2017年1月11日(水) 210日目

2017-01-11 23:12:06 | 日記
今日は遅番(10:30~19:30)。

リーダー業務じゃないので気楽にやった。
でも右手を痛め気味なので、ちょっと今後に懸念がある。


◇ ◇ ◇

今日気に入った記事は「日刊ゲンダイ」より。
今、気になる経営者ってほとんどいないけど、
唯一気になると言ってもいい経営者はライフネット生命の出口治明氏。
理由は「教養」があるから。この人の教養は半端ではない。

経済三団体加盟企業の経営者連中なんてもはや幻滅の対象でしかない。
なにしろ一昨年の安保法案強行採決を「評価する」なんてコメントしたんだから。
いったいどういう了見なんだい。
立憲主義なんてどうでもいいと表明しているようなもんだろう。
それはすなわち法律なんて守らなくてもいいと言っているのと同じ。
「CSR」なんていう言葉はもはや死語になってしまったのかな。


ライフネット生命 出口治明氏「未来の教材は過去の歴史」



 激動の時代だ。世界中で顕著な排他主義と、独裁的な指導者の跋扈。これは歴史の必然なのか。キナ臭い世の中の動きと、「歴史を学びたい」と考えるサラリーマンが増えていることは偶然ではないだろう。現状を歴史という大きな時間の流れの中で捉えると、違う一面が見えてくることもある。世界史の圧倒的教養で知られる異能の経営者、ライフネット生命会長兼CEOの出口治明氏に聞いた。

■優秀なリーダーほど歴史を学んでいる

――いま世界は混迷の中にあるように見えます。今月20日には米国でトランプ大統領が就任し、欧州でもフランスやドイツ、オランダで大統領選などの重要な選挙が行われ、極右勢力の台頭が予想されています。

 歴史はまっすぐ進むわけではありません、揺り戻しがあったりして、ジグザグに進むものです。5年くらいの時間軸で見れば、とんでもないことが起きているように感じるかもしれませんが、四半世紀前と比べれば最貧層が半減するなど世界全体は確実に良くなっています。

――時間軸が違えば、評価も変わってくるということですね。

 物事はいくつもの時間軸を持って見ることが大切です。同時に、地理的な空間軸も判断材料として欠かせません。いま、トランプは「アメリカファースト」、習近平は「中国ファースト」、プーチンも「ロシアファースト」を掲げている。だからといって「日本ファースト」ができるでしょうか? アメリカはやがて人口が5億人に達しようという成長国家で、世界一の産油国でもある。中国も膨大な土地面積と人口に希少資源を持っています。ロシアも石油や天然ガスが有り余るほどあり、「自国ファースト」が成り立つ。資源がない日本は「日本ファースト」で突き進むことはできないのです。自由な交易で一番得をするのは日本。諸外国との友好関係を築くことが何よりも大切なことは、歴史と地理が示しています。

――では、極右勢力が台頭している現代は、世界史でいうと、いつの時代と似ていますか?

 過去のどの時代にも似ていません。例えば、アメリカの覇権が失われていく過程をローマ帝国の衰退期に重ね合わせる見方がありますが、当時と今では自然環境も社会的なインフラも全く違う。一概に比べることはできません。ローマの衰退は、蛮族の侵入によって帝国が誇る道路網(ローマの道)を破壊されたことが主因でした。世界の情報が中枢に集まらなくなったのです。ところが、今はインターネット網の強化によって、むしろアメリカに情報が集中しています。

――まったく同じケースがなくても、歴史に学ぶことで何が見えてくるのでしょう?

 歴史に学ぶとは、過去と同じような出来事に対して、そっくり同じような対応で真似をするという意味ではありません。テクノロジーが進化しても、人間の脳はほとんど進化していない。また、未来のことは誰にも分からない。しかし教材は過去しかない。歴史はケーススタディーであり、たくさん知っているほど、将来何かが起きた時にどうすべきかの判断をする際の参考になります。

――過去のさまざまなケースを知っていれば、その中から最適なものを選んだり、類推するヒントになる。

 歴史上優秀なリーダーと呼ばれる人は、よく歴史を学んでいます。唐代に呉兢が編纂したとされる「貞観政要」には、リーダーが持つべき“3つの鏡”の話が出てきます。第1は普通の鏡。自分の顔や姿を映して、元気に見えるかどうかを確認する。2つ目が「歴史の鏡」です。大きな判断を下すには、過去の歴史を勉強するしかない。3つ目は自分のことを批判してくれる「人間の鏡」です。「あんた、おかしいで」と言ってくれる人をそばに置かないと、人は必ず間違うからです。

■日本は特別な国という思い込みを捨てよ

――「歴史の鏡」でいえば、日本の現政権は、「歴史認識」が国際社会でも問題視されました。

 経済が長く低迷していることもあって、社会全体が別の価値基準を求めて逃避している面があると思います。戦後の日本は、吉田茂が「富国強兵」の「強兵」を捨てて「開国富国」に絞り、それが成功して、80年代に“ジャパン・アズ・ナンバーワン”と呼ばれるまでになった。経済は一流という自負が支えになっていました。ところが、GDPで中国に抜かれた。愛国心が劣等感と結びつくと、排他主義的なナショナリズムに変貌してしまうという説がありますが、日本は特別な国だという思い込みを捨てて、世界史の大枠の中でもっとフラットに考えるべきだと思います。

――不思議なのは、愛国心を声高に叫び、保守を名乗る人たちが基点にしているのは、決まって明治時代だということです。

 明治は、たかだか150年前のことです。日本にはもっと長くて豊かな歴史があり、豊かな文化がある。万葉集しかり、平安時代の国風文化しかり。「源氏物語」や「枕草子」は世界に誇る文学作品です。僕は、室町時代の“ばさら大名”も大好きです。今で言うパンクですね。安土桃山時代の黄金文化も、悪趣味だという人もいますが、あそこまで突き詰めれば素晴らしい文化です。

――明治の社会文化だけを念頭に、愛国心だの日本の伝統を守るだの言うのはおかしいということですね。

 そもそも、なぜ明治維新が起きたのかという背景を、世界史の流れの中で捉えると、教科書で習ったのとは違った世界が見えてきます。当時、幕府側の主張は、200年間の鎖国は間違っていた、「開国富国強兵」をやらなければならないというものでした。同じように鎖国をした中国がアヘン戦争でさんざんな目に遭ったのをよく知っていたからです。これに対し、薩長がぶつけた尊王攘夷は、鎖国に戻れという主張で、IS(イスラム国)と同様に、外から干渉してくる外国人は殺してしまえという過激な思想でした。

――意外なことに、幕府の方が進歩的だった。

 そうです。幕府には世界情勢を知っている優秀な官僚がたくさんいましたから。江戸時代初頭、世界における日本のGDPシェアは4~5%ありました。ほぼ今と同じです。ところが、明治維新の直前には2%台に半減していた。鎖国をしている間に産業革命と市民革命というイノベーションが起こり、日本は世界の大きな動きから取り残されてしまったのです。それに気がついた幕末の官僚が開国富国強兵を強く訴えたのです。

――幕府側が開国を主張していたなら、維新という名のクーデターは必要なかったのではないですか?

 血気盛んな薩長は勝手に攘夷を決行して薩英戦争、下関戦争を始め、コテンパンに負けてしまった。それで、攘夷は無理だと気づいたのです。列強との実力差を思い知った。そこで、尊王だけを残して、鎖国・攘夷の旗はこっそり降ろし、幕府の「開国富国強兵」路線に転換したから明治維新は成功した。その革命に正当性を持たせるために、天皇にスポットを当てて「王政復古」としたのです。「開国」を捨ててから、日本はまたおかしくなった。それが第2次世界大戦です。

――日本史だけを見ていてもダメなんですね。世界史の流れの中で捉えれば視野を広く持てる。

 国際人は、何も英語が話せるということではありません。自国の歴史を知っていることは必須ですが、相手に納得してもらうためには、世界史の大きな流れの中で自国史を説明する必要があります。例えば、ペリー来航ですが、当時のアメリカは対中国貿易で大英帝国とライバル関係にありました。太平洋航路を開いて日本を中継地点にするために来たと説明すれば、理解されやすいでしょう?

――リーダーだけではなく、一般のサラリーマンも世界史を学んで損はないということですね。

 外国人と日常的に接する仕事でなくても、歴史を学ぶほどに知識が増え、アイデアも湧いてくるはずです。例えば赤ちゃんがアイデアを出すことができると思いますか? 蓄えた知識を脳が引っ張り出して組み合わせたものがアイデアなのです。考える材料が多ければ多いほどたくさんのアイデアが生まれます。なにより、歴史は面白い。「事実は小説より奇なり」は本当ですよ。

(聞き手=本紙・峰田理津子)

▽でぐち・はるあき 1948年、三重県生まれ。京大法学部卒業後、日本生命保険相互会社入社。退職後、06年にライフネット生命プロジェクトを立ち上げ08年に開業。13年から現職。専門の生命保険関係の書籍の他、「『全世界史』講義Ⅰ、Ⅱ」(新潮社)、「仕事に効く教養としての『世界史』Ⅰ、Ⅱ」(祥伝社)、「世界史の10人」(文芸春秋)など世界史関連の著書も多数。