音信

小池純代の手帖から

十喩詩 3 ゆめ

2020-02-27 | 日記
空海「十喩詩」より

   三 詠如夢喩


  一念眠中千萬夢 乍娯乍苦不能籌
  人間地獄與天閣 一哭一歌幾許愁
  睡裏実真覚不見 還知夢事虚狂優
  無明暗室長眠客 処世之中多者憂
  悉地楽宮莫愛取 有中牢獄不須留
  剛柔気聚浮生出 地水縁窮死若休
  輪位王侯與卿相 春栄秋落逝如流
  深修観察得原底 大日圓圓萬徳周



翻案八首
    ゆめ

ひとつぶのゆめにみのれるときじくのその実あまきかにがきか知らず

これの世の此面彼面をゆめにみて泣けどうたへど愁ひの重さ  *此面彼面:このもかのも

ほんもののゆめは贋物にせもののゆめは似せもの失せものは何処

くらやみにゆめをむさぼるねむりからさめれば残る憂ひの辛さ

ゆめさめてつぎなるゆめにうつるのみゆめよりほかのいのちなきなり

ひきむすぶものなくなればはらはらと散りゆくばかりむらぎものきも

春の日も秋の夕日も王さまの冠もみなかがやきて落つ

わが心涸れ井戸になれ底よりかこみあげてくる尽きせぬひかり





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