テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。

■ YouTube Selection (音楽)


作者フレッド・ニールが唄う「うわさの男」
ニルソンのオリジナリティが分かるなぁ。

レッド・スパロー

2018-11-06 | サスペンス・ミステリー
(2018/フランシス・ローレンス監督/ジェニファー・ローレンス、ジョエル・エドガートン、マティアス・スーナールツ、シャーロット・ランプリング、メアリー=ルイーズ・パーカー、ジェレミー・アイアンズ/140分)


 ジェニファー・ローレンスは既にオスカー女優だけど、出演作をまだ観てないんだよね。で、主演の最新作「レッド・スパロー」は予告編を以前ブログにも載っけたし面白そうだったので借りてきた。
 病身の母親を抱えるロシアのバレリーナがケガの為にバレーの道を閉ざされ、併せて政府の生活支援も失いそうになったので国家情報局に勤める叔父を頼っていくが、男の非情な策略により女スパイにならざるを得なくなる・・という話。
 ツイッターでは「ラストのどんでん返しを狙った作品だが途中の語りが少し緩くて★二つ」なんて書いたが、2回目の鑑賞で緩さは無くなって★一つアップです。ロシアの影の話なので僕は嫌な気分にもなったが、気にならない人には★もう一つおまけしてもいいくらいです。
 文句があるとしたら、ボーン・シリーズなんかの盗撮や盗聴を見てきた者からすると、ヒロインの周りにそういうシチュエーションが出てこないのが少し不自然かなと。
 ロシアのハニートラップ専門のスパイ養成所が出てきたり、裏切り者やミスった者への拷問なんかが陰惨で暗いけど、ムードは一貫してて見応えがありますな。

 序盤は、ジェニファー・ローレンス扮するボリショイのプリマバレリーナ、ドミニカ・エゴロワが公演中にケガをするシーンと、ジョエル・エドガートン扮するCIAのスパイ、ネイト・ナッシュがソ連の情報提供者と接触していることをロシア当局に感づかれるシーンとがカットバックで語られる。個別に時間差で語っても問題ないシーンなのに、どうも最近の映画は、序盤に二つ以上の話をパラレルに語っていくというスタイルが多くなった気がする。サスペンス・ムードの醸成になるだろうとの考えだとは思うけど、結果的にはもう一度観ないとストーリーが把握しにくいという弊害があるような気がするけど。

 序盤の叔父の策略とは、国家保安局が目を付けた腐敗役人の抹殺にドミニカを関わらせることで、結果として素人にハニートラップをさせ、極秘事件の目撃者となった為に死ぬか女スパイになるかの二者択一(生きるためには選択肢はないのだが)を迫るという非情なもの。病身の母親に介護を付けるには国家組織の中で働くしかなく、ドミニカは女スパイ“スパロー”の養成所に入ることになる。
 ここではハニートラップ系のテクニックを学ぶんだが、教官がシャーロット・ランプリングというのが憎い配役でありますな。

 教官の評価はあまり良くないけど、スパローとなったドミニカに初めての仕事が言い渡される。それが、ナッシュと通じていたロシアの裏切り者、通称モグラの正体を暴くこと。その為にナッシュに色仕掛けで近づいていくわけだ。

 ドミニカの最終目標はスパイを辞めて自由になる事だが、観ている限りでは到底かなわぬ夢にしか思えない。
 ナッシュに近づく過程でスパロー仲間との接触があったり、アメリカ政府筋のロシア密通者との駆け引きがあったり、その中でドミニカの必死の対応が見どころ。どういう目的かは分からない伏線も幾つかありますが、サスペンスが緩むほどの不可解さではないです。

 メアリー=ルイーズ・パーカーはロシアに米国防衛資料を金で売ろうとするアル中女。
 ジェレミー・アイアンズはドミニカの叔父の上司役でした。





お薦め度【★★★=一見の価値あり】 テアトル十瑠
コメント (2)

「アヒルと鴨のコインロッカー」を観る

2018-10-17 | サスペンス・ミステリー
(↓Twitter on 十瑠 より「一部修正有り」)

「アヒルと鴨のコインロッカー」を観る。先日、松田龍平ファンの娘が2泊3日で里帰りしてきて衝動的に近所のツタヤで借りてきたDVDだが、娘は結局観られないまま帰って行き、返却期日には間があったのでとりあえず預かっていた。伊坂幸太郎の同名ミステリー小説を映画化したものらしい。
 [10月 16日 以下同じ]

娘の話で松田龍平主演と思い込んでいたら、なかなか出てこないので彼女の勘違いかと思ったが、後半で出てきた。主演は濱田岳になるのか?青春小説という言い方もされてるみたいだが、青春部分はほぼ意味ないな。犯罪も絡んでいて、結局のところテーマも何も分からない。謎解きの楽しさだけか・・・。

オープニングは赤茶けた色調のスクリーンに二人組の男が書店を襲撃する直前の様子が描かれている。赤い車に乗り、二人とも片手に拳銃らしきものを持っていて、そのガサついた画面の雰囲気から「パルプフィクション」風を狙ってるのかなと思った。製作サイドの情報に「デスペラード」なんていう名前も。
 [10月 17日 以下同じ]

男たちが車を降りて書店に向かっている所でタイトルロール。BGMにはボブ・ディランの「♪風に吹かれて」が流れてくる。今頃この歌?

タイトルロールが終わると画調はノーマルに切り替わり、濱田岳扮する青年が電車に乗っているシーンになる。後で分かるが、彼は東京から仙台の大学に入学するために東北新幹線に乗っている青年だ。そして車窓を流れる田舎の風景を眺めながら「♪風に吹かれて」を唄っている。

仙台での引っ越しの最中に東京の両親との会話があったりして、これは彼を中心にした青春物語かなと思っていたら、瑛太扮するアパートの謎めいた隣人が現れて会話を交わした辺りから変な空気が流れてくる。隣人は初対面の彼に書店襲撃を提案するからだ。それも一冊の辞書を奪おうという変わった理由で。

辞書を奪う理由は、アパートの瑛太の隣人の隣人がブータン人でその外国人に日本語を教える為というのだが、その後瑛太とブータン人と瑛太の元カノとの交流が、瑛太の話として細切れに描かれていく。

ま、allcinemaの解説が「青春ミステリー」と紹介しているように、瑛太の話もモノクロで描かれていて多分真実ではないんだろうなと思わせるので、興味は後半の謎解きにかかっているんだけど、終わってみれば濱田の青春ストーリーは無くなっていったな。

ミステリーだからストーリーはこれ以上書けない。新しい登場人物も出てくるので、謎解きの面白さはあるが、ドラマとしてみるには浅い話だな。ペットショップの店長大塚寧々の謎めいた扱いは結局なんだったんだ。謎解きの役目と雰囲気作りだけか。

*

 序盤の「パルプフィクション」風のシーンの意味は後半の謎解きで分かる。
 若者三人組男女の青春物語風ではあるが、犯罪が絡むところなんざ、作者は「冒険者たち」に憧れているのかな?それにしても、薄汚い犯罪だった。
 テーマをあえて探せば、友達を亡くすことの寂しさを含めての外国で暮らすことの疎外感かな。
 後、他の人の感想を読んで思い出したのは、犯罪者への対応があまりにも稚拙だったこと。犯人はあんなに愚かにも証拠を残しているのに、全然利用しない被害者・・・。

 濱田扮する椎名君の東京の両親に、なぎら健壱とキムラ緑子を配しているが、序盤の一シーンのみで勿体ない。緑子さんには最初気付かなかったなぁ。



(2006/中村義洋 監督/濱田岳、瑛太、関めぐみ、松田龍平、大塚寧々、関暁夫、岡田将生/110分)





お薦め度【★★=謎解きとしては、悪くはないけどネ】 テアトル十瑠
コメント (2)

女神の見えざる手

2018-08-02 | サスペンス・ミステリー
(2016/ジョン・マッデン監督/ジェシカ・チャステイン、マーク・ストロング、ググ・ンバータ=ロー、アリソン・ピル、マイケル・スタールバーグ、ジェイク・レイシー、サム・ウォーターストン、ジョン・リスゴー/132分)


 違法な手段も辞さない女性ロビイストの活動をスリリングに描きながら、アメリカの銃規制法案への市民の反応について問題提起した作品。但し、それはあくまでもエンターテインメントとしてではありますがネ。

<アメリカ合衆国のロビイストはアメリカ合衆国上院、下院、行政府を対象として行動し、政府、州政府、地方政府、裁判所に影響を与えることを目的としている。ロビイストの中には法案の起草を行う者も存在する。およそ3万人のロビイストが存在すると言われ、法律でロビイストとしての登録を行うことが義務付けられている。
 ・・・・
 ロビイストの活動の重点は、政策の提言やリサーチ、アドバイスだけにとどまらず、実際に行動に移し、実現化することにある。ロビイストは、政治家とは異なり民間の立場からあらゆる利益を代弁することができるため、様々な形で柔軟に活動することができる。シンクタンクは政治課題に関する研究成果をメディアに対し定期的に発表することで、その主張を普及させる>(ウィキペディアより)

*

 ワシントンの大手ロビー会社に勤めるやり手の女性ロビイスト、マデリン・エリザベス・スローン(通称リズ)に新たな顧客がやって来る。
 タカ派の銃ロビーの重鎮が、新規の銃規制法案をつぶすべくリズに新たなキャンペーンの展開を申し込んできたのだ。
 『私のテーマは税制と自由企業への行政府の介入よ』といったんは断ろうとしたが、男の陳腐なキャンペーン案に怒りが湧いてきて思わず侮蔑的な見解を吐露し怒らせてしまう。同席した会社幹部からはやっと捕まえた重要顧客を取り逃がす所だったと首を言い渡される。
 業界では知らぬ人のいないリズのトラブルは瞬く間に広まってしまい、その夜、パーティーで会った銃規制法案に賛成の振興ロビー会社のCEOにヘッドハンティングされる。
 銃規制法案には大量の資金を持った反対派が存在することは周知の事実だが、元々リズは賛成派。信頼する部下を引き連れて在籍していた大手を退社し、銃規制法案の成立に向けて新たなロビー活動を始めるのだが・・・。

*

 原題は【MISS SLOANE】。
 タイトルからすれば、彼女の人生に迫る映画かなと思ってしまいますが、殆どそれは語られません。独身であることは分かりますが、家族構成も過去の履歴も何も分かりません。というか、登場人物の全てが必要最小限の人となりしか描かれてないですね。そういう意味ではかのウォーターゲイト事件を扱った「大統領の陰謀」を思い出しました。

 銃乱射事件が起こるたびにアメリカで沸き起こる銃規制の是非。
 脚本を書いたのは、これが初作品というジョナサン・ペレラという人。
 スカッとするどんでん返しを狙った作品ではありますが、終盤の聴聞会でのミス・スローンの演説には「チャップリンの独裁者」におけるラストのそれと同じように作者の主張がストレートに表現されて圧巻でした。

 ジェシカ・チャステインがヒロインのエリザベス・スローンを。フィルモグラフィーを見ると僕にとってはどうやらお初らしいです。
 マーク・ストロングが扮したロドルフォ・シュミットはリズが移ったロビー会社のCEO。僕が未見の「ゼロ・ダーク・サーティ(2012)」でもチャステインの上司役だったみたいです。
 ググ・ンバータ=ロー扮するエズメ・マヌチャリアンは転職先の仕事仲間であり部下。エズメは高校生の頃に銃乱射事件に巻き込まれたトラウマを抱えていて、その事は公にしていない。
 アリソン・ピル扮するジェーン・モロイは大手ロビー会社時代の部下だが、リズの思惑が外れて転職に付いてこない。終盤で、リズに不利益な証拠となる書類を発見する。
 マイケル・スタールバーグ扮するパット・コナーズはかつての同僚で、転職後は一番の敵。
 ジェイク・レイシーはリズを肉体的に癒す謎の男フォード。男性版娼夫とでもいいましょうか。こんなのマジすか?!
 サム・ウォーターストンはリズの元上司のジョージ・デュポン。デュポンって、「フォックスキャッチャー」のアレと関係あるのかな、イメージ的に。全然思い出しませんでしたけど、あの「キリング・フィールド (1984)」の主人公だったのでした。30年前と違って悪い顔してたなぁ。
 ジョン・リスゴーは聴聞会を仕切るスパーリング上院議員。デュポンの息がかかった操り人形でした。
 デヴィッド・ウィルソン・バーンズ扮するダニエル・ポスナーはリズの弁護士。エピローグにも出てきて、ある意味儲け役でした。

 お勧め度は★三つ半。
 ジェシカ・チャステインの熱演に★半分おまけしたくなりますが、綺麗すぎる映像とスマートな展開に逆にあざとさを感じてしまって、とりあえず今回は無しです。
 表には出てこないリズの裏活動をも少し見せて貰えると良かったかな。あと、彼女の本気の葛藤とか。どこまでが芝居なのか分からないし、エズメに関するエピソードにも既視感があったりして、素直に観れない自分がおりました。
 尚、セリフが多いので僕のように英語についていけない人は一度は吹き替えで観る事をお勧めします。動きの多いカメラワーク、飛び交うアイコンタクトの演技にもついていけますよ。

 ゴールデン・グローブの女優賞(ドラマ)と、日本アカデミー賞(2017年)の外国作品賞にノミネートされたそうです。





・お薦め度【★★★=一見の価値あり】 テアトル十瑠
コメント (2)

フォックスキャッチャー

2018-07-20 | サスペンス・ミステリー
(2014/ベネット・ミラー監督・共同製作/スティーヴ・カレル、チャニング・テイタム、マーク・ラファロ、シエナ・ミラー、ヴァネッサ・レッドグレーヴ/135分)


 「カポーティ」、「マネーボール」が面白かったベネット・ミラー監督の3作目。全二作と同じくコレも実話を元にしているんだそうです。
 但し、殺人事件になってしまうという結末はその通りですが、物事の時系列とか人物像とかがかなり違っているようで、その辺はフィクションとして考えた方が良いようです。
 オリンピック金メダリストのレスリング選手をデュポン財閥の御曹司が射殺した事件であります。

*

 3年前のロス五輪で男子レスリングの金メダリストとなったマーク・シュルツ(テイタム)、27歳。
 日本と同じくアメリカでもマイナースポーツであるレスリングの選手は、たとえゴールドメダリストであっても倹しい生活を強いられていて、同じく金メダリストの兄デイヴ(ラファロ)の代わりに小学校で講演を行っても謝礼の講演料は20ドルにしかならなかった。一人暮らしのアパートに帰っても黙々とインスタントのヌードルをかきこむ寂しい毎日。
 一方の兄デイヴはコーチとしての人望も有り、レスリング協会からコーチ先の紹介もされていて、家には妻と二人の可愛い子供達がいた。
 マークが2歳の時に両親は離婚。兄のデイヴを頼りながら生きてきたマークだった。

 そんなマークに一本の電話が入る。
 ジョン・E・デュポン(カレル)の代理人だと名乗る男はデュポン氏が会いたがっていると言う。
 向こう持ちの旅客機のチケットはファーストクラス、空港からは自家用ヘリでの旅だった。降り立った先はヘリの中からも見えた広大な敷地に建つ豪邸。デュポンとは何者だ?

 ジョン・E・デュポンは建国以来の名家、デュポン財閥の資産相続人であり、ジョンの申し出はマークのパトロンになるというものだった。
 自身も学生時代にレスリングをかじったジョンは、レスリングがマイナーであることに不満を持っており、マークやその他の選手たちの支援を行いたいと思っていたのだ。敷地の中に練習施設を建て、マークには住居も与えた。それは一人暮らしにはもったいない様な家だった。しかも2万ドルを超える年俸まで与えるというのである。
 マークにとっては正に僥倖だった。数か月後に控える世界選手権、その後のソウルオリンピック。そこで金メダルを獲ることが彼には求められていた・・・。

*

 ジョンについては、<強迫観念症的な統合失調症>というのが公判中に示された精神科医の見立てらしいですが、映画はその辺の病気には触れておらず、理由ははっきりしなくても何らかの動機があったと思わせるような描き方でした。

 ジョンは母親が嫌いなんですね。だけど認められたい気持ちもある。
 母親は馬が好きで、レスリングは下品なスポーツだと思っている。馬の競技会でのトロフィーも沢山飾ってあるが、ジョンは馬以外のトロフィーやメダルをそれ以上に得たいと思っていたんでしょう。
 世界選手権でマークが獲得した金メダルを、まるで自分のコレクションが増えたかのように飾ろうとしているシーンが気持ち悪いです。
 このメダル獲得後の祝賀会で浮かれた様子をみせたジョンが、翌日自分に馴れ馴れしい態度をとったマーク以外の選手たちが気に障ったのか、練習場でいきなり天井に向けて拳銃を発砲するシーンもギョッとさせられました。

 穏やかな態度を示しながらも、他人には絶対服従を求める気持ちを抑えることが出来ない、そんな男だったんでしょう。

 スティーヴ・カレルが付け鼻をして表情の乏しい不気味なジョンを演じていましたが、「フォックスキャッチャー事件の裏側 (2016)」というドキュメンタリーではジョン本人の映像が沢山見られて、普段のジョンは親しみやすい笑顔の紳士でありました。

 ロングショットを効果的に挿入した演出は人間をじっと観察するような雰囲気にさせ、それは「カポーティ」にも見られたものでした。BGMが殆ど無いのも似ています。
 省略した語り口は行間を読むことを強いますが、「カポーティ」以上に特殊な登場人物なので二回以上観る事をお勧めします。僕自身が『1回目は人間の描き方が表層的でつまらなく感じた』などとツイッターに呟いておりますのでネ。

 2014年のアカデミー賞で、主演男優賞(カレル)、助演男優賞(ラファロ)、監督賞、脚本賞(ダン・ファターマン、E・マックス・フライ)などにノミネート。
 カンヌ国際映画祭ではパルム・ドールにノミネート、ベネット・ミラーが監督賞を受賞したそうです。





・お薦め度【★★★=一見の価値あり】 テアトル十瑠
コメント

ネタバレ備忘録 ~ 「ボーン・スプレマシー」

2018-05-02 | サスペンス・ミステリー
 記事を書いたのはシリーズ2作目の「ボーン・スプレマシー」だけですが、直後に「ボーン・アイデンティティー」、「ボーン・アルティメイタム」とレンタルで観まして、個人的には結局DVDを持っているこの2作目が一番出来が良かったと幸運のチョイスに嬉しくなっております。
 当初は細切れカット演出が嫌いだったのでお薦め度を★二つ半から★半分マイナスにしてましたが、エピソード構成が気に入って「一見の価値あり」になりました。なので、前回記事にしてなかった細かなエピソードについて書いておきます。
 未見の方には“ネタバレ注意”ですネ。

 「スプレマシー」を何度か観てて思い出したのがジンネマンの傑作「ジャッカルの日」。
 「ジャッカルの日」はド・ゴール暗殺を請け負った殺し屋ジャッカルとフランス警察との攻防を描いたサスペンスですが、「スプレマシー」も刺客を差し向けた(結果恋人を殺した)真犯人への復讐に燃えるジェイソン・ボーンとCIAとの攻防を描いているからです。

 ボーンはまずインドからイタリア、ナポリを経由してヨーロッパに入ろうとした所で税関のチェックにあいます。(実はパスポートによると3作目の後半の舞台として出てくるモロッコ、タンジールも経由したらしいですけど)
 イタリア配属の4年目のCIA職員にはボーンは荷が重すぎ、あっという間に逃げられ、おまけに携帯の情報も車も盗まれ、ボーンはパメラ・ランディという名前と直近にベルリンで起こったCIA絡みの事件の容疑者に自分がなっていることを知ります。で、とりあえずボーンはパメラに接触しようと狙いを狭めるんですね。彼女がもうすぐベルリンにやって来ると知ったから。

 ベルリンに向かう途中、ミュンヘンにかつての仲間(マートン・ソーカス扮するジャーダ)がいた事を思い出しその家に入ります。
 その男はパメラの名も知らず、“トレッド・ストーン(踏み石作戦)”も2年前に終わったと言います。
 ちょっとした隙をみて男はボーンに襲い掛かり大立ち回りの果てに殺され、彼の通報を受けてやってきた3人のCIAもボーンの機転によりガス爆破の犠牲者となります。この辺りもやられそうになったから反撃しただけなのに、ボーン情報の危険度があがるだけなんですよね。
 この後、公衆便所で手に付いた血糊を必死で洗い流すボーンの姿に悲哀が感じられます。

 スパイ映画では最新機器だけでなく日常の何でもないモノを普段と違う使い方をしてアッと驚く展開にもっていったりしますが、ベルリンにやって来たボーンの行動も面白かったですね。
 ベルリンの観光案内本に掲載されているホテルに片っ端から電話をしてパメラの宿泊先を探り、予約を確認したら、そのホテルに入りながらホテルのフロント経由でパメラに電話をする。パメラが電話に出たところでフロントでパメラさんは居るかと尋ねる。フロント係はカウンターの電話でパメラの部屋番号を押すが、勿論話し中。ボーンは彼女の部屋番号を知ることになる、てな具合。

 「スプレマシー」では、パメラとボーンが互いの情報戦を戦う中で、ベルリン事件の背後にいる真の悪者に気付きやっつけるまでが描かれています。
 冒頭のインドに居る時から悩まされていたフラッシュバックの記憶も取り戻し、それがベルリン事件に結び付いていたことも分かるという、シリーズの2作目ですが、これ単発としても完結されていると思いますね。

 ついでにフラッシュバックと背景の事件についても軽く。
 背後の悪者は“トレッド・ストーン”の責任者だったアボットでした。彼がCIAの巨額の資金を私的に流用し、或いは私的な見返りを隠してロシアの資産家に石油の利権を買わせ、利益を分配させていたのです。ところがその事を知ったロシアの諜報員がCIAに関連情報を売ろうとした。それを知ったアボットとロシアの石油王が殺し屋を雇ってベルリン事件を実行し、偽の指紋を残して容疑者に仕立てたボーンの殺害を狙ったのです。
 しかも、この悪徳石油王の不正に感づいたロシア民主活動家ネスキーが邪魔になったアボットらは、まだ“トレッド・ストーン”として正式に活動してなかったボーンを使ってネスキー暗殺を行っていたのです。ボーンが苦しんだフラッシュバックはこのネスキー暗殺のシーンなのでした。

 そして、終盤ではネスキーの残された娘に会いに行くのですが、そこでインドにやって来た殺し屋と再会します。
 この殺し屋、実はKGBの後継組織FSB(ロシア連邦保安庁)だったことも示され、最後はもの凄いカーチェイスの果てに死にます。CIAといい、FSBといい、なんともやり切れないですなぁ。




 
コメント

ボーン・スプレマシー

2018-04-28 | サスペンス・ミステリー
(2004/ポール・グリーングラス監督/マット・デイモン(=ジェイソン・ボーン)、フランカ・ポテンテ(=マリー)、ジョーン・アレン(=パメラ・ランディ)、ブライアン・コックス(=アボット)、ジュリア・スタイルズ(=ニッキー)、カール・アーバン(=キリル)、ガブリエル・マン(=ダニー)、クリス・クーパー(=コンクリン)/108分)


 記憶喪失になった元CIA工作員がなぜか組織に追われる身に・・という程度が僕が持っていたボーン・シリーズの事前情報で、「ボーン・スプレマシー」はシリーズの2作目と知ってはいたけれど、時間つぶし程度の期待しか持ってなかったので、1作目を飛ばして数年前に買っていたDVDを観た。短いカットのモンタージュが五月蠅くてまるで劇画みたいだったけど、それなりにスリリングで楽しめたので、やはり主人公が何故こんな境遇に至っているのか知りたくて、同じ日に1作目の「ボーン・アイデンティティー」をレンタルしてきた。
 1作目の方が面白いだろうという予想は外れて、それはまさに序章的な内容で、ストーリー構成もまるで古典的な推理小説のように終盤まで伏線の回収を持ち越しているのでダラダラとした流れになっていた。その後改めて「ボーン・スプレマシー」の2回目を観たんだけどやはりソコソコ面白かった。但し、筋が分かりやすくなった分、カットの切り替えの早さとかアップショットの多さとかが気になり、それはTVで注意喚起される『フラッシュの点滅に御注意ください』を思い出すくらいに煩わしく、映画館の大きなスクリーンで観たら気分が悪くなったかもと思わせた。なんとかならんのかねぇ、アレ。も少し落ち着いたモンタージュでもスリルは生まれるでしょうに。

 さて、「ボーン・スプレマシー」の話。
 冒頭はベルリンでCIAがロシアの情報屋から金でファイルを買おうとしているシーンで、本部やらロンドン支部やらが監視体制を整えてモニタリングしている中、突然現れた何者かに渦中のCIA職員も情報屋も殺され、お金も奪われてしまう。
 一方、CIAから逃れてインドで恋人と平穏に暮らすジェイソン・ボーンの所にも一人の殺し屋が現れ、スリル満点のカーチェイスの果てに恋人は殺し屋の銃弾を受け帰らぬ人となる。ロシアからやって来た殺し屋は恋人と共に車もろとも河に落ちたボーンも死んだと判断した。
 1作目の終盤で自分は組織から外れるのでこれ以上追うな、追ってきたら返り討ちにすると言っていたらしいボーンは、恋人への復讐も兼ねて組織に立ち向かう事にするのだが、冒頭のベルリンの事件で現場に意図的に残された指紋から容疑者としてボーンが浮かび上がり、CIA対ジェイソン・ボーンの知恵比べがスリリングに展開していく。更に謎のロシア人たちの関わり具合がボーンのフラッシュバックと共に細やかな謎解きになっていき面白い。ただ、何度も言うがモンタージュが忙しない。手持ちカメラの揺れと、アップショットの多さと、短すぎる切り替え。あれが監督のリズムなのかもしれないが、年寄りには苦だな。

 ストーリーは細かく書かない方が良いだろうから、登場人物の紹介で大雑把に兼ねることにする。
 主人公はマット・デイモン扮するジェイソン・ボーン。2002年の「アイデンティティー」の初登場シーンでは、背中に2発の銃弾を受けフランス、マルセイユ沖100キロの海上で意識を失くして漂っている所を漁船に引き上げられる。自身の名前も思い出せない程の記憶喪失状態だったが、体内に埋め込まれていたスイス銀行の貸金庫の口座を頼りに恐る恐る銀行に行くと、貸金庫には沢山のお金と彼の顔写真が載った色々な国のパスポート、そして拳銃があった。不思議と彼はそれらの使い方を熟知していた。

 フランカ・ポテンテ扮するマリーは、1作目で訳も分からずCIAに追われている事に気付いたボーンと偶々知り合った放浪娘。車はあるが金がなく途方に暮れているのを税関で見ていたボーンが金をあげるからと口説いて車に乗せてもらう。その後、共に苦難に立ち向かう間に惹かれていく。
 この2作目では、既に書いたように冒頭で殺されてしまうが、彼女へのボーンの思いは何度も映し出される写真で描写され、モチベーションとなっていることが分かる。

 ジョーン・アレン扮するパメラ・ランディは今作冒頭のベルリンでの情報屋との取引の指揮を執っていたCIA職員。現場に残された指紋から“トレッド・ストーン”計画なるものを知り、ボーンについても知っていく。

 ブライアン・コックス扮するアボットもCIAの幹部。2年前に終了した“トレッド・ストーン”計画の責任者だったが、今回の事件で再びボーン絡みで“トレッド・ストーン”が再認識され、パメラに協力せざるを得なくなる。なお、“トレッド・ストーン”計画とは、殺し専門のエージェントをCIA内部に育てる計画だったが、ボーンが行方不明になった事で中止になったのだった。

 CIAの工作員ニッキーにはジュリア・スタイルズ。1作目にも出ていたが、ヨーロッパに居た工作員の健康面を管理していた女性職員だ。

 ロシアからやって来る神出鬼没のスナイパーには短髪がエキセントリックなカール・アーバン。殆どしゃべらないけれど殺し屋がただの冷血漢というよりはクールな感じがするというのは何時の頃からだろうか。ドロンの「サムライ」あたり?

 ガブリエル・マン扮するダニーもニッキーと同じCIA職員でアボットの部下。1作目にも出ている。

 クリス・クーパー扮するコンクリンは前作の終盤で死ぬので、今作ではボーンのフラッシュバックの中に出てくる。ボーンの直属の上司だった男だ。


 冒頭より記憶喪失のボーンを悩ませるフラッシュバックには、ボーンが携わった事件の匂いがするが、終盤に向かってCIAとの駆け引きの中で段々とその謎解きが絡んでいく所が今回の巧い所。それは冒頭のベルリンの事件とも関連があることが分かってくる。
 そんな中で、ボーンが自身の過去の罪を告白に行くロシアの少女がいる。イリナ・ネスキという役だが、扮するオクサナ・アキンシナが美しくて気になって、さて次回にも出てくるのかなと思ったけどどうやら出演は無いみたい。残念!

 気分が悪くなるかもとまで思わせたカットの切り替えの早さには閉口したので、お勧め度は★二つ。
 シリーズ3作の中では評価が高い3作目も今回と同じポール・グリーングラスが監督なのでちょっぴり心配ではありますが、観たいと思います。







[2018.04.30 追記]
 1回目をPCで、2回目はTVで、そして今日3回目をPCで観たらカットの高速切り替えにも慣れたのか、更に面白く感じてお勧め度を変更しました。3回目の前に「アルティメイタム」も観たんですけど、やっぱ2作目が一番でした。


ネタバレ備忘録はこちら。

・お薦め度【★★★=一見の価値あり】 テアトル十瑠
コメント

欲望

2018-03-17 | サスペンス・ミステリー
(1966/ミケランジェロ・アントニオーニ監督・共同脚本/デヴィッド・ヘミングス、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、サラ・マイルズ、ジェーン・バーキン/111分)


 ミケランジェロ・アントニオーニは苦手な監督の一人だ。抽象的なイメージによる比喩表現が独特らしいが、苦手な僕には殆ど受け取れないし、何しろ同じイタリアのフェリーニのような絵力(えじから)を感じた事がない。クールが持ち味らしいからフェリーニとは比べられないかもしれないが、クールなりの生命力が感じられてもよさそうなのに。
 更に、ストーリーの語り方に酔いたい僕にはリードの軸がブレブレに感じるのが最大の欠点だ。
 かつてベルイマンが、<アントニオーニはこの商売を実は全然学ばなかったんだ。彼は個々のイメージに集中していて、映画というものはイメージのリズミカルな流れである、運動であるとちっとも気づいていない>と言ったらしいけれど、軸がブレていると感じるのは<個々のイメージに集中>し過ぎているからかもしれない。

 確か「欲望」は雑誌スクリーンを読み始めた頃に前年度の批評家ベスト20以内(或いはベストテン内)に入っていたけれど、上記の理由から避けていた作品。ベルイマンに言わせると「夜 (1961)」とコレは見ても宜しいらしいので、今回チャレンジした次第。
 原題は【BLOWUP】。写真を部分的に、または全体的に拡大することを指す「引き伸ばし」の事だそうです。ま、映画を観ていただければこのタイトルは納得ですね。

*

 1960年代当時のロンドンが舞台。
 主人公の売れっ子写真家トーマスが多忙を極める中、ふと立ち寄った公園で年配の男性と若い女性がデートをしている所に出くわす。デートというよりは、その年齢差からは不倫とか良からぬ関係を想像させる二人だ。写真家はとっさに藪の中に身を隠しながら二人に向かって持ってきたカメラのシャッターを押す。大胆になった彼は前方の大きな樹の陰に近づいて何枚も撮るが、気づいた女性はフィルムを渡せと言いトーマスは断り公園を去る。
 数時間後、女はトーマスのアトリエに現れ、彼女の容姿が気に入った写真家はネガを渡し彼女の連絡先を聞き出す。
 実は女に渡したネガは偽物で、あらためて公園で撮ったフィルムを現像したトーマスは、そこにカップル以外の男性が写っており、その男が二人に向かって拳銃を構えているのに気づく。
 なんだ、コレは?
 彼女の視線の先にその拳銃があるように見えるから、女はその事を知っていたのか?すると拳銃が狙っていたのは年配の男性の方か?いずれにしても、発砲事件は起きなかったし、彼女も生きているから事件を未然に防いだのだろうけど。
 更に、公園で写真家に詰め寄った後に諦めて去って行った女性を写した写真を引き伸ばすと木陰に何やら物体が。ん?まさかこれは死体ではないか・・・。





 allcinemaのジャンルは「サスペンス/ドラマ」となっている。
 しかもこの後、写真家が件の公園に行ってみると、現像した写真の通りに木陰に死体を発見する。例の年配の男性だ。
 当然、観る方としてはこの事件らしきものの進展が気になるんだが、アントニオーニの狙いは単なる犯罪サスペンスではないので、これ以上真相が暴かれることがないことを予め書いておきましょう。傲慢で自信たっぷりだった写真家の心象に焦点を当てた不条理劇へと変貌していきます。
 ハッキリ言って作者の意図は僕には分からんです。
 モヤモヤして終わるし、観客それぞれの受け止め方でよろしいんじゃないでしょうか。

 ラスト。オープニングにも出てきたヒッピーの集団が公園にあるテニスコートでエアーテニスをする。つまり、ラケットもボールもないのにさもあるかのようにテニスをするのだ。見ていた写真家も最後には、コート外に飛び出した目に見えないボールを拾ってコート内に投げ返す。そしてエンドクレジットの背景にもなっている芝生の中で、彼の姿だけ忽然と消えていく。
 このラストシーンの意味も色々と書かれてるみたいだけど、僕にはこう思えた。
 あの写真に写っていた事件らしきものも、現実に見た死体も消えてしまって、結局残ったのは彼の記憶の中だけ。つまりエアーテニスをやっているあの若者達と同じ立場(無いものを有るかのようにふるまってる人間)になっちゃったと、彼が自虐的な心境になった事をあらわして終わってるんじゃないかと。

 1966年のアカデミー賞では監督賞と脚本賞(エドワード・ボンド、アントニオーニ、トニーノ・グエッラ)にノミネート。
 全米批評家協会賞では作品賞と監督賞を受賞。更に、翌年のカンヌ国際映画祭ではパルム・ドールを受賞したそうです。

 幾つかトリビアを。
 プロデューサーは初タッグのカルロ・ポンティ。この後「砂丘 (1971)」、「さすらいの二人 (1974)」も作っています。
 音楽はハービー・ハンコックが担当していて、後半のシーンにはヤードバーズがそのままライヴ中のロックバンドとして出演しています。なんとジェフ・ベックとジミー・ペイジが在籍していた時代で、ベックはアンプの調子が悪いことに怒ってギターを壊したりしています。
 写真家に私を撮ってとアトリエにやって来るモデル志願の少女が二人出て来ますが、その一人がジェーン・バーキンでした。ヘアーもいとわない姿勢はこの頃からでしょうか。





・お薦め度【★★=サスペンス部分は、悪くはないけどネ】 テアトル十瑠
コメント (2)

夜霧のマンハッタン

2018-01-21 | サスペンス・ミステリー
(1986/アイヴァン・ライトマン監督・製作/ロバート・レッドフォード、デブラ・ウィンガー、ダリル・ハンナ、テレンス・スタンプ、ブライアン・デネヒー、ロスコー・リー・ブラウン/116分)


 レッドフォードとデブラ・ウィンガーが共演で、おまけにダリル・ハンナも出てるってことで数年前に買った中古DVDであります。監督が「ゴーストバスターズ」のアイヴァン・ライトマンというのも気になったんだけど、調べると「ゴーストバスターズ」は2年前だったんだね。

 映画の冒頭は1968年のNY。沢山の招待客が集まって、名の売れている画家デアドンの娘チェルシーの8歳の誕生日パーティーが催されるが、宴も終わりゴミも放置されて閑散とした邸の中、火災が発生する。チェルシーは知人に抱きかかえられて難を逃れるが、彼女は父親が何者かに組み伏せられた後に焼け落ちてきた木材の下敷きになるのを見る。
 それから18年後のNY。ミステリアスな美女に成長したチェルシーは今度は盗難未遂事件の被告としてマスコミの前に登場する。

*

 チェルシーに扮したのは「スプラッシュ」や「ブレードランナー」で注目されたダリル・ハンナ。僕には「ウォール街」の記憶もあるなぁ。
 チェルシーが盗もうとしたのは、父親の知り合いだった資産家フォレスターが持っていた父親デアドンの絵だった。それは例の誕生日パーティーで父親からプレゼントされた絵と彼女は思っていたのだが、後に別の人物に渡ったその絵の裏には、18年前に書かれた父親のサインは無かった。チェルシーの勘違いか?はたまた、あの絵は焼けずに今もあるのか?
 パフォーマンス・アーティストというのが彼女の現在の肩書。父親亡き後、残った絵も消失してしまい遺産もなくなっていたのだった。

 チェルシーの弁護人になるのがデブラ・ウィンガー扮するローラ・ケリー。依頼人の弁護の為には犬でさえ証人席に座らせようとするやり手の弁護士であります。

 映画の冒頭で、そんなローラと対峙するNY地方検事補トム・ローガンがレッドフォード。
 バツイチでローティーンの娘が一人。親権を持つ母親と暮らしているお利巧さんの娘は、月に4日程父親のアパートにやってくるが、この父娘のエピソードはサスペンス・ミステリーのストーリーの中でほっこりとさせてくれるものであります。妻とは犬猿の仲のままですが。

*

 チェルシーの裁判においてその境遇への配慮をローラはトムに依頼するが、フォレスターが告訴を取り下げた為にチェルシーも無罪放免になる。ところが、チェルシーは何者かが自分を尾行しているとトムに助けを求めてやって来る。トムは彼女をアパートまで送って行くが、帰りに何者かに銃撃されることになる。また、18年前のチェルシーの父親の死が殺人事件であるという刑事の登場により、トムとローラは過去のデアドン事件の解明に協力していくようになるのだが・・・。





 所々にユーモアやらロマンスめいたシーンもあるウェルメイドなサスペンス・ミステリーといえば聞こえはいいですが、さすが「ゴーストバスターズ」の監督らしく、時に間延びする所も無きにしも非ず。終盤の真犯人探しも消去法で行けばすぐに謎は割れるし、記憶に残る毒気も見当たらないのでお勧め度は★二つ半どまりでした。軽さが災いして「一見の価値あり」とまではおまけ出来ませなんだ。
 しかし、下のトレーラーを観ていただければ分かりますが、アクションシーンもあるし気軽に観るには絶好の作品じゃないでしょうかね。
 きりっとしたデブラさんもセクシーで僕はお好み。
 尚、原題は【LEGAL EAGLES】。やり手の弁護士、という意味らしいです。








[追記] 脇の俳優も立派ですが、スタッフにもベテランさんがおられました。
    カメラはラズロ・コヴァックス、音楽はエルマー・バーンスタインです。
    ライトマン、結構ちから入っていたのかな。

・お薦め度【★★=悪くはないけどネ】 テアトル十瑠
コメント (2)

コードネームはファルコン

2017-07-25 | サスペンス・ミステリー
(1985/ジョン・シュレシンジャー監督・共同製作/ティモシー・ハットン、ショーン・ペン、パット・ヒングル/131分)


 ブックオフで見つけたDVDで、タイトルに記憶があったのでジャケットを見たら監督がシュレシンジャーで主演がティモシー・ハットンとショーン・ペン。ということで即購入した。

 ウィキペディアには<1970年代、アメリカの偵察衛星の情報をソ連側に売った実在の2人のアメリカ人青年、クリストファー・ジョン・ボイス(Christopher John Boyce)とアンドリュー・ドールトン・リー(Andrew Daulton Lee)の事件を映画化>したものと書いてある。

 ティモシー・ハットンがクリス・ボイスでショーン・ペンがドルトン・リー役だった。
 「コードネームはファルコン」なんていうタイトルだから、主人公が何か007みたいなスパイ活動をしているように思われそうだけど、そういう設定ではない。単にクリスの趣味が猛禽類の鳥ハヤブサ(ファルコン)を飼っているからで、何回かクリスがハヤブサを扱っているシーンもある。ン?そういえば一度だけ、ソ連側との暗号連絡メモの差出人名にファルコンとしたシーンがあったな。
 原題は【THE FALCON AND THE SNOWMAN】

*

 冒頭のクリスの家のTVでウォーターゲイト後のニクソンの件で国内がごたごたしている様子が出てくるので時代は1974年辺り。国民の間にも政治不信とかが蔓延していた頃だろう。
 クリスは神学校に通っているが疑問を感じて退学する。元FBIの父親は心配して仕事を紹介するが、それがCIAの下部組織だったという事。
 かたやペン扮するアンドリューはクリスの幼馴染で、若いのに定職に就かず麻薬の売人をしている。家はプール付きの豪邸で親とも同居しているんだが、メキシコに買い付けに出かけた時などは国境の検問所で毎回止められ車を精検される程ブラックリストに上がっている。
 若い頃のショーン・ペンはチンピラが似合ってるなぁ。
 クリスは紹介された会社で働き始め、真面目な態度とバックボーンを評価されていよいよCIA関連の小さな部署に異動する。クリス以外には男女二人しかいない居ない小さな部屋だが、入室時には特定の人しか入れないように暗号キー付きのドアとなっている。
 テレグラムを介して入ってくる色々な情報を整理するのがクリスの仕事だが、システムの都合上か、時に他部署への連絡情報も入ってくる。そんな中、オーストラリアの組合活動に関する問い合わせがクリスの目に留まった。気になったクリスは先輩職員にそれとなく聞いてみる。彼らは反米的な態度を示す、時のオーストラリア首相ホイットラムを批難した。CIAはオーストラリアの政治に干渉するべく、当地の組合にも諜報部員を潜入させていたのだ。チリのアジェンデ政権の転覆にもCIAが絡んでいることも分かった。
 大きな国(アメリカ)が小さな国をもてあそんでいる。クリスには沸々と怒りが湧いてくるのだった・・・。

*

 2013年に発生した“スノーデン事件”と根っこは同じ所なんでしょう。ただ、スノーデンは告発という選択肢を選び、クリス達は売国奴の道を選んだ。
 クリスが何故お金を選んだかははっきりしない。クリスに相談されたアンドリューも最初は協力を否定するが、その後麻薬の取引で逮捕されお金が必要になって協力するようになる。意外にもソ連側(相手はメキシコのソ連大使館)が要求にすんなり応じてくるし、簡単に大金が入ることが分かってからはアンドリューもより積極的になる。
 破滅のきっかけは、ありがちな事だ。
 直接の交渉人になったアンドリューが調子に乗り、非合法活動を自慢げに友人たちに漏らすのをクリスが聞いて激高したり、ソ連側の要求が強くなって怖くなったからだ。
 最期の交渉と乗り込んだメキシコでアンドリューは殺人事件の犯人と間違われ、拷問に耐えかねて漏らしたスパイ活動がアメリカ当局に届くことによる。
 後にクリスが言うが、結局ソ連のスパイも似たようなもので、クリスの正義感を発揮する手段は何処にも無かったのだ。

 若者二人を追った犯罪ストーリーは破綻なく丁寧に描かれているが、彼らの行動が冷戦時代の二つの大国を一発即発の危機に陥れるような事もなく、あくまでも二人のハラハラが描かれただけという印象が強い。
 官憲に監視されているという妄想にクリスがとりつかれるシーンも冗長感が増したな。





お薦め度【★★=悪くはないけどネ】 テアトル十瑠
コメント

ネタバレ雑感 ~「ユージュアル・サスペクツ」

2015-09-24 | サスペンス・ミステリー
 「ユージュアル・サスペクツ」の記事も半分はネタバレですけど、書き足りないものもあったので、ネタバレ前提で書いておきます。

 殆ど褒めていないのにお勧め度★二つはなんぞやと思われた方もいらっしゃるかも知れませんが、例の「カイザー・ソゼ」の部分を無しにして観れば★二つ半~★三つくらいはあると思うんですよね。テンポのいいカット割りとかアングルとか繋ぎとか、流れるように語ってますから。ただ、無条件に★三つ【一見の価値あり】に出来ないのは、登場人物に既視感とありきたり感があって個性がないから(20年前の作品だからしょうがいないっちゃぁしょうがないけど)。加えて小さいことを言うと、元警官と女弁護士との描写が変なフランスのフィルム・ノアールみたいで、しかも中途半端だったかな。
 ま、「カイザー・ソゼ」を無しにするっていうのも難しいでしょうけどネ。

 さて、「カイザー」が出てくる前、つまり前半からヴァーバル・キント(=ケヴィン・スペイシー)は怪しいと思わせる描き方でしたよね。
 サン・ペドロ埠頭でのアルゼンチン船が大爆発して大勢の乗組員の死体が発見された事件で、ただ一人無傷で生き残ったキントが重要参考人として尋問されそうになった時、弁護士が登場した後には検察もお目こぼしをし、尚且つ市長や知事までもが介入してくる事態になったと担当刑事は言ってました。NYから来た関税特別捜査官のクイヤン(チャズ・パルミンテリ)に「あいつには誰か力のある黒幕がついている」と刑事が話した時点でキントには裏があると思わせましたよね。
 なので、「カイザー」の存在が滲み出てくる後半から、ほぼキントに焦点は当たりました。でもあまりに分かりやすい展開だから、僕はディーン・キートン(=ガブリエル・バーン)の恋人の女弁護士イーディが実は裏でキントと繋がってるんじゃないか、そんな事も考えました。それでも想定内ですが、繋がり方は白紙状態なので、その辺に興味は移っていったんですがね。実際は・・・残念でした。

 それにしても、キントの話のどこまでが事実のつもりで脚本は書かれたんでしょうかね?
 最後の27人の殺害は、ソゼと敵対する組織への報復も兼ねてますから動機はあるんですけど、市長や知事を動かせるくらいの黒幕が自分の手を汚しますかね。実際はコバヤシ以外の手下を使ってやっつけて、最後にキートン等を自分の手で殺害したんじゃないですかね。
 だから、あの事件の部分もすべて嘘って言いたくなるわけですよ。そうなるとその前の宝石強奪事件についてもどうなのってなる。
 ちんけな詐欺師を仮の姿にしてるっていうのも、考えるのも馬鹿馬鹿しいくらいだしね。

 ということで、これ以上は時間の無駄という事で考えないことにしました。
コメント (2)

■ YouTube Selection (予告編)


予告編だけで話は分かるけど、観てみたいね。どう描いているか。

■ Information&Addition

※gooさんからの告知です:<「トラックバック機能」について、ご利用者数の減少およびスパム利用が多いことから、送受信ともに2017年11月27日(月)にて機能の提供を終了させていただきます>[2017.11.12]
*
●映画の紹介、感想、関連コラム、その他諸々綴っています。
●2007年10月にブログ名を「SCREEN」から「テアトル十瑠」に変えました。
●コメントは大歓迎。但し、記事に関係ないモノ、不適切と判断したモノは予告無しに削除させていただきます。
*
◆【管理人について】  HNの十瑠(ジュール)は、あるサイトに登録したペンネーム「鈴木十瑠」の名前部分をとったもの。由来は少年時代に沢山の愛読書を提供してくれたフランスの作家「ジュール・ヴェルヌ」を捩ったものです。
◆【著作権について】  当ブログにおける私の著作権の範囲はテキスト部分についてのみで、また他サイト等からの引用については原則< >で囲んでおります。
*
テアトル十瑠★ バナー作りました。リンク用に御使用下さい。 (2009.02.15)