音信

小池純代の手帖から

日々の微々 220730

2022-07-30 | 歌帖


   ・こよみ独吟・

 みちのくはいま濃緑の葉月哉  濃緑:こみどり

  長月なのに足らぬ一日

 神無月地図の港に雲もなし

  霜月の庭月と見紛ふ

 極月といふどん突きに煉瓦尽く

  正月の「正」陸続と増ゆ

 如月の恋菓子ひとついやふたつ

  薄切りにしてはさむ三月

 フィレンツェに嘘の上手な卯月来る

  五月の空は飛ぶ鳥が統ぶ

 水無月を水から水へ旅の日々

  奇数の脚の椅子と七月

      †

遠足の支度をしながら考えた。
野点のように、草麻雀のように、
気軽に気楽にささっと遊ぶには。

適当なシバリを作って試しに巻いてみたのがこれ。
大まかなシバリは、

・歳時記は使わず。
・季語は十二ヶ月の月の名称のみ。
・ぐるっと一巡させて十二韻。

過程で発生した中ぐらいのシバリは、

・ほかの季語を使ってしまっても気にしない。
 月の名前が入っていればよしとする。

あとづけのシバリは、やっぱりあったほうがいいこちら。

・「月・花」は騙し絵っぽくこっそり。
・「恋」は適宜まぶす。




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雑談45

2022-07-30 | 雑談
 心静無炎暑
 端居思渺然
 水雲涼自得
 窓下抱花眠
        (芥川龍之介書簡より)



芥川が二人の知人に宛てた二通の手紙に記した漢詩。
起句に一箇所違いがあって「心静」と「心情」の二通り。
今回は「心静」を選んだ。


 〈翻歌〉

炎さへしづくに変ふるしづごころ夏のしづくぞ散りてしづけき


端居して思ふいづこも時の端あなたの端はわたくしの果て
端居:はしゐ

水の面にうつる雲其をうつす水おのづからなる間の涼しさ
   面:も    其:そ           間:あひ

花抱いて花に抱かれて眠らなんここはどなたの小窓のほとり





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