A.M.'s kitchen

ふと心に浮かんだことを、短く、軽く、たまに鋭く、書き残しておく場所です。

夜食夜話 (10) ホウレン草

2009-06-12 20:16:01 | 食生活
 ほうれん草は、何に使うにしろ、まず塩水で茹でていた。中華などに使う場合、別の具材と合わせて、再度火を通す場合は、軽目に茹でる。また、お浸しや付け合わせにする場合は、しっかりと茹でる。
 最近は、単にお浸しにすることはなくなった。理由は、ご飯が欲しくなってしまうからということと、「ありきたり」すぎて意欲が涌かないということにある。写真は、珍しく、酒の肴として作ったお浸し。

 子供のころ、このお浸しを作る際、必ずといってよいほど、「胡麻擂り」を手伝わされた。母親がフライパンで胡麻を炒る。いい香りが立ちはじめたところで、擂り粉木をもって待ち構える私の前に据えられた摺鉢の中に、ザザッと投じられる。私は、胡麻が弾け飛んでいかないように注意しながらつぶしはじめる。粒がある程度なくなったところで、擂り粉木を回しはじめ、やがてトロッとし始める手前で完成となる。そこへ、母親が砂糖と醤油を目分量でさっさといれて、スプーンでシャカシャカっと軽く混ぜ、湯がいて冷ましたほうれん草を摺鉢へ。菜ばしを操って、ザクザクっとあえたら完成。時には、横着して、摺鉢のまま食卓へ出されることもあった。

 そんな思い出があるものの、自分で作る場合は、そんな「手間ひまは」決してかけない。当時は「摺り担当」だったから気合いを入れられたわけで、ほうれん草を洗うところから盛付けまでの工程を思うと、なかなかやる気になれない。それに、わが家には『摺鉢』も『擂り粉木』もない。
 味付けだけは、母親のものに近いように気遣うが、胡麻はでき合いの炒り胡麻をそのまま振りかけるし、香りの足りなさは胡麻油で補う。それだけで、「それっぽく」なる。削り節をかけたりはしない。そして、いつも、2、3口食べると、ご飯が欲しくなる。これも、子供のころの記憶の延長だろう。

 ところで、最近知ったのが、油と少量の水を使った、簡単なアク抜き方。中華鍋のような大きな鍋で、ささっと炒める。クタっとなりはじめたところで、コップ半分程度の水を投入して混ぜ合わせ、蓋をして10~20秒火にかけて終わり。後は、茹で上げた時と同じように、水気を切って冷ませばよい。湯を沸かす手間と時間を要しないし、大量の湯を捨てる「もったいなさ」も解消できる。

 最近は、こうして「スピードアク抜き」したものをザクザク切って広い皿に敷き、その上に焼いた肉を乗せて一緒に食べることが多い。この場合、ほうれん草は、少し固めにしておくと歯ごたえも楽しめて美味い。市販の焼き肉のタレをつけて食べることもあるが、必ず、一部分はマヨネーズを合わせる。中華に使う時も、最後に一絞りのマヨネーズを投じる。
 私としては、相性がよい、と思っているのだが、そういう使い方をしているのをテレビやネットに掲載されている「調理法」で見たことはない。