夜遅く、ジョグ&ウォークに出た。
気味が悪いくらい静かな夜だった。
TVでの喧騒がうそのようだった。
ジョギングに疲れ、しばし大樹の下で休憩した。
佇んでいた。闇と大樹の影が不気味といえば不気味だった。
やがて、小さな、ほんの小さな音、カサカサという音がすることに気
づいた。
気のせいかと思った。
音のする方向を探ろうとしたが、闇がカサカサと音を立てていて視線
を定めるこ とができなかった。包み込む闇全体がカサカサという
かすかな音を立てていたのだ。
それでも、まだ、気のせいかと思っていた。
視線は方向を失い、頭上を覆う不気味な大樹の影のあたりを
さまよった。
空から細かな白いものが無数に降ってきていた。
みぞれだった。
音の原因はそれだった。冬の大樹の枯れた葉に、無数のみぞれ
が降りかかり始めた音だったのだ。
雪に変わりそうだ、と思った。