夕暮れのフクロウ

―――すべての理論は灰色で、生命は緑なす樹。ヘーゲル概念論の研究のために―――(赤尾秀一の研究ブログ)

ヘーゲル『哲学入門』中級 第一段 意識一般    第十五節[物の生成と消滅]

2023年06月19日 | ヘーゲル『哲学入門』

ヘーゲル『哲学入門』中級 第一段 意識一般   第十五節[物の生成と消滅]

§15

Insofern die Eigenschaften wesentlich vermittelte(※1) sind, haben sie ihr Bestehen in einem Andern und  verändern  sich. (※2)Sie sind nur Akzidenzen. Die Dinge aber, da sie in ihren Eigenschaften bestehen, indem sie sich dadurch unterscheiden, lösen sich mit der Veränderung derselben auf und sind ein Wechsel des Ent­stehens und Vergehens.(※3)

第十五節[物の生成と消滅]

属性が本質的に媒介されたものであるかぎり、属性はその根拠を他者の中にもち、そして、変化するもの である。それはただ偶然的なものにすぎない。 しかし、その属性において存立する物は、その属性によって区別されるものでもあるから、変化そのものによって自ら消え失せ、そして、生成と消滅の交替を繰り返すものである。

 

※1
sind vermittelte  媒介された
「物の属性」が「媒介されたものである」というのは、たとえば「塩」という物の属性は「白く」あり、「辛く」もあり、結晶においては「立方体」でもあるが、「白い」という属性は「シラサギ」や「白紙」や「絹」のような他の物と比較によってはじめて規定されるものだからである。「辛い」というのも、「唐辛子」や「海水」などの他物との比較、抽象によって規定される。したがって、属性はその根拠を他者との関係の中にもつ。(§14)

そして、物がその物であるのは、その属性によるのであるから、もはや「黄色」くも「酸っぱく」もないものは「レモン」とは呼ばないのである。

※2
verändern sich  変化する
感覚(感性的意識)は、空間に対する直覚でもあるが、それに対してここでヘーゲルは「変化」という時間に対する直覚によって「生成」と「消滅」という概念を導き出してくる。カント哲学がカテゴリー表で静的に並べたにすぎないものを、変化、運動として動的にとらえる。ヘラクレイトスの「万物は流転する」という思想を引き継いでいる。

※3
さまざまな属性をもった「物」は「感覚(感性的意識)」(§11)の対象であると同時に、「知覚」の対象でもある。

 

 

 

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