< アウンサン・スーチン >
前回は偉大な指導者の下に、皆が協力して平和的に巨大な壁を打ち破った例を見ました。
今日は、それとは異なる、どちらかと言えば現代的な方法を見ましょう。
前回の例では、奴隷と奴隷所有者、黒人と白人、インド国民とイギリス帝国、東欧諸国とソ連帝国という明白な対立がありました。
基本的には一国内か二者間での解決です。
しかし世界はグローバル化が進み、紛争の火種は一国に留まらなくなりました。
最近ミャンマーが軍事独裁から民主化路線に舵を取り始めました。
東南アジア内でのミャンマーの経済停滞、ASEAN・中国・先進諸国の思惑がありますが、一番は経済封鎖が効いているのです。
戦後台湾では蒋介石派(外省人)の独裁と反対勢力への白色テロが数十年続いたが、これを民主化路線に変えたのは米国の強い要求と干渉があったからです。軍事と経済支援と引き替えに。
日本が中国に侵攻し戦線拡大しても宣戦布告をしませんでした。その理由は軍需物資を海外に頼るための取り繕いからでした。とてもごまかし通せるものではないのですが。
経済封鎖は現代の最も有効な、一国の暴挙を平和的に抑制する方法です。
世界はまだ完全に一つの法や警察で制御することは出来ません。
しかし非道な国に対して、世界が合意し非難決議、経済封鎖、監視団派遣などを行い、成果を少しずつ上げています。
一方で北朝鮮やシリアのように経済封鎖の輪が閉じ無い時、また物資が独裁者に独占され場合の弱点は残っています。
< 東京裁判 >
あまり目立たない動きに裁判と宣言行為があります。
裁判では太平洋戦争の東京裁判、ユーゴ内戦のハーグ国際戦犯法廷が重要です。
基本だけ述べます。裁判という形で犯罪を白日の下に暴き処断を下することは、その後の戦争犯罪や復讐の連鎖を食い止める効果があります。
特に何も知らされていない日本人にとっては必要だったでしょう。
日本人に馴染みのある忠臣蔵の最後、1回限りの仇討ちなどは当時の江戸幕府が考えた苦肉の策だったのです、争いの拡大を防止する為に。
確かにインドのパール判事の東京裁判に対する意見は正論だと思います。
しかし戦争と言う論理を無視した凶暴な行為を、戦勝国が恣意的に決着させる従来の方法から一歩前進させるためには、私はやむを得ない処置だと思います。
ここで言う宣言とは、国連やサミット等によるもので、オゾン層破棄に関するモントリオール議定書、地球温暖化の京都議定書、国連の人権宣言などです。
日本の人権意識は低く、国連の人権宣言を遅れて受け入れる形で、国内状況が良くなって来ています。
経済封鎖と国際裁判、宣言は国家間が連携を計る形で事が進んでいます。
うまく行けば地球上の大きな問題を、敵を作らずに解決することも可能です。
< 京都議定書 >
最後に最近の新たな動きを見ましょう。これは主に環境問題で見られる方法です。
今回、震災で原発事故が起きたことにより、間接費用も入れれば10兆円を越す損出が発生するだろう。
一度、原油タンカー座礁、海底油井の爆発、鉱毒汚染、さらには世界中の森林破壊も元に戻すには莫大な金額を必要とする。
しかもその元凶は地球の裏側であったり、手の届かない所で進行していたりしている場合が多い。
要点を言えば、主因となる企業に対する市民の環境意識向上と国家の賠償請求が、その企業に自己抑制を取らせることになる。
国営にしてしまうとあぐらをかくことになる、今回の東電のように。
森林の乱伐を防ぐ目的の森林管理協議会のFSC認証制度は環境保護団体と森林組合の世界的な提携です。
宝石商ティファニー社にシアン化合物を垂れ流す金鉱との取引停止を訴えたことにより、事は解決に向かった。
このようにして世界に散らばって潜むグローバルな危機を、暴力を使わずに市民の不買や推奨と言う形で解決してきているのです。
この大きな特徴は、世界が手を携え、憎悪では無く信頼を得る方向で問題を解決していくことにあるのです。
これで憎しみを越えての連載を終えます。長い間ありがとうございました。
次回は、まとめと目次を載せます。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます