寒い冬だと動物たちも動きが悪く、きっと暖房が効いた部屋で眠りこけているだろうと思った。
しかし冬の風物詩である猿団子でも撮りに行こうと思い直し、福岡市の一等地にある動物園に出かけた。
ここは、植物園も併設されていて足の利便性がいいので、街中の動物園として訪れる人も多い。
それに近頃はやりの体験型動物園に向け、リニューアルが進められている。
いつ行っても、ライオンとトラは最上段で寝ていることが多いのだが、この日は檻の中を動き回っていた。
動物園では、長いレンズをつけたカメラを使用することが多いので
車の中で望遠レンズをカメラに装着し、首からぶら下げてガラスの向こう側をうろつくトラにおはようと言った。
「オウ!!久しぶりだな元気だったかよ」と、トラの怖そうな目が一瞥をくれた。
ライオンもトラもこの日は、ガラスでできた仕切りの近くにいるので
焦点距離の短いレンズをカメラに着けようと思ったが、まぁいいかと思ったのが大間違い。
隣の檻のライオンもウロウロと落ち着きなさそうに歩き回り、水抜きのためのグレーチングの蓋を歯で咥え上げたり下げたりしている。
グレーチングの蓋でなくてよかったと思いながら見ている間に、レンズのことは頭から消え無理な体勢でシャッターを押す。
更に隣の獣舎から叫ぶような大きな鳴き声が、何事かと覗いてみるとメスのライオンが盛んに鳴いている。
鳴き声がする度にオスライオンの目が、遠くを見つめるような物悲しそうだが怖そうな目になる。
ついには隣のメスがいる獣舎の木製の壁に、よじ登ろうと健気な努力をする。
メスの鳴き声が妙に艶っぽかったのは、もしかして発情期なのか
壁によじ登ろうするその背中を撮ろうと思ったが、あっけにとられている間にライオンも無駄な努力はやめにしてふて寝してしまった。
やはりレンズを変えていれば、悲哀を帯びたオスライオンの後ろ姿も撮れたかもしれず
シャッターチャンスを逃したなと思った事は、後から更に大きな後悔となって訪れる。
人間ひらめいたことはやっておかないと後悔する。
「後悔先に立たず」その言葉をこれまで何度かみしめてきたことか
フ~っ