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夕暮れのフクロウ

―――すべての理論は灰色で、生命は緑なす樹。ヘーゲル概念論の研究のために―――(赤尾秀一の研究ブログ)

ヘーゲル『哲学入門』 第一篇 存在 第一部 質 第十節[定在]

2025年07月19日 | ヘーゲル『哲学入門』

 

ヘーゲル『哲学入門』 第一篇 存在 第一部 質 第十節[定在]


B. Dasein

B 定在

§ 10

Das Dasein ist gewordenes, bestimmtes Sein, ein Sein, das zu­gleich Beziehung auf Anderes,  also auf sein Nichtsein hat .(※1)

第十節

定在(そこにあるもの)とは、生成を経て、規定性を帯びた存在である。それは同時に、他者との関係性をもつとともに、すなわち自らの非存在(自らが存在しなくなること)との関係性をももった存在である。

※1

①【生成を経て規定された存在】

例えば、一人の「人間」は、ただ単に「存在(Sein)」しているだけではない。誕生というプロセスを経て存在し、成長や経験を通じて具体的な規定性を帯びていく。生まれた瞬間には無規定な可能性に満ちているが、成長するにつれて個性や性格、社会的役割などの「規定性」を獲得していく。例えば、「教師」「医師」「父親」「娘」「日本人」など具体的な規定性が現れる。

②【他者との関係性における存在】

人間の存在は常に他者との関係性の中で規定される。ある人が「教師」であることは、生徒との関係によって規定されるし、また、誰かが「友人」であることは、自分とその人との相互関係によって成り立つ。
このように、人間は単独で規定されるのではなく、家族、職場、社会、文化などの「他者」との関係の網の中でのみ意味を持つ。

 ③【自らの非存在との関係性(自己否定・限界性の認識)】

また、人間の存在は同時に、その存在の限界、つまり死や消滅(非存在という否定性を自らの内に抱えている。自分が生きていることを自覚するということは、同時にいつか必ず死ぬことを意識することでもある。
 例えば、重い病気にかかったとき、人間は自分の存在(定在)と同時にその非在(死、消滅)の可能性を強烈に感じる。このとき、「定在が自己の非存在との関係性を持つ」という哲学的概念が現実的に理解される。

 

 

 


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