弁護士早瀬のネットで知財・法律あれこれ 

理系で特許事務所出身という経歴を持つ名古屋の弁護士があれこれ綴る雑記帳です。

特許権侵害の判断手順2

2014-09-23 16:42:34 | 特許

今日は秋分の日。

祝日ですが、法律事務所も特許事務所も営業日です。

電話もメールもほとんどなく、事務所内はとっても静か。

 

 

さて、特許権侵害の判断手順について、前回の続きを書きます。

前回、続きは明日と書いておきながら、1週間も空いてしまいました。

 

一応、少しおさらいをしますと、

・特許権侵害の判断手順は3段階あり、

・最初の段階(特許発明の内容把握)は、【特許公報】の【特許請求の範囲】という項目の、さらに基本的には【請求項1】に記載された内容を確認する

というものでした。

 

実はこの最初の段階、特許を仕事としている人にとっては、ごくごく当たり前のことですが、特許の知識があまりない方には、案外重要だったりします。

ついつい、「図面に書かれているものが似ているから」とか、請求項1をすっとばして、「請求項2の内容が同じだから」という話をしてしまいがちですが、そうではないんですよと。

 

でもって、今日は次の段階(対象製品が特許発明の構成要件に該当するかどうかの形式的判断)の話です。

 

最初の段階で、【請求項1】をみるということでしたが、そこには、特許発明の内容が文章で書かれています。

文章で発明が表現されているため、素人目には結構わかりづらかったりします。

 

身近な特許商品である「グリコのお菓子(Cheeza)」を題材に、説明してみましょう(特許第4854631号)。

 注)写真は江崎グリコ(株)のHPの写真を引用しました。
                          「Cheeza」は江崎グリコ(株)の登録商標です。

 

この「Cheeza」がどう表現されているかというと、

【請求項1】
 少なくとも1つの孔を有し、チーズと最大膨潤力30以上の澱粉を主成分とし、さらにトレハロースを含み、厚みが6mm以下、かつ、全ての孔の面積の合計が焼成後の面積に対して3%~50%の範囲内にあり、チーズが固形分として前記澱粉100重量部に対し45~150重量部含まれる、焼き菓子。

となっています。

ちなみに、発明の効果は、「チーズの香味が十分に発現し、焼成後にカリカリとした食感を有した焼き菓子を得ることができる。」ということだそうです。

これはまだわかりやすい方ですね。

 

一文形式となっていますが、わかりやすくするため、文節で区切ります(実務でも、裁判所でも同じようなことをします。)。

A: 少なくとも1つの孔を有し、

B: チーズと最大膨潤力30以上の澱粉を主成分とし、さらにトレハロースを含み、

C: 厚みが6mm以下、

D: かつ、全ての孔の面積の合計が焼成後の面積に対して3%~50%の範囲内にあり、

E: チーズが固形分として前記澱粉100重量部に対し45~150重量部含まれる、

F: 焼き菓子。

 

上記A~Fの各要素が特許発明の構成要件であり、対象商品がそれら各構成要件に該当するかどうかを判断します。

それにより、一つでも構成要件に該当しない場合は形式的には非侵害、すべてに該当する場合は特許侵害となる。

 

したがって、

・孔が一つもない → 構成要件Aに該当しない

・トレハロースを含まない → 構成要件Bに該当しない

ということで、形式的には非侵害。

一方、構成要件A~Fのすべてに該当するけど、四角形だったら?

この場合、実際の「Cheeza」は三角形ですが、発明では形状が特定されていないので、侵害となる。

 

ここでは、あくまで一般論としての説明ですが、特許侵害となるかどうかは、基本的にはこうやって判断していきます。

 

ただ、この段階で形式的には非侵害となっても、まだまだ終わりではありません。

さらに次の段階がありますので、それについてはまた次回!

 

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特許権侵害の判断手順1

2014-09-16 20:23:29 | 特許

3連休はとてもいい天気でしたね。読者の皆様は、いろいろお出かけされたことと思います。

私はと言えば・・・、連休中は毎日事務所に来ていたので、休み中にこんなところに行ってきましたーのような報告は何もありません(泣

 

さて、今日の話題です。

隣の席で仕事をしている廣田弁理士(「名古屋の商標亭」のブログ主)とのなにげない会話をきっかけに、特許権侵害の判断手順についての超々基本的な一般論を、3日間の連載で書いてみようかなと。

知的財産関係を専門に扱う部署(知的財産部)に所属している方や、知的財産の専門家にとっては、なんじゃそりゃというような当たり前の話ですけど・・・

しかも、なぜ一度に書かないかって?

えー、このところブログを書く余裕がなくなってきたのでちょっとズルです(汗

 

では、本題に。

 

特許権侵害かどうかを判断するには、次のような手順を踏みます。

 

1 特許発明(特許権が付与された発明のこと)の内容を確認する

2 対象となる製品が特許発明の構成要件に該当するかどうか形式的に判断する

  → ここで構成要件に該当するとなれば特許権侵害

3 2の形式的判断で構成要件に該当しないとなった場合には、実質的な判断をする

 

構成要件に該当するかどうかって、なんとなく、刑法における犯罪成否の議論のようですね。

 

まず、1について

 特許に関して特許庁が発行する公報には、公開特許公報】【特許公報】の2つがあります。

 公開特許公報】

  この公報には、特許出願されたときの内容がそのまま掲載されているだけで、いまだ特許権が付与されていない状態のものです。

 【特許公報】

  この公報には、特許権が付与された状態のものが掲載されています。

 

 ですから、特許発明(特許権が付与された発明のこと)の内容を確認するには、見出しに「公開」がついていない【特許公報】を見る必要があります。

 【公開特許公報】をもとに権利侵害かどうかの議論をするのは、そもそも前提が間違っているということになりますので、まずこの点で注意が必要です。

 

 次に、この【特許公報】のトップページには【特許請求の範囲】という項目が存在します。

 その【特許請求の範囲】には、【請求項1】【請求項2】等のように書かれている部分がありますが、これら各請求項に記載されている内容が「特許発明」です。

 通常は、【請求項1】に書かれている特許発明がもっとも権利の範囲が広いため、この【請求項1】に書かれている特許発明の内容を確認します。

 

このようにして、特許発明(特許権が付与された発明のこと)の内容を確認します。

次の手順2については、また明日。

 

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国選弁護シンポジウムin名古屋

2014-09-12 21:06:59 | 法律一般

今日の午後は,日弁連主催の国選弁護シンポジウムに出席してきました。

2年に1回の開催で,今回は地元名古屋で開催されました。

このシンポ,弁護士でなくても参加可能です(無料)!告知としては今更ですけど。

 

 

今回は,全部で3部構成。

備忘録もかねて,どんな内容だったのかを少し書こうと思います。

 

[第1部]  量刑データベースと情状弁護

 情状弁護というのは,被告人に有利となる事情を主張して,刑を軽くしたり執行猶予をもらうための弁護活動です。

 例えば,被害者と示談して罪を許してもらったとか,介護疲れ等の動機に同情の余地がある等ですね。

 裁判員裁判になったことで,性犯罪系は刑が重くなっている一方,介護疲れの殺人等の同情の余地がある場合は,執行猶予がこれまでつかなかったような事案でもつくようになっている,などの報告がありました。

 

[第2部]  面会室におけるカメラ,パソコン等の使用について

 今,面会室で弁護人がカメラやパソコン等の電子機器を使用することについて,弁護士が訴訟で国と争っています。

 例えば,逮捕時に警察から暴行された痕が被疑者の体に残っているとすれば,それを証拠にして逮捕行為の違法を主張するため,弁護士としては,面会室で写真を撮るわけです。でも,留置施設側は持ち込むなと言う。

 国と争うこともいとわず,カメラ等を持ち込むべきだ!というお話と,訴訟の現状に関する報告が行われました。

 

[第3部]  逮捕段階の公的弁護制度を構想する~イギリス調査を踏まえて~

 被疑者・被告人に対して,国の資金で弁護人を付ける国選制度というものがあります。

 被疑者が身柄拘束される場合,最初に逮捕(最大3日まで),その後勾留(基本は10日間で一般には最大20日間)という手続となるのですが,現状では,国選で弁護人がつくのは,勾留段階から。

 なので,これを逮捕段階にも広げるべきだと弁護士会は主張してます。

 この点に関していろいろ報告がありました。

 

刑事弁護に関していろいろ勉強になりました!

来週は刑事弁護の国選事件割当日があります。さて,どんな事件がまわってくるかな。

 

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料理のレシピと著作権

2014-09-11 23:20:34 | 著作権

おとつい紹介した高校時代の友人のブログ

      「 joli!joli!のおうちごはんとおかしとねこ  

 

「joli」(ジョリ)って一体なんだ?と思って調べてみたら,フランス語で,綺麗とか可愛いって意味みたいですね。

写真が多くて楽しめるブログです。それに比べて,わがブログは…

一応,法律や判例に関するブログなので,つい文字が多くなるのは仕方がないのですと言い訳しておきます。

 

今日は,彼女(joli!joli! さん)が書いたブログ記事に関する話をとり上げようかなと。

どうやら,ブログに載せたレシピが,さも自分が考えました的な感じで,勝手に転載されたことがあったそうです。

困った人もいるものです。

 

 

転載されているかどうかを見つけるのはなかなか難しいとは思いますが(常に監視できるほど暇ないですしね。),もし発見したり,誰かから教えてもらえた場合には,彼女がとったように,まずはサイトの運営会社に削除申請をするのが一番よい方法です。

普通の運営会社なら,対処してくれると思います。

これは,ネット上で個人や会社が誹謗中傷された場合も同じ。

 

ところで,料理レシピと著作権との関係についてはどうなっているのでしょうか。ちょっと確認してみましょう。

彼女(joli!joli! さん)の記事でもまとめられていますが,ちょっと補足します。

 

まず,レシピ(料理法)そのものについて

 これはアイデア(着想)なので著作物ではありません。著作物であるためには,そのアイデアが文字や写真等で具体的に表現されていることが必要なのです。したがって,著作権は発生しません。

 というわけで,レシピそのものを真似されたくないなら,「秘伝」とすべきであって,本来公開しちゃだめです。

 

では,自分で考えたレシピ(料理法)を説明した文章はどうか?

 これは判断が難しいところです。著作物といえる場合も考えられるし,著作物とはいえない場合も考えられます。

 例えば,「フライパンに油を入れて,野菜をいためる。」「塩コショウして,水を入れて煮る。」というように,レシピを説明しようとすれば誰が説明しても同じになるような説明の仕方では,「創作性」がないとして著作物とはみなされない可能性があります。

 一方で,説明方法に何がしかの工夫があれば,「創作性」が認められる余地はあります。どんな表現ならいいのか…,要は独特の表現であって,ありふれた説明でなければいいのですが,簡単には思いつかないので例示できないです。

 

あと,料理の途中や完成品を写した写真について

 これは,一般的には著作物性ありでしょうね。なので,勝手に転載すれば著作権侵害です。

 

著作権云々を考え出すと,特に,レシピの説明文についてはなかなか難しい問題が出てきます。

普通は,わかりやすくするために写真も一緒にコピーされると思うので,一般には著作権の侵害となりますが,説明文だけのコピーとなると,ちょっとハードル上がりますね。

となると,そこは個々のマナーに頼らざるを得ないのが実情なのかもしれません。

 

 

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Facebookの威力

2014-09-09 19:04:54 | その他

今日は平成26年度司法試験の合格発表日。

合格者は,例年より少ない約1800人でした。司法試験の受験者数が減少している中で,合格者数もだんだんと少なくしていく方向なのでしょうか。

知り合いの受験生は残念ながら不合格だったみたい…,なんとも言えない残念な気持ち。

 

でも,一方では,嬉しいことも!

Facebookの個人アカウントで,高校時代の友人に,たまたまつながりました。Facebookの威力を実感。

すごく久しぶりだし,学生時代が思い出されてとても懐かしい。

 

ブログも書いてるってことで,見てみたら,料理やお菓子,旦那さんとの日常などが綴られていて,家庭的で幸せたっぷりな感じが伝わるブログでした。

高校時代の雰囲気そのままだなあー(^^)

joli!joli!のおうちごはんとおかしとねこ

 

ル・コルドンブルー神戸校や,パリのRitz Hotelでお菓子作りの勉強をしたという本格派!

ブログには,美味しそうなお菓子や料理の写真がいっぱいです。甘いもの好きの僕としてはたまらない。

 

彼女のブログで,僕のこのブログも紹介してもらいました。

僕のブログの読者の女性比率は不明ですが(たぶん低い…当たり前か?!),女性やお菓子作りの好きな方は必見!

 

で,この後すぐに,弁護士と弁理士とが集まっての勉強会です。

もう少し書きたい気持ちを抑えて,勉強会行ってきます!

 

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