テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。

女神の見えざる手

2018-08-02 | サスペンス・ミステリー
(2016/ジョン・マッデン監督/ジェシカ・チャステイン、マーク・ストロング、ググ・ンバータ=ロー、アリソン・ピル、マイケル・スタールバーグ、ジェイク・レイシー、サム・ウォーターストン、ジョン・リスゴー/132分)


 違法な手段も辞さない女性ロビイストの活動をスリリングに描きながら、アメリカの銃規制法案への市民の反応について問題提起した作品。但し、それはあくまでもエンターテインメントとしてではありますがネ。

<アメリカ合衆国のロビイストはアメリカ合衆国上院、下院、行政府を対象として行動し、政府、州政府、地方政府、裁判所に影響を与えることを目的としている。ロビイストの中には法案の起草を行う者も存在する。およそ3万人のロビイストが存在すると言われ、法律でロビイストとしての登録を行うことが義務付けられている。
 ・・・・
 ロビイストの活動の重点は、政策の提言やリサーチ、アドバイスだけにとどまらず、実際に行動に移し、実現化することにある。ロビイストは、政治家とは異なり民間の立場からあらゆる利益を代弁することができるため、様々な形で柔軟に活動することができる。シンクタンクは政治課題に関する研究成果をメディアに対し定期的に発表することで、その主張を普及させる>(ウィキペディアより)

*

 ワシントンの大手ロビー会社に勤めるやり手の女性ロビイスト、マデリン・エリザベス・スローン(通称リズ)に新たな顧客がやって来る。
 タカ派の銃ロビーの重鎮が、新規の銃規制法案をつぶすべくリズに新たなキャンペーンの展開を申し込んできたのだ。
 『私のテーマは税制と自由企業への行政府の介入よ』といったんは断ろうとしたが、男の陳腐なキャンペーン案に怒りが湧いてきて思わず侮蔑的な見解を吐露し怒らせてしまう。同席した会社幹部からはやっと捕まえた重要顧客を取り逃がす所だったと首を言い渡される。
 業界では知らぬ人のいないリズのトラブルは瞬く間に広まってしまい、その夜、パーティーで会った銃規制法案に賛成の振興ロビー会社のCEOにヘッドハンティングされる。
 銃規制法案には大量の資金を持った反対派が存在することは周知の事実だが、元々リズは賛成派。信頼する部下を引き連れて在籍していた大手を退社し、銃規制法案の成立に向けて新たなロビー活動を始めるのだが・・・。

*

 原題は【MISS SLOANE】。
 タイトルからすれば、彼女の人生に迫る映画かなと思ってしまいますが、殆どそれは語られません。独身であることは分かりますが、家族構成も過去の履歴も何も分かりません。というか、登場人物の全てが必要最小限の人となりしか描かれてないですね。そういう意味ではかのウォーターゲイト事件を扱った「大統領の陰謀」を思い出しました。

 銃乱射事件が起こるたびにアメリカで沸き起こる銃規制の是非。
 脚本を書いたのは、これが初作品というジョナサン・ペレラという人。
 スカッとするどんでん返しを狙った作品ではありますが、終盤の聴聞会でのミス・スローンの演説には「チャップリンの独裁者」におけるラストのそれと同じように作者の主張がストレートに表現されて圧巻でした。

 ジェシカ・チャステインがヒロインのエリザベス・スローンを。フィルモグラフィーを見ると僕にとってはどうやらお初らしいです。
 マーク・ストロングが扮したロドルフォ・シュミットはリズが移ったロビー会社のCEO。僕が未見の「ゼロ・ダーク・サーティ(2012)」でもチャステインの上司役だったみたいです。
 ググ・ンバータ=ロー扮するエズメ・マヌチャリアンは転職先の仕事仲間であり部下。エズメは高校生の頃に銃乱射事件に巻き込まれたトラウマを抱えていて、その事は公にしていない。
 アリソン・ピル扮するジェーン・モロイは大手ロビー会社時代の部下だが、リズの思惑が外れて転職に付いてこない。終盤で、リズに不利益な証拠となる書類を発見する。
 マイケル・スタールバーグ扮するパット・コナーズはかつての同僚で、転職後は一番の敵。
 ジェイク・レイシーはリズを肉体的に癒す謎の男フォード。男性版娼夫とでもいいましょうか。こんなのマジすか?!
 サム・ウォーターストンはリズの元上司のジョージ・デュポン。デュポンって、「フォックスキャッチャー」のアレと関係あるのかな、イメージ的に。全然思い出しませんでしたけど、あの「キリング・フィールド (1984)」の主人公だったのでした。30年前と違って悪い顔してたなぁ。
 ジョン・リスゴーは聴聞会を仕切るスパーリング上院議員。デュポンの息がかかった操り人形でした。
 デヴィッド・ウィルソン・バーンズ扮するダニエル・ポスナーはリズの弁護士。エピローグにも出てきて、ある意味儲け役でした。

 お勧め度は★三つ半。
 ジェシカ・チャステインの熱演に★半分おまけしたくなりますが、綺麗すぎる映像とスマートな展開に逆にあざとさを感じてしまって、とりあえず今回は無しです。
 表には出てこないリズの裏活動をも少し見せて貰えると良かったかな。あと、彼女の本気の葛藤とか。どこまでが芝居なのか分からないし、エズメに関するエピソードにも既視感があったりして、素直に観れない自分がおりました。
 尚、セリフが多いので僕のように英語についていけない人は一度は吹き替えで観る事をお勧めします。動きの多いカメラワーク、飛び交うアイコンタクトの演技にもついていけますよ。

 ゴールデン・グローブの女優賞(ドラマ)と、日本アカデミー賞(2017年)の外国作品賞にノミネートされたそうです。





・お薦め度【★★★=一見の価値あり】 テアトル十瑠
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2 コメント

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URL付きコメント有難うございました。 (オカピー)
2018-10-28 22:01:52
あと二か月ありますが、わが【一年遅れのベスト10】の恐らくトップ3に入る快作と思いました。
ヒロインの人物像のどんでん返しというのがいかしていましたねえ。

>エズメ
銃を持つ凶悪犯を銃で倒す時に起きる二律背反の愚かしい理屈が彼女を巡っても起きます。
アメリカは憲法を変えない限りいつまで経ってもこの繰り返しでしょうか。
映画の中で「時代が変わったと言うのはダメ」と言われますが、それはしかし事実です。もはや周囲に襲ってくるインディアンもいなければ、敵軍もいない。銃があるから起きる犯罪の方が圧倒的に多いことは、銃所持が厳しい我が国の現状を見れば解りますよね。

>サム・ウォーターストン・・・悪い顔
正に! 
オカピーさん (十瑠)
2018-10-29 10:01:09
>ヒロインの人物像のどんでん返し

どれが本当なん?って言いたくなった僕は天邪鬼?
颯爽と部下を集めたり、上司に意見したり、我が国のTVドラマにも出来る女性が主役のがありますが、ちょっと思い出したりして、ちょっと引いて観たかも知れませんね。

スピンオフ、もしくは続編がありそうな雰囲気も感じましたが、どうなるんでしょう

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