音信

小池純代の手帖から

日々の微々 230228

2023-02-28 | 歌帖
  230228


    或る日の二月


 〈いまここ〉が〈どこにもない〉へすみやかにうつりうつろふきさらぎの月


 此処にありしあれは雪とも灯りともあかるくつめたき如月の頃


 如月のかをり良かりき二日三日足らぬ暦の余白のかをり







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日々の微々 230219

2023-02-19 | 歌帖
  230219


    或る晩の白


 白き影が通り過ぎたりわがうちのあるかなきかのきれいな路を


 雪落ちて水に氷に或るはまたゆるりとぬるい泥にくつろぐ


 髪白くなるはなかなかよいものよ鶴にならうか鴎にならうか








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日々の微々 230212

2023-02-12 | 歌帖
  230212


    或る夜の梅


 きさらぎのこごゆる闇のひびわれのひびより出づるしら梅の花


 梅の花いづこにつづくきのふからけふへと架かるゆめのうきはし


 春の夜のゆめのうたかたしらうめの闇にうもれてかをるつかのま







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日々の微々 230210

2023-02-10 | 歌帖
  230210


    或る日の春


 その鳥の名前は知らず春の日の囀り聞けりそのさへづりを


 如月の玉菜空豆箸先のみどりさみどりきさらぎぞ良き


 泣くほどにいよよちからは湧くものを凍れる雨の梅のくれなゐ









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