音信

小池純代の手帖から

雑談4

2021-07-07 | 雑談
雑談に至る前のほとんどメモ。

玉城徹『汝窯』は自選歌集。1975(昭和50)年に刊行。
第一歌集『馬の首』1964(昭和37刊)、
第二歌集『樛木』1972(昭和47刊)から選んでいる。
大正13(1924)年生まれだから五十代前半の刊行。

大正14(1925)年は斎藤茂吉の自選歌集『朝の螢』が出版された年。
第一歌集『赤光』、第二歌集『あらたま』の二冊を中心に
1906(明治39)~1917(大正6)まで11年間の作品から選んだ。
四十代前半の刊行。

判型も同じ四六判で装丁に山の絵が使われているところなど
共通点がいくつかあって興味深い。

  

自選歌集ということで比較してみると、
塚本邦雄『寵歌』は第十五歌集と第十六歌集の間、六十代後半の刊行。
岡井隆『蒼穹の蜜』は第十三歌集と第十四歌集の間、六十代前半。

『寵歌』は編年体。一首ずつ作品番号を振ってどの歌集のどの章のそれか
一目瞭然なうえに索引もついている。塚本邦雄年代記とでも言おうか、
前期中期のミニ辞典というぐらいに親切な編集。

『蒼穹の蜜』は幼少期から壮年期にかけての著者影が各章の口絵に
挿まれていて一見、自伝歌集であるかのように見えるが、
構成は編集を効かせている。そう見せておいてこう見せない、
表裏比興のひとつの在り方など思う。

『汝窯』は、第一歌集、第二歌集の「組織をできるだけ破壊しようと
努めた」と「おくがき」にあるとおり「解体」して構成されている。
そこは茂吉のプチ『赤光』とプチ『あらたま』をつなげたような
『朝の螢』とは大いに異なる。








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