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視点 : 長期と大局から見る

2012年06月27日 | 時事問題

< 神奈川県の地球温暖化のシンボルマーク >

最近のマスコミや周囲の人々のコメントを見たり聞いたりしていると残念に思うことが多い。

ここ1年間で気になるものを掲げました。しかしこれは端緒に過ぎません。

A 日本の各家庭の屋根に太陽光発電パネルを着けると地球温暖化を招く。

B 地球温暖化の懸念は太陽の不活発期突入により払拭される。



< スイス・アレッチユ氷河の後退 :WWFスイス >

Aのコメントはこうです。太陽光パネルの太陽光吸収率が高いので、日本中の屋根につけると日本は温くなってしまうというのです。

事実はこうです。日本の黒瓦の方が高い吸収率であるため、パネル装着の方が良く光りを反射するのです。

問題はそのような些細なことではなく、このような誤解が原発擁護に利用されるのです。

Bのコメントはこうです。太陽が不活発になると地球が冷え始め、温暖化ガスによる温度上昇は相殺され、むしろ冷えるかもしれないというのです。

事実を簡単に言うと、ここ数千万年間の氷河期は南極の氷床に依存しており、その周期は数万年で繰り返しています。

確かに大陸の形や太陽と地球の軌道による影響はあるのですが、それは遙かに長いスパンで変化するものです。

結局、過去を振り返ると11年周期の黒点による影響は無関係と言えます(過去については)。

ここで一番注視すべきは、温暖化ガスの放出はかなり温暖化への可能性が高く、取り返しがつかなくなるおそれがあることです。

それは福島の原発事故の比ではありません、その時騒いで停止しても後の祭りです。

原発事故に似た問題で、ミサイル防衛競争がありますが、別の機会に論じます。

氷河期との平均気温の差は最大8℃ぐらいですが、問題は少しの変化が大気や海流を変えて、旱魃や洪水などの異常気象が頻発することです。



< 氷河期の気温変化 Wikipediaより>

Bのコメントも、地球温暖化ガスの排出規制を無視する側に利用され兼ねないのです。

このような誤解を生むコメントがおもしろく騒がれる程度は良いのですが、反社会勢力に利用されないように気をつけなければなりません。



これと似たような現象があります。目立たなく進行しているが注視すべき問題が数多く私達の回りには起きています。

C 格差が開いて保守化している。

D 停滞し保守化している。

ここで話題は経済の話に変わります。

Cの問題は、欧米先進国の内情を指しています。

経済格差を示すジニ係数と呼ばれる指標がありますが、概ね先進国は80年代より上昇しています(フランスとデンマークを除いて)。

米国では共和党が政権を握ると格差が開き、民主党が握ると横這いとなり、結局増加しています。

現実に、高額所得者に対する所得税や相続税などは政策で引き下げられています。

その結果、個人所有の金融資産の開きは急拡大しています。

これを長期で見ると、19世紀末から第二次世界大戦終了までに開いた所得格差と同じ状況です。

この詳しい説明は別の機会に譲ります。

Dの問題は、日本の現状です。

米国流踏襲、先進国に合わしているのですから保守化しているのは当然です。

しかしそれに輪をかけて悪いのが、旧態依然とした停滞なのです。

クリーンエネルギー採用を回避し原発一辺倒(ヨーロッパはフランス以外を除いて先鞭をつけた)。

農業保護を根拠に相変わらず自由化を拒み続ける(スイスのようにヨーロッパは挑戦し、EUはかなり困難なハードルを越えようとした)。

日本は他の先進国や成長国に較べはるかに貿易額が低い(2010年、輸出額/GDPの順位は91位)。

人口は減少に転じ、減らしても公共投資/GDP率は相変わらず先進国ではトップ。


結局、何の手も打たない、昔のまま、無駄遣いが続いているのです。

どうか皆さん、長期的、大局的視点から政治・経済・世界を見ていただきたい。

私達は、私も含めてぼやとしていると間違った方向に進んでいるのがわからなくなるのです。


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