ふいに消えた

2010年08月25日 | 日記
もう一週間も佐川君を見かけない。
タイミングが合わないのではない。
とうとう、そこからいなくなってしまった。
一週間見ないだけで、とも思ったが、何となくわかる。
トラックも違うドライバーの名前になっているし、そこらじゅうで走り回る飛脚はたくさん見かけるが、佐川君だけいない。
佐川君が担当していたルートは全て他の飛脚が回っている様子。
今まで1週間も姿を見ないことはなかった。
最後に見たのは、飲み物を差し入れた時。
電話中だったから、話が出来なかった。
それでも渡せたことに満足して、それで良かった。
あの時は照れくさくて、帰り道、私は佐川君に会わないよう迂回した。
こんなことになるなら、もう一度あの道を通れば良かった。
もしかしたら、何か一言言ってくれたかもしれない。
話の流れで、何か聞けたかもしれない。
飲み物を渡した時の、驚いたあとの笑顔が目に焼き付いて離れない。
あれが最後だったなんて。
もう、心を晴らしてくれる笑顔を見ることはできないのか。

もしかしたら今日はいるかもしれない、と毎朝期待しながらその道を通るが、当然トラックには違うドライバーの名前が。
いつも佐川君が飛び出してくるビルからは違う飛脚が現れるだけ。
いや、次の角から走って飛び出してくるかもしれないとドキドキして、どうしてもゆっくり歩いてしまって、でも結局会えず、あとに残ったのは日焼けのみ。
背格好と髪型が佐川君によく似た飛脚がいる。
近くで見ると顔は全然違うんだけど、向こうからその人が走ってくるたびに、佐川君だと勘違いして無駄にドキドキしてしまう。
佐川君ではないと分かったときのガッカリ感がすごい。
それにしてもどうしたんだろう。
場所が変わったのか、退職したのか、体調を崩しているのか、だったら心配。
結局ロクに話すこともないまま、一番恐れていたもやもやした形で会えなくなってしまった。
これだけは避けたかったのに。
他の飛脚は全員いるのに、よりによって佐川君だけいなくなるなんて。
自分の運のなさに泣けてきます。

こういったことでこんなに凹んだのは3年振り。
感覚を忘れていたが、結構辛いもんだな。
ずっと山崎まさよしのone more time one more chanceが頭から離れない。
この曲を初めて聞いたとき、こんな切ない状況は絶対嫌だと思っていたのに。
今は4割弱ぐらい共感する部分がある。
季節も夏だし。
明後日カラオケで唄おう。

いなくなっちゃったんだから、さっさと忘れよう!と思っても、そう上手くはいかない。
外に出れば佐川君が今まで運転していたトラックが停まっているし、たくさんの飛脚が走り回っている。
当然事務所にも配達にやってくる。
そのたび思い出すんだろうな、当分。
時間が経って忘れるか、時間が経つほどつのるのか。
はっきり退職したと分かっていない分、中途半端に期待し続けてしまいそう。
1年前まで毎日来ていたヤマトさんが急に担当が変わって、でも1年後またその人が集荷に来たことがあった。
そういうこともあるかもしれないと。
佐川のシステムは全く分からないので何とも言えないけど。

この日記でいつも邪魔扱いしていた(すみません)佐川の責任者っぽいおじさんに聞いてみるのが一番早いのは分かっている。
「つかぬことを伺いますが、いつもここにトラックを停めていた○○さん、最近お見かけしないのですが・・」
このおじさんはうちの事務所に配達に来たりはしないから、私がどこの会社の者かは分からない。
だから聞きやすいんだけど、
聞きやすいけど・・
まだ見かけなくなって1週間だし、もう少し待ってから、というのは言い訳で。
勇気がありません。
でもすごく聞いてみたい。
こんなもやもやを抱えたままなんて、しんどい。

佐川君とはほんの少ししか話したことがないから、当然思い出などは一切ない。
私が勝手に笑顔を覚えているだけ。
しかし嫌な部分も一切ないから、時間が経つにつれて美化されて、いつまでも心のどこかで引きずってそう。
気になり始めてから4カ月以上の間、動かなかった私がいけない。