
20年ほど前にパリで買った器です。
欧州の陶磁器には珍しい練り込み技法。
日本には練り込みの器がいろいろありますが、どうも爺臭くてどうにも好きになれません。
アイスボックスクッキーのように市松模様になったのや、
墨流しのように流線が流れるものなどいろいろですが、
器の初々しさ、思わず手に取りたくなる愛らしさが感じられないんです。

パリの街角で何気なく入った工芸品店で見たとき、
なんときれいな練り込みだろうと思わず目を奪われました。
フィレンツェの名産品にマーブル模様の紙があり、それはそれは美しい墨流しです。
何が美しいって、一番の要はその色あわせ。
日本の感覚ではあり得ない色をどんどん合わせ、流しの造形にのせてまとめ上げてしまうセンスはさすがです。これは、ちょっとそれに似たものがあります。
日本の練り込みとは、技法は似てもセンスは非なるものって感じですね。

ところがこれ、いったいどういう陶磁器なのかぜんぜん判らないんです。
何という窯なのか、フランスで買ったとはいえ、窯はフランスなのか、あるいはイタリアか。
ま、このセンスから言って、ヨーロッパであることには間違いなさそうです。
裏面には窯の名前があるものの、これをネットで調べてもヒットしません。
「あなたは誰?」と訊ねても、器が答えるわけじゃなし。
いったい、どこのどういう器なんでしょう?
あのとき店の人に尋ねておけば良かった。
フランス語ができないので、ついつい訊ねるのを躊躇してしまった。
あぁ、紙に書いてもらえば良かったと、
素性の判らない練り込みのボールを前に後悔しても、すでにかなり遅し。
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