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ピケティの資本論 26: グローバル化を越えて 1

2015年06月15日 | 連載完 ピケティの資本論



< 1. 2013年、スペインのゼネスト >

今まで、社会変革の鍵を握る中間層の立場を見てきました。
これからは、最大の障壁「グローバル化」に対する意識を見て行きます。

はじめに

問題はグローバル化によって世界が一つになることではありません。
問題は、それを積極的に利用し利益を得る人と、国内に閉じ籠もりその弊害に無関心な人に分かれることにあります。
これで事が済めば良いのですが。

ピケティは格差の是正に世界的な課税が不可欠としています。
しかし、多くの人は「世界的な・・・」と言われると、尻込みをするか、よそごとと考えてしまうのではないでしょうか。
まして、現状で順風満帆な実業家やエコノミストは、ピケティの提案を一蹴することでしょう。
その提案が重要であればあるほど・・・。

大事なことは、グローバル化による弊害と恩恵を知り、我々が如何に対処すべきかを問うことです。


グローバル化は悪か?
いくつかの弊害の代表例を見ておきます。

1. ヘッジファンドなどの暗躍: 大量の投機資金が世界中で弊害を撒き散らしている。
この連載の18~20話で取り上げた、投機家ジョージ・ソロスが起こしたアジア通貨危機が代表例です。
投機による必需品や投機商品の値上がり、逆に株価や為替の暴落による大量失業や倒産、福祉予算の削減などが国民を苦境に追い込みます。

2. バブルで巨大な利益を上げる銀行: 金融緩和策が莫大を富の偏在と次の破産を生む。
2009年、欧米の銀行上位20行の利益は約1000億ユーロ(13.5兆円)だった。注釈1
この年は世界金融危機の真っ最中で、EUの実質経済成長率は最悪の-4.5%になり、翌年には欧州金融危機が始まりました。

この利益の源は、金融危機の際に、欧米の中央銀行(ECBとFRB)が超低金利で民間銀行に2兆ユーロ融資したことに始まる。
この資金を平均4%の利ざやで1年間又貸しするだけで民間銀行は上記利益の80%を手に入れることが出来た。

問題は、有り余る資金が際限なく貸し出され、やがてバブルと崩壊が始まり、残ったのは破産と借金で苦しむ人々だということです。
町の闇金融の悪質さは問題になるが、借り手の南欧(スペインやギリシャ)の悲劇は、それと比べものにならない。
これがほぼ十年毎のバブル崩壊の度に繰り返されている。




< 2. 多国籍企業 >
上の写真: 多数の欧州企業がバングラデシュで生産している。
下の写真: 多国籍企業がフィリピンのバナナ栽培に関わっている。

3. 多国籍企業の暗躍: 大国を後ろ盾に後進国を牛耳り世界を貪る。
1984年、インドの米国企業の化学工場で有毒ガス流出事故があり、数千人が無くなった。
インド政府は経営陣を起訴しようとしたが、米国国務省は引き渡し要請を拒んだ。

巨大な多国籍企業が後進国に、都合の良い契約を押し付け、政府要人を賄賂で手なずけることはよくある。
そして、その国から資源は奪われ、国民は劣悪な環境で働かされ、国土は環境汚染が蔓延することになる。

まとめ
グローバル化の弊害を挙げるときりがない。
この問題は主に大国の経済と金融活動に端を発しており、それが遠因になって各地の紛争すら生んでいる。
大国の武器産業の隆盛も、紛争に油を注ぐ結果になっている。

次回も、この手に負えそうにないグローバル化について見ます。


注釈1: 2009年の為替レート1ユーロ135/円で計算。





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