花の中のちゃめ

 先週の月曜日、8月1日にちゃめが亡くなりました。10歳でした。
 ちゃめがいなくなったというのは、私にはちょっと受け入れ難いことです。ちゃめは、運動神経がよくて、おてんばで、気が強くて、以前みゆちゃんを実家に預かってもらったときにはしょっちゅうけんかしていました。面白くて元気な猫で、死ぬはずがないと勝手に思っていました。去年の春ごろに、腎臓がだいぶ弱っているから、もうあと一年くらいだろうと病院で言われましたが、信じられませんでした。エネルギッシュなバネみたいだったちゃめは、私のイメージの中で、死ぬこととは全然結びつかなかったのです。
 今年に入ってからだったでしょうか、風邪のような症状になってご飯を食べなくなったり、回復してまた元気になったりを繰り返していました。
 ぎりぎりまで活発に動き回って、もう水も飲まなくなってしまったあとにも、屋根の上に跳び上がったりして、父や母を驚かせました。最後には、苦しむこともなくて、眠るように、静かに息を引き取りました。
 亡くなる二日前の土曜日に、ちゃめは父の部屋の静かな寝床からふらふらと私たちのいる居間へ上がってきて、私や父と母、子どもたちのちょうど真ん中に寝そべって、しばらくのあいだ、じっとしていました。ちゃめには珍しいことでした。自分がもうすぐ死ぬことを知っていて、お別れをしに来たんじゃないかしらと母が言いました。私たちは、ちゃめ、ちゃめ、と呼びかけながら、頭や背中を静かになでました。
 ちゃめが一番なついていたのは父でした。父のことが大好きなようでした。父とちゃめは、仲のいい友達でした。細くなった背中をなでながら、10年間、父のいい友達でいてくれたちゃめに、私は心の中でありがとうと言いました。涙が目頭に向かって押し上って来るようでした。
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