音信

小池純代の手帖から

ぶぶんぶん(6)

2017-11-29 | 歌帖
  『詩経』意訳ノート(6)


  145 「澤陂」(陳風 澤陂)

 彼澤之陂
 有蒲與荷
 有美一人
 傷如之何
 寤寐無為
 涕泗滂沱

 彼澤之陂
 有蒲與蕑
 有美一人
 碩大且卷
 寤寐無為
 中心悁悁

 彼澤之陂
 有蒲菡萏
 有美一人
 碩大且儼
 寤寐無為
 輾轉伏枕


  あの水辺

 あの水辺 
 ましろき蓮の
 をみなごの
 そのおもかげに 
 ねてもさめても
 涙こぼるる

 あの水辺
 蓮のつぼみの
 をみなごの
 そのおもざしに
 ねてもさめても
 心焦がるる

 あの水辺
 蓮の花咲く
 をみなごの
 そのまなざしに
 ねてもさめても
 みだれみだるる
 
 
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ぶぶんぶん(5)

2017-11-28 | 歌帖
  『詩経』意訳ノート(5)


  81 「遵大路」(鄭風 遵大路)

 遵大路兮
 摻執子之袪兮
 無我惡兮
 不寁故也

 遵大路兮
 摻執子之手兮
 無我魗兮
 不寁好也


  おほどほり

 袖を引いたら
 すげなくされた
 花の末枯の  *末枯:すがり
 おほどほり

 すがりついたら
 ふりはらはれた
 恋の尽の   *尽:すがり
 おほどほり
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ぶぶんぶん(4)

2017-11-27 | 歌帖
  『詩経』意訳ノート(4)


  103 「盧令」(齊風 盧令)

 盧令令
 其人美且仁
 盧重環
 其人美且鬈
 盧重鋂
 其人美且偲


  犬の首輪

 首輪りんりんくろい犬
 つよくやさしい主とともに  *主:あるじ

 首輪しやらしやらくろい犬
 くろかみなびく主とともに

 首輪からからくろい犬
 くろひげそびく主とともに

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ぶぶんぶん(3)

2017-11-26 | 歌帖
  『詩経』意訳ノート(3)


  127 「駟驖」(秦風 駟驖)

 駟驖孔阜
 六轡在手
 公之媚子
 從公于狩

 奉時辰牡
 辰牡孔碩
 公曰左之
 舍拔則獲

 游于北園
 四馬既閑
 輶車鸞鑣
 載獫歇驕


  くろがねいろの馬

 居並ぶくろがねいろの馬
 たづな六筋にひきしぼる  *六筋:むすぢ
 狩に出で立つ美丈夫の
 お伴は殿のお気に入り

 いざうるはしきいまのいま
 旬の獣ぞ放たるる
 殿が「左」とのたまへば
 矢はあやまたず射止めたり

 北のみ園を巡る馬
 鈴を鳴らして走らする
 車に載るは狩の犬
 口の長きも短きもあり

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ぶぶんぶん(2)

2017-11-26 | 歌帖
  『詩経』意訳ノート(2)


  221「魚藻」(小雅 魚藻の什)

 魚在在藻
 有頒其首
 王在在鎬
 豈樂飲酒

 魚在在藻
 有莘其尾
 王在在鎬
 飲酒樂豈

 魚在在藻
 依于其蒲
 王在在鎬
 有那其居 



  水草に魚   *水草:みくさ 魚:さかな

 水草に魚
 おほきな頭   *かうべ
 王さまはここ
 たのしき宴

 水草に魚
 立派な尾ひれ
 王さまはここ
 たのしく宴

 水草に魚
 蒲の葉のかげ
 王さまはここ
 都の宴

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ぶぶんぶん(1)

2017-11-26 | 歌帖
  『詩経』意訳ノート(1)


  279「豐年」(周頌 臣上の什)

 豐年多黍多稌
 亦有高廩
 萬億及秭
 爲酒爲醴
 烝畀祖妣
 以洽百禮
 降福孔皆


  みのりの日

 黍も山ほど
 稲も山ほど
 倉も山ほど
 星の数ほど
 旨酒神酒一夜酒     *うまざけかみざけひとよざけ
 遠きみおやにたてまつる 
 まつりの礼はきりもなく
 ふりくる幸ははてもなし
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