蝸牛の歩み

「お話」を作ってみたくなりました。理由はそれだけです。やってみたら結構面白く、「やりたいこと」の一つになっています。

ファミレスにて

2015-12-30 12:06:12 | 日記
 あるファミレスに入った時のこと。
 時間を潰すためだったので、コーヒーを頼んでバッグから文庫本を取り出して読み始めた。20ページくらい読み進んだ時、後ろの席に三人家族が座った。父と母と、5歳くらいの男の子だった。男の子は、注文するときからうるさかった。注文を取りに来た若い女店員をからかっているのははっきりしていた。
 「オレンジジュースにするわ」と言った直後に「あ、やっぱりマンゴージュース」、店員が「マンゴージュースですね」と復唱すると、「カレーとサラダにしよっかなぁ」という。延々とやり取りが続いて、結局、ハンバーグ定食ということに決まった。
 両親と思われる男女はそれぞれスマホの画面を見ていて、子どものことはほったらかし。店員にせかされて、それぞれ、「カレー」と「サイコロステーキ」を頼み、ドリンクバーも付けた。
 子どもは店内を走り回り、奇声をあげ、ドリンクバーでコーヒーを入れたかと思うとそのまま捨てた。結局、コーラを持って帰ってきて、坐るなり、「ねぇ、ハンバーグ定食まだぁ」と連呼し始めた。
 私の席の隣に座っていた40がらみの男性がすっと立ち上がって、その子の肩をがしっと掴み、身動きさせないようにしてから、低い威厳のある声で、その子の顔をまっすぐに見て言った。
 「いいか、お前は何のしつけもされていない。こんな店に入ってどんなふるまいをしなければならないかという常識も教えてもらっていない。お前のどうしようもないアホ面を見ていると、成績もどうしようもないだろう。だからな、教えといてやる。お前のようなアホが生きていくためには、たった一つ、こんな店に入ったらどうしなければならないのか、お前の回りの大人と、向こうのテーブルに座っている子どもの動きを観察してまず学べ。それができなければお前は一生社会の底辺を這いずり回るんだよ」
 子どもの顔は、恐怖に震えていた。男と女は、ぼかーんと口を開けたままで男の言葉を聞いていた。
 男性は、レジに向かい、支払いを済ませて出て行った。