復讐が復讐を呼ぶハード編。
人の心の闇に肉薄しつつ、その闇をもある意味、憐れみと優しさを持って見つめている。
そんな、哀しくも
残酷な話。
藤枝梅安(豊川悦司)とその相棒・彦次郎(片岡愛之助)の、それぞれが何故仕掛人になったか、その哀しく恐ろしく残酷な過去が語られ、そのそれぞれの過去に関わった者たちとの復讐劇が展開されていく。
彦次郎が仇と狙う男、かつてのテレビ・シリーズでは天地茂さんが演じていた役ですが、天地さんはいかにも悪そうな凶悪な笑い顔を浮かべながら演じておりましたが
今回演じた椎名桔平さんは、常にどこか悲し気な、監督が言うところの「困ったような」表情を浮かべているんですね。
なにかこう、こんな風になってしまった自分自身を、どこかで「呪って」いるかのような
そんな感じ。
この椎名さん演じる男を殺す時の殺し方が、かなり残酷。梅安さんも彦さんも侍ではないので、刀を持った相手を殺すにはどうするか、ある意味「卑怯」とも言える知略が必要なわけですが
に、しても、かなり残酷ではあります。
でも、その分リアル。
この復讐を遂げたときの彦さんの表情ね。歓喜でもなく達成感でもなく安堵感でもない
やはりどこか、哀し気なんです。
一方、佐藤浩市さん演じる、梅安さんを仇と狙う浪人者の、怒りと恨みと哀しみとがないまぜになった、いまにも爆発しそうで、それでいてやはり、どこか自分を「呪って」いるかのような表情。
浩市さん素晴らしかった。
登場人物みんな哀しいです。人生のどこかの段階で、闇へと滑り落ちる選択をしてしまった人たち。
なんかね、この人たちはどこかこう、「死にたがって」いるというか、自分を殺してくれるものが現れるのを待っているというか、そんな感じが、
私にはしましたね。
アクションも素晴らしいです。時代劇の魅力はなんといっても刀を使った殺陣。佐藤浩市の相棒を演じた一ノ瀬楓くんの殺陣がカッコよい。こういう殺陣の上手い若手俳優の存在にはとても嬉しいものを感じますね。
佐藤浩市さんの殺陣は上手い下手というより豪快。これはこれで悪くない。
上述したように、梅安さんも彦さんも侍ではないので、刀は使えない。これで佐藤・一ノ瀬の侍コンビとどう戦うのか、この辺の見せ方も上手かった。
サスペンスフルでありリアル。これまた十分見ごたえあります。
自分を仇と狙うものが迫って来る中、梅安さんは表稼業の鍼医者の仕事に、まるで憑かれたかのように専念します。
自身の「死」が迫っているかもしれないからこそ、「生」あるうちに一人でも多くの患者の「命」を救いたい。
金で人の命を奪う仕掛人が、一方では人の命を救っている。
激しい矛盾。でもそんな矛盾を抱えているのが、人というもの。
なのかもしれない。
人の心の複雑さ。その細かい襞まで深く切り込み、しかし一方ではアクション映画としても良くできている傑作だと思う。
時代劇をよく知る人も知らない人も、観て損はなし。
おススメ。
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