A.M.'s kitchen

ふと心に浮かんだことを、短く、軽く、たまに鋭く、書き残しておく場所です。

夜食夜話 (81) びんちょうまぐろ

2010-10-04 13:54:13 | 食生活
 この身がほろほろの魚との出会いは、横浜駅の地下にある回転寿司屋だった。「びんとろ」という名前で出ていたと思う。

 当時は、その名前すら知らなかった。値段も手ごろだったので、好奇心で手を伸ばした。あまり噛まなくても、舌の上でほぐれるような感触が新鮮で、しかも脂の旨味はしっかりした。それ以来、しばらくの間は、必ず1回に1皿は食べるようになった。

 だが、回転寿司から遠ざかるにつれ、(あまりスーパーでは見かけないこともあって)、この魚を食べる機会はすっかりなくなった。

 最近、たまに見かけるようになったが、やはり、すし屋で食べたような『脂のノリ』は期待できなかった。それも仕方ないと思いつつ、あまりに遠ざかっていると、つい手が伸びる。ただし、見た目はよくチェックする。色はもちろんのこと、血抜きが不十分で、身にポツポツと赤い斑点が残っていると絶対にアウト。

 このことは、他の魚でもいえる。小田原の魚屋で、本マグロの子供の「めじマグロ」を食べた際に、店主から教えてもらったことだ。この魚も、「血管」多く、しっかり血抜きをしないと、身に血の臭いが残るというのだ。それが、ポツポツとして現われるそうだ。

 それにしても、いくら脂があっても、びんちょうだけは刺身で食べても「ピン」と来ない。

 どうやら、寿司として食べることが私に刷り込まれてしまっているようだ。

 最近は、たまに回転寿司屋に行っても、びんちょうには手が伸びない。「季節の魚」を軽くつまんだ後は、いわしやさんまやアジといった、基本的な庶民の魚によく手が伸びる。基本の魚のほうが、鮮度のよさがくっきりわかるので、ヒットがあると嬉しくなって、リピートしてしまう。しかし、酢飯が「満腹中枢」を刺激するので、量は食べられない。「びんちょう君、また今度ね」となる。


 それにしても、肉中心の生活になった昨今、びんちょうはおろか、魚との距離は遠くなる一方である。

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