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ピケティの資本論 22: よくある偏見 2

2015年06月01日 | 連載完 ピケティの資本論

< 1. ニューヨーク >

今回も、よくある警世の書に対する偏見について考えます。

はじめに

ピケティの本にこんなイメージをお持ちの方がいるかもしれません。

「資本主義を否定したら共産主義ではないか!」

このことについて考えます。



< 2. 上からロシア、スウェーデン、スペイン >

資本主義か共産主義か? この質問に意味があるのでしょうか
ピケティもクルーグマンも資本主義を否定していません。
強いて言えば、クルーグマンはかつて良い時期(1950~1970年)があった、それが懐かしいと言っているようです。

ここで少し、主要国の現状を簡単にピックアップしてみましょう。

北欧は資本主義体制ですが福祉国家で、国民の租税と社会保障の負担は合計55%ほどある。
これらの国々は一人当たりのGDPや世界的な機関が発表する幸福度、人間開発指数などの指標がいつもトップクラスです。
同じ資本主義体制でも日本と米国では、現時点で格差に違いがあります。
不思議なことに、アングロサクソン系の国家で格差が大きく、同じ資本主義でも欧州大陸では格差が少ない。
中国は共産主義体制ですが、市場経済を取り込んで成長を続けています。
概ね新興経済国は、中国も含めて格差は大きいが、大半は米国より少ない。

つまり、資本主義体制だからと言って、一括りには出来ない、中身は千差万別なのです。
格差の差異は、各国の歴史や政治意識に大きく左右されているようです。

一方、経済活性化の為に海外から大量の集金を集め、暴走して苦境に陥ったアイスランド。
借金で経済発展を遂げたがバブルが弾け、各国への返済に喘いでいるスペインとギリシャがあります。
多くの国が経済発展を望み、ほぼ10年毎に国境を越えたバブル崩壊を繰り返し、世界経済は喘いでいるように見える。
問題は一国の経済体制に留まらない。

一方、ソ連は平等を目指し共産主義体制を敷いた結果、崩壊した。
共産主義体制の失敗は経済理論の間違いもあるが、最大の要因は経済を中央で総べてコントロールしようとしたことです。
そこには意欲向上策として私的な生産や販売の余地を残していたが、市場経済の不在が致命症となった。
政治においても国民の意見を吸い上げる制度はあったが、一党支配と官僚制がそれを潰してしまった。
結局、一党支配、官僚制、市場経済不在が失敗した最大要因だった。

まとめ
確かに、資本主義体制の中で、多くの国が経済発展と膨大な富の扱いで困惑しているようです。
一方、共産主義体制の国々も同様に悩みを抱えている。
どちらが最良かと問う前に、何が最重要な要素かを問うべきです。

つまり、過度な官僚制と一党支配、また放任の市場経済と適正を欠いた税制も問題だとわかりました。
これを改善出来ればよい、つまり民主主義体制が残っている間なら可能なはずです。

一番重要なのは民主主義であり、これにより最適な政治経済体制を作り上げることです。
その為にも、一握りの超富裕層に政治を牛耳られないように格差是正が必要なのです。



次回に続きます。



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