(2006/ペドロ・アルモドバル監督・脚本/ペネロペ・クルス、カルメン・マウラ、ロラ・ドゥエニャス、ブランカ・ポルティージョ、ヨアンナ・コボ、チュス・ランプレアベ、アントニオ・デ・ラ・トレ/120分)
ペドロ・アルモドバル監督の「ボルベール<帰郷>」を観る。
アルモドバルといえば以前「オール・アバウト・マイ・マザー」を面白く観たけれど、これも面白かったな。どちらも普通の人々が描かれていると思って観ていたら、あれよあれよという間に数奇な人生に巡り合ってしまうというストーリーだった。
オープニングシーンがマドリードから180キロ程離れたラ・マンチャ地方の霊園で大勢の女性達がお墓の掃除をしている所で、墓所の手入れはどうやらこの地方の風習らしい。日本でいえばお彼岸みたいなもんでしょうか。
そんな女性たちの中に、マドリードに住むソーレとライムンダの姉妹がいた。もともとはラ・マンチャの生まれだが訳あって故郷を離れ、必要な時にはこうしてまだ知り合いの多い田舎町に帰ってくるのだ。
姉妹は墓所清掃の帰りにラ・マンチャに住む伯母さんの家も訪ねた。4年前に死んだ母イレーネの姉だが眼も殆ど見えず痴呆も始まっているので心配して様子を見に来たのだ。
目が不自由な割には生活には困っていないらしく、ライムンダの一緒にマドリードで暮らそうという誘いも断る伯母だった。
ラ・マンチャとマドリードとの車の行き帰りのシーンが何回か出てくるが、大地にそびえたつ風力発電の風車が並ぶ風景が印象深い。
さて、姉妹の話。
姉のソーレは2年前に喧嘩した後に夫が家を出、以来夫とは音信不通だった。アパートで無許可で美容院をやっているが、近所のお馴染みさんのおかげで生活には困っていない。
一方の妹ライムンダには夫パコと14歳の娘パウラが居た。ライムンダとパウラが墓所清掃から帰って来るとパコの様子がおかしい。パコは勤め先を解雇されたのだ。次の日からライムンダはパートの仕事を増やし、夜遅く帰宅することになった。
次の日、遅くにバスで帰ってきたライムンダを待っていたのは、雨のバス停で濡れ鼠になって立っていたパウラだった。
「どうしたの?」ライムンダが尋ねるもパウラは黙ったまま。
アパートに入ったライムンダが見たのは、キッチンの床に血まみれになって息絶え横たわるパコの姿だった。
普通ならこの後は【ネタバレ注意】書きにする所ですが、もっとややこしいネタが満載なのでもう少し書いておきます。
パウラの話はこうでした。
一人でキッチンにいた所パコが後ろから抱きついてきたのでびっくりして止めてと言ったが、パコは俺とお前は本当の親子じゃないからコレは悪いことじゃないんだと再び抱きつこうとした。なのでパウラは包丁を持って脅かしたのだが、パコは止めず、仕方なく刺してしまった。
ライムンダは「パコを刺したのはあなたじゃない」とパウラに言い聞かせ部屋に戻らせると黙々とパコの遺体の周りの血を拭き取っていった。
死体遺棄は犯罪ですけどね、アルモドバルの描き方には「犯罪上等」とでもいうような雰囲気がありますし、ストーリーが進んでゆくにしたがってこのライムンダの行動も納得してしまうようになります。
で、仮の遺体隠蔽処理が終わった頃にソーレから電話が入ります。
それはラ・マンチャの伯母さんが亡くなったという連絡でした。
パコの件がまだ途中のライムンダは、パコが会社を首になった事で大喧嘩して家を出て行った、色々と忙しくて葬儀には行けそうにないと答えます。
翌日、一人伯母さんの家に行ったソーレ。死体や幽霊が苦手な彼女は、あろうことか、そこで4年前に死んだ母親イレーネの幽霊に声を掛けられるのだった・・・。
▼(ネタバレ注意)
ね、大変でしょ。
勿論、幽霊はソーレの勘違いで、実は母親は死んでいなかったんですが、この母親の死にまつわる事件も大きなシークエンスでして、その後母イレーネはライムンダに内緒でソーレのアパートに転がり込みます。
4年前、母親は父親と一緒に山小屋で焼死体で見つかったのだが、イレーネが生きているのなら“あの母親”は誰なのか?
パコとパウラは実の親子ではないというパコの話が本当ならば、パウラの父親は誰なのか?
思春期以降ライムンダとイレーネは折り合いが悪く、再会の時はなかなか訪れませんが、全ての謎が解けた時には母と娘の間のわだかまりも解けていくようでした。
▼(解除)
お薦め度は★四つ。「オール・アバウト・マイ・マザー」と同じくこれも女性賛歌の作品ですね。
ライムンダに扮したペネロペ・クルスが米国アカデミー賞で主演女優賞にノミネートされたそうです。
ラ・マンチャの伯母さんの向かいの家で暮らすアグスティーナのエピソードも本筋に絡んできて面白かったです。生と死が交錯して、ラストはしみじみとしますな。
ペドロ・アルモドバル監督の「ボルベール<帰郷>」を観る。
アルモドバルといえば以前「オール・アバウト・マイ・マザー」を面白く観たけれど、これも面白かったな。どちらも普通の人々が描かれていると思って観ていたら、あれよあれよという間に数奇な人生に巡り合ってしまうというストーリーだった。
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オープニングシーンがマドリードから180キロ程離れたラ・マンチャ地方の霊園で大勢の女性達がお墓の掃除をしている所で、墓所の手入れはどうやらこの地方の風習らしい。日本でいえばお彼岸みたいなもんでしょうか。
そんな女性たちの中に、マドリードに住むソーレとライムンダの姉妹がいた。もともとはラ・マンチャの生まれだが訳あって故郷を離れ、必要な時にはこうしてまだ知り合いの多い田舎町に帰ってくるのだ。
姉妹は墓所清掃の帰りにラ・マンチャに住む伯母さんの家も訪ねた。4年前に死んだ母イレーネの姉だが眼も殆ど見えず痴呆も始まっているので心配して様子を見に来たのだ。
目が不自由な割には生活には困っていないらしく、ライムンダの一緒にマドリードで暮らそうという誘いも断る伯母だった。
ラ・マンチャとマドリードとの車の行き帰りのシーンが何回か出てくるが、大地にそびえたつ風力発電の風車が並ぶ風景が印象深い。
さて、姉妹の話。
姉のソーレは2年前に喧嘩した後に夫が家を出、以来夫とは音信不通だった。アパートで無許可で美容院をやっているが、近所のお馴染みさんのおかげで生活には困っていない。
一方の妹ライムンダには夫パコと14歳の娘パウラが居た。ライムンダとパウラが墓所清掃から帰って来るとパコの様子がおかしい。パコは勤め先を解雇されたのだ。次の日からライムンダはパートの仕事を増やし、夜遅く帰宅することになった。
次の日、遅くにバスで帰ってきたライムンダを待っていたのは、雨のバス停で濡れ鼠になって立っていたパウラだった。
「どうしたの?」ライムンダが尋ねるもパウラは黙ったまま。
アパートに入ったライムンダが見たのは、キッチンの床に血まみれになって息絶え横たわるパコの姿だった。
普通ならこの後は【ネタバレ注意】書きにする所ですが、もっとややこしいネタが満載なのでもう少し書いておきます。
パウラの話はこうでした。
一人でキッチンにいた所パコが後ろから抱きついてきたのでびっくりして止めてと言ったが、パコは俺とお前は本当の親子じゃないからコレは悪いことじゃないんだと再び抱きつこうとした。なのでパウラは包丁を持って脅かしたのだが、パコは止めず、仕方なく刺してしまった。
ライムンダは「パコを刺したのはあなたじゃない」とパウラに言い聞かせ部屋に戻らせると黙々とパコの遺体の周りの血を拭き取っていった。
死体遺棄は犯罪ですけどね、アルモドバルの描き方には「犯罪上等」とでもいうような雰囲気がありますし、ストーリーが進んでゆくにしたがってこのライムンダの行動も納得してしまうようになります。
で、仮の遺体隠蔽処理が終わった頃にソーレから電話が入ります。
それはラ・マンチャの伯母さんが亡くなったという連絡でした。
パコの件がまだ途中のライムンダは、パコが会社を首になった事で大喧嘩して家を出て行った、色々と忙しくて葬儀には行けそうにないと答えます。
翌日、一人伯母さんの家に行ったソーレ。死体や幽霊が苦手な彼女は、あろうことか、そこで4年前に死んだ母親イレーネの幽霊に声を掛けられるのだった・・・。
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▼(ネタバレ注意)
ね、大変でしょ。
勿論、幽霊はソーレの勘違いで、実は母親は死んでいなかったんですが、この母親の死にまつわる事件も大きなシークエンスでして、その後母イレーネはライムンダに内緒でソーレのアパートに転がり込みます。
4年前、母親は父親と一緒に山小屋で焼死体で見つかったのだが、イレーネが生きているのなら“あの母親”は誰なのか?
パコとパウラは実の親子ではないというパコの話が本当ならば、パウラの父親は誰なのか?
思春期以降ライムンダとイレーネは折り合いが悪く、再会の時はなかなか訪れませんが、全ての謎が解けた時には母と娘の間のわだかまりも解けていくようでした。
▼(解除)
お薦め度は★四つ。「オール・アバウト・マイ・マザー」と同じくこれも女性賛歌の作品ですね。
ライムンダに扮したペネロペ・クルスが米国アカデミー賞で主演女優賞にノミネートされたそうです。
ラ・マンチャの伯母さんの向かいの家で暮らすアグスティーナのエピソードも本筋に絡んできて面白かったです。生と死が交錯して、ラストはしみじみとしますな。
・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて】
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