旅に出たとき、とくにそれが異国の地であったとき、こう感じることがよくある。その地に降り立って1日目。気軽に適当に手に入れたものが、これだ!と感じられること。僕にとっては台湾へ行ったときの「台湾麦酒」。これをコンビニで見つけたとき、あ、安いと思うと同時にもうそう思った。これさえあれば、もう「大丈夫だ!」。ホテルへ早速持ち帰って飲んで味も的中した。これさえあれば! なんと大げさなというかもしれないが、とにかくそうだった。大げさついでにもっと言うと、これさえあれば旅は極楽、人生までOK、という感じだった。台湾到着直後、腹が減って入った食堂の、肉入り麺もそうだった。これがあればもう「安心!」
台湾麦酒はコンビニやレストランでは瓶のものもあり、どこでも安く手に入る。麺も食堂、屋台、どこでもやっている。
そういうことが、旅に出たときにはある。
30年以上前にインドへ行ったときのそれは何だったか、と考えてみた。
一つは、水。レストランなどでのコップの水。これはガイドブックなどには、生水は飲まない方が良いと書かれてあって旅行者などは避ける人が多い。だけど同じ人間でその土地の人たちはみんな普通に飲んでいる。僕は、あまりに暑くて喉が渇くのでインド到着後、もうすぐにレストランやいたるところで飲み始めた。飲まないとどうしていいのか分からないのだ。水分を摂るという生き物にとって基本的なことが大変なことになってしまうのだ。それで飲んだ。数日たっても特に腹下しになることもなかったから「大丈夫だ!」とこの時、思った。もう旅は大丈夫だ! 何とも安易で素早い自己判定がすぐに下されていたのである。多少気を付けることはあるにしろいつも好きに水は飲んでいた。インドではチャーイというのがどこのレストランでもある。これも「大丈夫要素」の一つだった。チャーイは砂糖が豊富に入っているのが一般的なのだが、体調が悪いときなどはそれが胃に堪えるときがあって、あるとき店の人に砂糖を抜いてくれないか、と言ったら、「without sugarね?! black teaね!」と言って気軽に作ってくれた。それ以来、そのblack teaが気に入って、いつもそれを頼んでいた。安いしどこでも気軽に飲めて水分の補給にもうってつけだ。もうこれで僕の旅はOK!という思いだった。心強い味方と言えるだろう。食べ物類で言えばチャパティーがそれにあたる。ナンに比べてチャパティーには野趣があり、どこでも提供していて、これは僕の大好物だった。
人によってその大丈夫要素には違いがあるだろう。旅で出会った人にそういうことを聞いてみると、それは自分にもイケるものかもしれない、ということがしばしばだ。
ヨーロッパへ行ったとき・・・、これは水道の水は飲まなかった。ペットボトルの水がどこでも手に入り、それを飲んでいた。大丈夫要素の一つだったのだのだが、必要なものとして一日に何本も飲み、結果、意外に高いなというのがその印象である。もろ手を上げての大丈夫要素とは今ひとつ至らなかった。