蝸牛の歩み

「お話」を作ってみたくなりました。理由はそれだけです。やってみたら結構面白く、「やりたいこと」の一つになっています。

人口増加

2016-06-27 00:35:16 | 日記
 ある国で、甚だしい人口増加が発生した。
 理由はいくつかあるのだが、主なものをピックアップしてみよう。
 一、コウノトリが赤ちゃんを運んできた。
 二、キャベツの中から赤ちゃんが誕生した。
 三、男女が手をつないで歩いただけで女性が妊娠するようになった。

 まさに、「産めよ、増やせよ、地に満てよ」状態となってしまった。
 この状態に直面した国は、衆知を集めた。小さな行政区単位で、年齢制限を取っ払って、希望者、発言したい人、提言したい人がまず集まった。小学生から、90歳の老人まで。怒号が飛んだりもしたが、なにせ人口急増という現実にいかに対応するかという喫緊の課題が突きつけられる中で、傍観者的、非現実的、評論家的な意見は淘汰された。

 いくつかの事が決定され、実行された。

 一、軍事費の大幅削減。災害に備えての重機は増加したが、戦車、戦闘機などはすべて購入予算は凍結され、燃料費もゼロ査定された。
 二、企業、富裕者に対する課税は強化された。もちろん、「出ていく」と声明を発した個人、企業はあった。しかし、それを実行した個人と企業とは案   外少なかった。いったん出て行ったら、二度と帰ってこれないという法律が制定され、墓参も不許可となった。そして、資産はいったん凍結され    た。企業責任者は資産の構成、隠し財産、課税回避地にある資産について拘留されて徹底的に査問を受けた。国税庁の職員も増加した。
 三、児童福祉、教育にかける予算は大幅に増加され、それに携わる人々の給与と労働環境は改善され、労基署の職員数も増やされた。
 四、新しい父と母とには、定期的に悩みの相談の聞き取り、サポートが与えられた。

 この現象は20年続いたのちに、ぱったり、通常の形に戻った。愛し合って結婚し、二人ないしは三人の子供を出産し、子育てについてのサポートとアドバイスを十分に受けたお父さんとお母さんとが育児を行った。経済的基盤もつつましやかではあるが、十分なものが保証された。

 とてもまともな国が出来てしまった。