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にゃんともうらやましい名字

 無学な私は、最初、大佛次郎を「だいぶつじろう」と読んだ。幸い、正しくは「おさらぎじろう」だと知る機会がすぐに訪れたので、誰かに「だいぶつ次郎の本を読んだよ」などと言って恥をかかずに済んだのだけれど、なぜ「大仏」を「おさらぎ」と読むのか、まるで見当がつかない。字面だけ見ていると、まったく関係がなさそうである。
 調べてみると、「大仏」を「おさらぎ」と読むようになった由来については、いくつか説があるようである。
 ひとつは、北条時政の子・時房が、鎌倉大仏の近くに住まいを構えたことから苗字を「大仏」とし、その土地の名前が「おさらぎ」であったため、「大仏」と書いて「おさらぎ」と読むようになったという説。
 また、仏様の供物を載せる皿を「さらけ」と言ったことから、それがそのまま仏様を意味するようになったという説。
 あるいは、大仏は新しい木材である「さらき」で作ることから、「おさらぎ」という呼び方ができたという説。
 とすれば、大佛次郎は、北条一族の末裔なのかと思いきや、「大佛次郎」とはペンネームで本名は野尻清彦、デビュー当時、鎌倉大仏の裏に住んでいたことにちなんで、そういう名前をつけたということである。
 その大佛次郎の随筆集「猫のいる日々」によれば、フランスにはル・シャ(猫)という名字の家があるらしい。大佛次郎がフランスのある墓地を訪れたときに、「猫」と刻まれたその家の墓標を発見したそうだ。「猫家」だなんて、猫好きなら誰もが憧れそうな姓である。
 日本にもそんな姓があるだろうかと調べたら、一文字で「猫」というのはないようだけれど、猫のつく名字なら結構あった。

 猫石(ねこいし)、猫沖(ねこおき)、猫実(ねこざね)、猫島(ねこしま)、猫田(ねこた)、猫塚(ねこづか)、猫戸(ねこと)、猫西(ねこにし、こにし)、猫平(ねこひら)、猫羽(ねこま)、猫俣(ねこまた)、猫宮(ねこみや)、猫本(ねこもと)、猫屋敷(ねこやしき)、猫遊軒(びゆうけん)

 猫島なんて想像しただけで楽しそうだし、猫宮というと、猫の神様を祭ってあるようなありがたいお宮を思い浮かべてしまう。なんともうらやましい名字である。
 もっとも、猫屋敷さんが実は猫嫌いだったとしたら、自分の名字についてあまりうれしい気持ちはしないかもしれないけれど。
コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
うーーむむ。 (雲島)
2007-06-21 01:01:19
チナツさん、こんばんは。

「おさらぎ」の読みの由来は諸説あるのですね。
供物皿の「さらけ」から来た、という説に一票。

疑問がちょっとだけ解消された気がします。
ありがとうございました。


それと、猫のつく名字の多さには驚きました。
いっぱいあるんですねぇ。。。
しかも、かなりユニーク。

猫屋敷なんて名字だったら、そりゃ10匹や20匹は
飼わないといけない気がしますし、
猫遊軒だったら、猫がそこいら中を活発に遊びまわっていそうで
なんとも楽しいご家庭な気がしますし、
猫俣に至っては、妖怪ですよ!?
(「また」の字が違うけど。笑)

なんか、想像すると面白い。。。

とっても楽しく興味深い話題でした。
ありがとうございます m(_ _)m
 
 
 
猫の付く名前か~ (さつき)
2007-06-21 11:47:23
今朝、新聞で「○○ 甲子太郎」さんという方がいて、なんと読むのか思わず母に聞きました。
40数年生きてきて、読めんとは…
最近、本は読んでいますが、どんどん感じに疎くなっていきます。

猫村さんという漫画がありましたが、猫の付くお名前がこんなにあるとはびっくりでした。
フランスのはなんか日本人からみるとおしゃれな名前に感じますが、ご本人はどうなんでしょうね。
 
 
 
猫遊軒!? (のり)
2007-06-21 20:15:50
なんとも猫が楽しそうに棲んでる長屋みたいでいいですね
ナーゴが舞台の場所は確か島だった気が・・・。
そこでは猫の住民票があったと思います。
 
私、江戸屋猫八好きで御座います
 
 
 
だいぶつじろー (弟子)
2007-06-21 22:26:22
なにをかくそう、師匠のこの前の記事読むまで大佛次郎、なんて読むのか知らんかったっスよ。
図書館で見かけるたび、さすがにだいぶつじろーとは読まんのだろうけど・・・・・・・・・と思ってたのよ(笑)
 
 
 
雲島さんへ (チナツ)
2007-06-22 14:01:14
いえいえ、こちらこそ、雲島さんが「おさらぎ」という読みに疑問を抱かれたのがきっかけで、いろいろ面白く調べることができました。ありがとうございます。
猫遊軒って、お店の名前にもよさそうですよね~。
将来、もしもラーメン屋でもすることになったら、この名前、最有力候補です。
 
 
 
さつきさんへ (チナツ)
2007-06-22 14:05:47
私も「甲子太郎」、読めませんでした…で、調べてみると、「かしたろう」と読むそうです。新撰組の参謀が「伊東甲子太郎」だったそうで、そういえば、どっかでこの名前、見たことあるなと思っていたら、前に読んだ司馬遼太郎の「燃えよ剣」に出ていました。
どうなんでしょうね、「ル・シャ家」。まあ、直訳すれば「猫家」ですから…
 
 
 
のりさんへ (チナツ)
2007-06-22 14:07:17
猫の住民票ですか。いいですね。
猫島に猫宮(猫のお宮)とか、猫遊軒(猫の飲み屋)とかあって、おうちはどこも猫屋敷…
猫ネコパラダイスですね~。
 
 
 
ムズイねェ~~ (師匠)
2007-06-22 14:09:20
前もって知識がなかったら、フツーは読めないよなぁ…
わしもアマゾンで注文するとき、心の中にもかかわらず、小声で「ダイブツ次郎……??」なんて思ってたのよ。
 
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