好奇心は強い方である。が、デバガメではない。ましてこのチャンスを逃したら後がない、イトトンボの恋路を邪魔しようとは思ってもいない。とわかっていながらもそっと忍び寄り、邪魔になる手前の草をそっとずらしたり、地面に這いつくばって匍匐前進をしながら、息をひそめて近づいている姿を見れば、はた目からみればお邪魔虫に違いないんだろうが。
最初は小枝で、邪魔な葉っぱを押さえていたが、葉っぱにも意地があるのか、そうそうにこちらの都合通りにはならない。仕方がないのでそっと手で葉っぱ押さえると、イトトンボは慌てて飛び立ち近くの葉に止まる。これを何度か繰り返し、50枚ほど撮った写真は面白くない。そうやって粘っている姿を見て哀れに思ったのか、それともどうだーと見せつけたかったのか、イトトンボは、こちら意図するところにとまってくれた。
であればとじわじわと後退し、カメラバックからストロボを取り出し、セットするとまた匍匐前進でにじり寄りシャッターを押した。イトトンボの姿はちょっとグロテスクではあるが、やはり美しい愛の形なんだろう。