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原初美術の誕生 1 : その意味するものとは

2012年08月31日 | 連載完 原初美術の誕生


< ビーナス像 約25000年前 >

既に「心の起源 1~21話」で、宇宙誕生から現代まで、心がどのようにして生まれたかを見ました。

人類らしさとして大きな画期となったのは、12~14話で説明している直立歩行と家族誕生ですが、その後に続く氷河期の美術造形も重要です。

この後に、良く知られている農耕革命、都市革命、精神革命へと続いて行きます。

今回の連載は、ヨーロッパで起きた約3万年前頃に始まる人類最初の爆発的な美術造形時代を追います。





< シューヴェ洞窟壁画 約32000年前 >

それではなぜこの時期の美術造形が重要なのかを考えます。

この美術造形の特徴を列挙します。

1. このデザインのほとんどは地球上最初のものであった。
2. 概ね突如として造形活動が始まり、1万5000年間も続き、その量は多い。
3. その絵画や彫像には時間的な発展経過、地域的な文化性がある。
4. その造形物から象徴性、物語性、写実性を感じることが出来る。
5. やがてその活動は氷河期終焉と共に突如として衰退し消滅する。




< 振り返るバイソン 約15000年前 >

それらに関わる重要な状況は以下の通りです。

1. 既に誕生していた現世人類(クロマニヨン)がその担い手であった。
2. 氷河期の極寒のヨーロッパだけが舞台であった。

これらのことからこの時代は人類の精神史上、非常に重要であることがわかります。

1. それまでの道具や住居とは異なり、何ら生理欲を満足させない物が作られた。
2. それは新しい知能(芸術、宗教、博物学、技術的知能とそれらの統合能力)が誕生したことを示している。
3. 他の地域では起こらず、また氷河期だけに呼応することとなった。

これらのことは、それまでの進化で得た利他行動などの社会行動や家族愛の獲得とは大きく異なるものだった。




< addaura洞窟壁画 約10000年前 >

美術造形から覗えることは、知能が一段と高機能な領域に突き進んだことを示す。

その一方、突然変異とするには短期間であり、時期と場所が限られることからしても、社会や文化がその知能を開花させた可能性が高い。

つまり、この美術造形活動は地球上最初の社会や文化による精神史の始まりと言える。

これへの理解が深まれば、人類の心が如何にして遺伝の上に社会と言う環境が影響していることがわかります。

さらにその社会の重要な要素が何かも理解出来るはずです。



次回からはこの様子を見ていきます。










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