音信

小池純代の手帖から

十喩詩 5 しんきろう

2020-03-30 | 日記
空海「十喩詩」より

   五 詠乾闥婆城喩

  海中厳麗見城櫓 走馬行人南北東
  愚者乍観為有實 智人能識假而空
  天堂佛閣人間殿 似有還無與此同
  可咲嬰兒莫愛取 能観早住眞如宮



翻案四首

  しんきろう


うなばらに城はそびえてありにけり人ら行き交ひ馬走り去る

「ねえあれはほんたうのこと?」「あれはねえにせものなのよほんとの話」

すばらしくすてきなたてもの だつたかな 消えてしまへば面影もなし

いつまでもそこにゐないでさあ早くおいでなさいな此処はいいわよ

 
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十喩詩 4 かがみ

2020-03-20 | 日記
空海「十喩詩」より

   四 詠鏡中像喩


  長者楼中圓鏡影 秦王臺上方丈相
  不知何処惣来去 此是因縁所生状
  非有非無離言説 世人思慮絶籌量
  莫言自作共他起 外道邪人繞虚妄
  心神衆生不異同 因縁而顕猶如響
  閑房攝念無明断 蘭室焚香讃響暢
  三密寥寂同死灰 諸尊感應惣来訪
  莫喜莫嗔是法界 法界與心無異詳




翻案八首
    かがみ

とつぷりと水面のふりをして澄ます鏡よ鏡ゆらぐなよゆめ

かなたより来てはるかへと去るふるまひのかがやきを其を星といふ *其:そ

有るのでもなく無いのでもないはかり知られぬほどのわづかなひみつ

あなたでもわたしでもなくなほましてあなたとわたしでもないうつろ

わたくしのうちなるほとけわたくしのそとなるほとけ響かふべしや

いい部屋のきれいな空気 hummingと香のけむりの機嫌がよさげ

行ひと思ひとことば一斉に立ちあがりたり死より明るく

わたつみのなみだつさまは喜びにあらずましてや嗔りにあらず *嗔:いか





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