて、イスに腰掛ける宏。また、携帯電話で文字を打って、遊びだす。

交差点

　前後左右に動いて、全員が踊っている。
　手を叩いて踊っている、女性たち。

　お立ち台で、笑顔で踊っている、リーダー。
　腰をくねらせて踊る、女性Ｇ。

　背中をのけぞらせて踊る、女性Ｈ。
　両手を挙げて踊っている、女性Ｉ。

　女性Ｊ、開脚して高く飛び上がる。開脚したまま地面に降り立つ。

　お立ち台で、バック回転をするリーダー。
　手を使って踊っている、女性たち。

　全身を駆使して踊る、女性Ｋ。
　両足を使って踊っている、女性たち。
　
上空

　滞空している、兄彗星。白く光っている。

　周囲からキラキラ輝く、粉雪のような物質を放出し始める。

　徐々に彗星の全体が、まぶしく光り輝き出す。

派出所内

　ドア越に、背伸びをしてダンサーたちを見ようとする博恵。
　人の黒い頭が多すぎて、全然見えない。

　自分も踊りたくて、ウズウズしている。全身が微妙に動いている。
　手先がバタバタと動いている。足でステップを踏んでいる。

　宏、イスに腰掛け、携帯電話でメールを送信している。

博恵「宏ー。あたしたちも踊ろうよー」

宏「いやーだ」

博恵「いいじゃない。この交差点で踊れるなんて、２度とないんだからー」

宏「２度も、踊りたくなーい」

　頬を膨らませる、博恵。ふてくされる。
　携帯電話で遊んでいる、宏。

博恵「ねえ、どうやったら、あんな人たちが集まってくるの。どこかの企業で、オーディションでもやったの？」

宏「いや、俺の趣味です…」

博恵「何、バカなことを言っているのよ…」

　あきれ返る博恵でした。