帰りの遅いお父さん

　「父さんは今日は帰ってこないのかなぁ」
　「そうね、一年で一番忙しい日だからね」
　「去年も次の日は死んでたもんね」
　「だんだんきつくなっているみたい」
　「父さんみたいな人は何人ぐらいいるの」
　「うーん・・・一万人ほどだって言ってたわ」
　「一万人かぁ。多いのかなぁ、少ないのかなぁ」
　「少ないと思うわよ。時間が限られている中でのお仕事だからね」
　「父さんは、僕に後を継いでほしいのかなぁ」
　「そうね。やっぱり継いでほしいと思うわよ。お父さんは自分のお仕事に誇りを持っていらっしゃるから」
　「父さん、今晩は帰ってこないよね」
　「そうね、先に寝ましょうか」
　「帰ってきたらお父さんが読めるように手紙書いとく」
　「私は、シチューを温めなおしておくわ」

　明け方、お日様が上る少し前に父さんは帰ってきました。
　テーブルの上には手紙が置いてあり、シチューは、小さな火の上にかけてあったので暖かいまますぐに食べられるようになっていました。

　父さんは手紙を読み、シチューを食べ、トースターでパンを焼いて食べました。少しだけお酒を飲むことにしました。
　お風呂に入り、身体をのばしました。
　パジャマに着替えてガウンを羽織り、息子の部屋に行って、ベッドで寝ている息子の頭の横にプレゼントを置きました。
　
　「私がプレゼントを置いていくのはいつでもお前が最後なんだ。寂しい思いをさせてすまないね」

　そう言って、額にキスをし、ガウンを脱いで奥さんの横にそっと滑り込みました。

　「お帰りなさい、今年も大変だったわね」
　「起こしてしまったかな」
　「私、今日だけはちゃんと起きて待ってるのよ」
　二人はお休みのキスをしてねむりました。
　
　サンタさんの忙しい一日はこうして終わりました。