ふくちゃん自業自得

 近ごろふくちゃんは、長い時間庭に出て、小さな虫を探しては追いかけている。地面の上をくんくん嗅いだり、雑草の葉っぱの下に花を突っ込んだり、跳び上がって羽の生えた虫に手を伸ばしたり。
 このあいだ、庭にアゲハチョウが来ていたので、アゲハが産卵できるように山椒の木でも植えようかしらと考えていたら、思案中の私の足元を、アゲハチョウをくわえたふくちゃんが小走りに走り抜けて行った。あわてて救出して表に逃がしたらなんとか飛んで行ったけれど、だいぶ負傷してしまったようだった。じゅうたんの上に残ったアゲハチョウのちぎれた羽を片付けながら、山椒の木は無理だとあきらめた。ふくちゃんは、ちょうちょはどこニャとにゃあにゃあ鳴いている。
 丸い葉っぱの草のあいだにふくちゃんが手を探りいれたり鼻を突っ込んだりしているので見てみると、今度は長い毛の生えた黒い毛虫だった。
 毒のある種類かどうかわからなかったけれど、君子危うきに近寄らず、ふくちゃん、やめておきなさい、と制しようとしたが、当たり前のことながら聞くわけもなく、しばらくつんつんやっていたが、突然、バネがはね跳ぶみたいに、ぱっ、と背中を弓なりにしてうしろにふっ飛んだ。
 その跳び方が面白くて笑ってしまったが、たぶん、毛虫の毛に肉球を刺されてちくりとでもしたのだろう、ふくちゃん、自業自得である。
 少しは懲りただろうと思ったけれど、そんな様子もなし、ふくちゃんは相変わらず、庭でごそごそやっている。
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