「黒ちゃん」と呼ぶその子とは、
ウォーキングに行くとほとんどと言ってよいほど出合います。
というか、黒ちゃんがめざとく私を見つけてサァーッと近寄ってくるのです。
「あ、黒ちゃん!!」
私はリュックに入れてある小袋を取り出し、中から殻付きピーナッツを出します。
黒ちゃんはそれをいまかいまかと待っていて、
ポイと投げてあげたピーナッツを2個ほどくわえると、
チョイチョイとぴょん飛びして、草むらの端に隠しに行きます。
ときにはくわえたままサーッと舞い上がって、
大通りの向こう側の草むらに隠しに行きます。
そのあとサッと戻ってきて、
「はい、隠してきましたよ。次は?」
首をかしげるように私の方を見て催促。
次々あげるから私の小袋はどんどん小さくなって、無くなってしまいます。
「はい、もう終わり!!」
それでも黒ちゃんは私を追いかけてきて、もっともっとと催促します。
黒ちゃんの隠し方を見ていると、
草むらの端に置き、さらに上から枯れ葉をかぶせてすっかり満足しているようです。
どれも真っ黒なカラスなのに、黒ちゃんをどう見分けているかと言えば,
黒ちゃんの胸にはちょっと白い斑点があるのです。
なので、黒ちゃんのことを「胸白(むねしろ)」とも呼びほかのカラスと区別します。
(黒ちゃんの胸には少し白い点がある;一番上の画像参照)
黒ちゃんはいつも奥さんを一緒に連れていて、
そちらの方は真っ黒だからほかのカラスと区別がつきません。
だけどいつも黒ちゃんと行動を一緒にしているから、
黒ちゃんの連れだということが判ります。
その仔も「はい、私にもね」と当然のようにねだります。
黒ちゃんたちにピーナッツをあげるときは、
ほかに歩行者がいないことをサッと確認してからにします。
もともとカラスは人気の無い鳥で、どちらかというと不吉がられているからです。
あるときすれ違った小学生の男の子二人の会話。
「ぼく、カラスは怖い。目の玉をくり抜かれるような気がする。」
そうなのね・・・と、私は哀しく聞き流していました。
でもでも、カラスは鈍くさい鳩とは違って、人の顔をしっかり覚えます。
この人は善い人だと思うと、決して悪さをしません。
というか、カラスにひどいことをされる人は、それなりのことをしたからなんです。
親しい関係になると、どこからかこちらを見つけて、
サァーッと低空飛行でやってきて、
「ピーナッツおばさん、私、ここにいますよ。今日は何かくれる?」
腰痛持ちの私がベンチに座ろうものなら、その前にチョンチョンとやってきて、
「はい、来ましたよ!!」
私は“そうかそうか”と 相好を崩し、
サッと辺りを見てからピーナッツ袋の中から一つ二つとポイ、ポイ。
こんなにカラスと交流する私って、何か変?
「他の人にはカラスが好きだって言わない方がいいよ」
相方の気遣いを聞きながら、目は上空を探す私でした。