音信

小池純代の手帖から

日々の微々 240720

2024-07-20 | 歌帖

     「ば・ぶ」四首

   ばぶる bubble

 割れてみて初めてわかるばぶるなる皮うすき実の空気の風味


   ばんぶう bamboo

 ばんぶうの筒より出づる姫黄金あはれうつつのゆめものがたり


   ばすたぶ bathtub

 ばすたぶはゆりかごにしてひつぎなれひとつで足りる極楽小舟


   ばぶわう babuwau

 芭蕪翁と誤植されにし芭蕉翁はるかなりけり昭和の写植

 芭蕪翁:ばぶわう

  

     「だ・ぶ」二首

   だぶすた double standard

 だぶすたと言はば言ふべしさぐられて痛くない腹滅茶痛い腹


   ぶつだ Buddha

 吾がうちの仏陀仏陀のうちの吾れウールムッター無たる仏陀よ

                           無:む









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日々の微々 240716

2024-07-16 | 歌帖

     つゆのま三首  

 涼しさや梅雨の出口の一呼吸このまま秋の庭の奥まで


 梅雨晴の「ば組」御頭おごそかに且つおだやかにバッハと芭蕉

           御頭:おかしら


 蕉翁の訓へ灼かピスタチオの殻はピスタチオの殻で割れ
     訓:をし 灼:あらた



     時計二首

 細雨の針に追はれてしくしくと長針ウサギ短針カメ
 細雨:ささあめ          長針:ながばり 短針:みじかばり


 倒れたら堂々巡りの ∞ 起きてください8の字達磨
            ∞:無限大









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日々の微々 240711

2024-07-11 | 歌帖

     試作数句  

 いくたびも地球もんどりうつ酷暑

 冷房の風極楽のいのちづな

 楯並而いざ鎌倉の夏野菜

  楯並而:たたなめて


          †

暑苦しい拙句だけではなんなので、
『おくのほそ道』から芭蕉の涼しげな二句を。

   有難や雪をかほらす南谷   〈羽黒〉

           ほ:(を)


   象潟や雨に西施がねぶの花  〈象潟〉








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日々の微々 240702

2024-07-02 | 歌帖

     半夏生すこし  


 梅雨の間にうぐひすが来てうるうると鳴くありさまをほろほろと聴く


 花白きところその都度たちどまりたちどまりして梅雨の坂道


 ものなべてこともなきなり半夏生死にたくもなく生きたくもなく


 けむりにも花にも化けてみせませうありやなしやの片白草の毒

                            片白草:カタシロ


 裾物といへどこの世はそらの裾そらよりほかによき衣なし








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