
おはようございます。旅人宿 会津野 宿主の長谷川洋一です。
3月1日の日経新聞朝刊1面トップに「全農、スシローに出資」という記事があります。
記事を読むと、JA全農と回転すしを展開するスシローとの間で資本提携を行い、米の消費拡大を目指すとしています。加えて、米の消費セクターである飲食店と生産セクターの農家の間で、商品についての品質向上にかかわる意思疎通を高めるとしています。
いままでのJAの流通を考えると、農家から生産された米を集め、仲卸業者に卸すところまでがJAの役割でした。このニュースは、仲卸業者を飛ばし、直接消費セクターへ届けるということを意味しています。
同じようなニュースが福島でもありました。こちらは、「パンでコメ消費拡大」というもの。
私の暮らす会津地方のJAであるJA会津よつばが、福島市の食品会社「銀嶺食品」と業務提携を結び、米粉パンの製造販売をするというものです。
こちらは、規格外のコメを活用し、農家の収入拡大を図るものです。
パン製造を行っている私から見ると、規格外のコメを手に入れて米粉パンを作るには、農家と直接交渉するしか方法がありませんでした。米粉パンは、一般に食用として販売されているコメを粉にして使うと、とても高い商品となってしまいます。なぜなら、政府が価格を決める小麦に比べると、とても高い価格だからです。ただ、規格外のコメが一般に流通してしまうと、価格の安いコメに消費者が流れてしまい、全体の価格を押し下げ、ひいては農家の収入が減るということになってしまいます。それは農家に対しマイナスなので、そういう行動はできません。
製造技術面では、パンは小麦粉に含まれているグルテンと酵母の働きにより、発酵し膨らむことを経て製造されます。コメはグルテンの含有がとても少なく、小麦粉の代わりに使ってパンを作れるという性質のものではありません。実際に販売されている米粉パンは、小麦粉と米粉を配合し、パンが膨らむだけのグルテン量を確保するか、別にグルテンを添加して製造する方法をとります。
なので、米粉パンを作るということは、小麦粉を扱う製粉会社との連携も必要になってくるのです。
このような背景のなか、規格外のコメを直接食品会社に販売し、新たな流通経路を開拓することは大変評価できます。ただ、報道のように6次化事業として成果を示すには、製粉会社との連携が必要なのではないかと感じます。製粉会社はより多く小麦粉を売りたい気持ちが働くもの。なので、次の試練はここにあるということになるでしょう。
さて、JA全農も、地域のJAも、仲卸を介さない流通方法に舵を切り始めました。
民間では、このような中抜き流通がある程度進んだと思いますが、日本の流通は、最終的に中間業者がいなくなるところまで向かうのか。今回のニュースは、この点を注視したくなる出来事でした。
今日も素敵な一日を過ごしましょう。
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