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ピケティの資本論 25: 私達の心に潜む厄介な心理 3 

2015年06月13日 | 連載完 ピケティの資本論

< グラフ1.日本の所得階層別の所得推移、by「The World Top Incomeがs Database」>

前回、米国の所得格差の状況を見ました。
今回は、日本の中間層にとって所得格差はどれほど進行しているかを確認します。


グラフ1の解説

所得階層を上位から0.01、0.1、0.5、1、5、10%、また下位から90%に分けている。
1980年の平均所得をそれぞれ100としている。
人口の90%を占める下位90%(赤線)の所得が全期間で19%低下している。
逆に、上位0.01%から10%の所得は総べて増加し、最上位層0.01%に至っては72%増加している。
この傾向は前回検討した米国と同様です。

それでは日本の中間層はどうなっているのだろうか


< グラフ2. 様々なHPより借用したグラフ >
解説: この三つのグラフは日本の所得低下や格差を示すものです。
しかし今一つ、格差の全体像が見えて来ません。

一番下のグラフは階層毎の人口がわかるので少し全体像が見えます。
一番下のグラフの凡例
所得階層  グラフの線       所得範囲
最貧困層    黒実線          年収100万円未満
貧困層      赤破線   年収100万円以上200万円未満
下流階層    緑実線    年収200万円以上400万円未満
中流階層    青破線    年収400万円以上800万円未満
上流階層    紫実線   年収800万円以上1500万円未満
富裕階層  ピンク破線             年収1500万円以上

これによると下流階層と中流階層の人口が最も多いことがわかります。
さらに、中流階層以上の人口減少分が下流階層以下の人口増と釣り合っている。
このことは上位所得層が次々に下位へと没落している可能性を示す。


格差の実態は如何に
私が国税庁のデーター「1年勤続者の給与階級別給与所得者数」「1年勤続者の給与階級別平均給与」を使って下記のグラフを作成しました。注意1


< グラフ3. 給与階層20%毎の平均給与推移 >
解説: 1995年を100としています。
最上位層は第5分位(紺線)、最下位層は第1分位(赤線)です。
グラフ横の凡例に、各階層の1995年と2013年の平均所得と、その騰落率を記しています。

このグラフで目につくことは、第2分位(ピンク線)の所得低下が第1分位より大きいことです。
これはデーターが1年以上の勤続者に限定していることが大きく、すべてを対象にすれば妥当なグラフになるでしょう。注意2.

しかし、ここでも米国と同様に、全体に低下傾向の中、最上位層は回復が顕著で、階層が下るにつれ、低下は歴然としています。
日本の中間層(第3、4分位)はまだ米国ほどには酷くないが、第2分位の低下が行く末を暗示している。


まとめ
現状では、日本の中間層は米国の中間層ほどには危機感を持たないだろう。
しかし、日本は今、米国流の金融、経済、税制に急速に近づきつつある。
したがって、やがて格差が開いて行く中で、中間層も没落を余儀なくされるだろう。
賢明な中間層は、どのぐらい格差が深刻になれば危機感を持つことになるのだろうか?

次回に続きます。


注意1: 全給与所得者を毎年、5分割する為に一部の数値を補間計算しています。
またインフレ分を控除し実質所得に修正しています。

ここで不思議なことに気づきました。
私はインターネットで最適なグラフを探したのですが見つかりませんでした。
不思議なことに、海外の格差を示すグラフにはわかり易いものがあるのですが、日本の格差用には皆無なのです。
日本政府がそれを隠しているとは思いませんが、残念です。
ピケティは、格差の問題意識が低い国はデーターに不備があると指摘しています。

注意2: 不定期のアルバイトなどを算定すれば第1分位の年間所得はもっと低くなる。しかし下落率は、米国に比べ大きくない可能性があります。
それは米国の最低賃金が実質低下しているが、日本は上昇しているからです。



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