問わず語りの...

流れに任せて

映画『すずめの戸締まり』

2022-11-23 06:33:21 | アニメ

ネタバレ多し。自己責任でお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東日本大震災が物語のキーになるということで、映画『天間荘の三姉妹』との共通点もあり

 

 

ついつい比較してしまうのですが

 

 

 

『天間荘の三姉妹』は北村龍平監督の「想い」が強すぎて、後半の展開がメチャメチャになってます。

 

 

 

特に、のんちゃん演じるたまえが「あの世」から「この世」に帰ってきた途端、いきなり元気に動き回っている。

 

 

いやいやいや!交通事故にあって臨死状態だったはずでしょ!?魂が戻って生き返ったにしても、肉体が回復するには時間かかるでしょ?リハビリとか必要でしょ?それらが全部すっ飛ばされてる。あれで台無しになっちゃってるところ大。

 

 

でものんちゃんのお陰で、その強引さが感動の方向に見事に軌道修正されているんです。特にラストのイルカショーのシーンは、のんちゃんでなければ上手く行かなかった。

 

 

『天間荘の三姉妹』の高評価はすべて、のんちゃんのお陰。

 

 

北村龍平監督の「思い入れ」の強さはわかる。でも、でも思い入れが強すぎて、それが映画を壊しちゃってる。ホント、のんちゃんでなければ、ああ上手くは言ってないですよ。

 

 

でも監督の強い想いと、それ故の破綻ぎみの展開と、のんちゃんという存在が、結果として観ているこちらの感情を強く揺さぶることになる。

 

 

感情がぶるんぶるん揺さぶられて、最後は感動へと持っていかれる。

 

 

 

こういうの、結果オーライっていうんですかね?

 

 

それに比べて、『すずめの戸締り』ですが

 

 

 

こちらは上手く纏められていて、ほぼ破綻はない、と言って良い。

 

 

その代わり、強く感情を揺さぶらることもなく、結果として強い感動もない。

 

 

 

映画としては破綻なく卒なく纏められていて、テンポも良い、キャラクターも良い、声優さんの演技も良い。

 

 

でも、こちらの心に「ガツーン」と来るものがないんだよなあ。

 

 

なんかねえ、クリエイターの「狂気」みたいなものが感じられないんですよ。この方の初期作品には、「狂気」があったように思うんです。

 

 

『秒速5センチメートル』とか『言の葉の庭』とかね。

 

 

でもこの作品には「狂気」がない。

 

 

新海誠、

 

 

 

 

変わったね。

 

 

 

それが悪いとは言いません。実際この作品は悪い作品ではないし、普通に良い映画に仕上がってると思います。

 

 

作中の様々な設定は大変興味深く、特に個人的に興味深かったのは、「閉じ師」という設定ですね。

 

 

大災害の発生を鎮めるために、災害の発生源である「後戸」を閉めるために日本中を旅している者。

 

 

後戸のカギを閉める際に唱える、大地への感謝を込めた祝詞。

 

 

またダイジンと呼ばれる猫のような不思議な生き物は、ときに可愛らしくときに邪悪に見え、

 

 

ときに冷たく、ときに優しい。

 

 

善でも悪でもどちらでもない、まさしく日本の「神観念」に則った存在。

 

 

 

1番良いなと思ったのは、主人公すずめを救うものですね。

 

 

 

『天間荘の三姉妹』では、東日本大震災で亡くなられた方々の側から、現世に残された遺族の方々へ向けてメッセージが送られ、遺族の方々の心を癒す、救うという展開でした。

 

 

『すずめの戸締り』の主人公・岩戸鈴芽は、東日本大震災で母親を亡くし、叔母に引き取られて九州で暮らしています。

 

 

後戸の向こうには「常世」があり、そこは死者の赴くところだとか、だからこれは、最後に鈴芽の母親が出てきて、鈴芽の心を救うのかと

 

 

思いきや

 

 

母親は出てこない。

 

 

その代わり、常世で鈴芽を救うのは

 

 

鈴芽自身なんです。

 

 

安易に母親を登場させず、最終的に己を救うのは己自身だという展開。

 

 

新海さん、狂気はなくなっちゃったけど

 

 

良識は持ってるから、

 

 

 

まっ、いいか。

 

 

 

良識を持って卒なく纏められた、良質なアニメだと思います。その代わり

 

 

ドキドキもワクワクもあまりなかったですがね。

 

 

決して悪い映画ではないです。ガツンとくるものはないですが。

 

 

 

 

 

※「後戸」とは、仏堂のご本尊の背後に設えられた扉のこと。この扉の向こうには、より根源的な神が祀られており、人が立ち入ることは許されない。

 

そこに祀られている神は「摩多羅神」であり、芸能の神でもあるとされています。この摩多羅神の正体、ある方の見立てによれば

 

 

「シバ神」でありまた、「スサノオ」でもあるとか。

 

 

荒ぶる神スサノオを祀る後戸を閉め、大地を鎮め災害を未然に防ぐ。

 

 

その際に唱える、大地への感謝を込めた祝詞。

 

 

個人的には、この点が1番面白かった。

 

 

 

以上、『すずめの戸締り』感想でした。

 

 

 

 

 

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4 コメント

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Unknown (みき枝)
2022-11-23 07:26:28
おはようございます🌧️
薫ちゃん兄者の解説、コトンと、すんなり入ります。
アニメ作品として狂気無く、、は自分も物足りないかなと思うけど、中身良か良かでしたか。
大地への感謝を込めた祈りが(祝詞が)
荒ぶる神様を鎮めてくださる、て良いネ。
不肖わたくしめも毎朝一番は、太陽の神様(天照太御神)と大地の神様(国常立大神)とナガス(ツ?)ネヒコ様(神名きちんと覚えろよ)💦に感謝を捧げてる者のひとり。
シンカイ監督の作品では「狼子どものの雨と雪。。」?(タイトル、きちんと覚えろよ)💦のが一番好きかな。
え?というかこれ別の御方の作品だったかも。 
あぁ、わたしもわたし自身で、わたしの霞お脳を救わなくては。。
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Unknown (みき枝)
2022-11-23 11:58:31
2回もすみません。
しかも記事に関係ない。
薫兄者! ダンス教室で「大河の巴御前に似てる」て言ってもらいました(マスクしてますが)
残念ながら今回の大河作品は見てませんが
配役されているのでしょうか。
薫兄者ならご存知かなぁ。
嬉しかったので書かせてもらいました。
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Unknown (薫兄者)
2022-11-23 12:31:03
みき枝さん、今年の大河で静御前を演じていたのは石橋静河(いしばし しずか)さん、石橋凌と原田美枝子の娘さんです。元々はバレエ・ダンサーで女優もやられている方で、だからダンスは凄い。静御前最大の見せ場、鶴岡八幡宮で「すづやしず~」と舞うシーンでは、単なる日本舞踊ではない、バレエ・ダンスも取り入れた独特のものでした。
凄いね、静御前!
『おおかみこどもの雨と雪』は細田守監督です。『時をかける少女』とか『サマーウォーズ』の人ね。新海誠は『君の名は』『天気の子』の方。
『さかなのこ』はのんちゃん。これは関係ない(笑)
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Unknown (みき枝)
2022-11-24 14:54:09
あはあは、関係ないことも書いてくださり有り難うです薫兄者。
その方は静でなく巴で仰ったのですが多分、間違えられたのでしょう。
石橋静河さんやアニメ作品のこと等、改めて有り難うございました。
「鬼滅の刃」なら、鬼滅コラボの大阪ホイールでのクイズ、百点満点取ったのにな~(夏にららぽーとまで乗りに行った)
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