テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

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アンダルシアの犬

2011-09-27 | ノンジャンル
(1928/ルイス・ブニュエル監督・共同脚本/ピエール・バチェフ、シモーヌ・マルイユ、ハイメ・ミラビエス、サルバドール・ダリ、ルイス・ブニュエル/15分)


(↓Twitter on 十瑠より

ブニュエルの伝説的作品「アンダルシアの犬」をレンタルで観る。例の女の目が剃刀で切り裂かれるシーンが気味悪そうで、心の準備をして観たが、モノクロだし、それ程でもなかった。ストーリ-はあってないようなモノ。IMdbのレイトは8.0だけど、これって思わずフフフって笑っちゃうよね。
 [ 9月 27日 以下同じ]

気味悪そうだと思ってたけど、80年前のサイレントだからそうでもない。脈絡のないストーリーでどれだけの映画が作れるか、そこに腐心した作品だと思う。『やがて内戦状態に突入していく20年代の終わりのスペインで作られた点は何かを教唆するだろう』とはalcinemaの解説だが、そうかな?

如何にストーリーに意味を持たせないか。これって案外難しいんだと思うね。いずれにしても、この二十分足らずの尺だからこそ観れる映画で、コレ以上長いともたない気がする。口を覆っていた手をどけると口が無くなっているというシーンは「トワイライトゾーン」を連想した。

YouTubeに全編観れる動画があったけど、BGMがレンタルDVDと違ってた。淀川さんの解説付きのDVDは、バスター・キートン作品のような軽いノリのBGMで、俳優の演技もソレらしいのでコメディの匂いもする映画だった。ブニュエル、未見の作品が多いんだよなぁ。もっと観なきゃ。

*

 allcinemaの解説は・・・

<今みても感嘆する他にないシュールレアリズムの映像詩。L・ブニュエルの凄い所はこのイマジネイティヴな実験精神を失わず、メキシコ時代の通俗作品、後期の“アンチ”カトリシズムの不条理劇と、果敢な映画的創造を貫いたことだ。ダリが共同脚本を手がけた本作は全く論理的脈略はなく、あまりにも有名な、眼球を剃刀で真二つにされる女、路上に切り落とされた手首をみつめる女装の男、痙攣する掌を這い回る蟻の群れなど、夢魔的イメージが全篇を支配している。そこに何を読みとるかは観る者の自由。ただ、やがて内戦状態に突入していく20年代の終わりのスペインで作られた点は何かを教唆するだろう>

 ジャンルは「アート」になっているので、フェリーニの「フェリーニのローマ」と同じだが、こっちはアレ以上に筋書きなど無く、いや、筋書きどころかストーリーが無い。つまり“映画的創造”なんていうモノは最初から狙って無くて、通常の劇映画の作り方を否定して映画を作るとどんなモノが出来るかという、実験ですな。
 時間を示す字幕も出てくるが、これまた何の意味も無いという徹底ぶりでした。

 <やがて内戦状態に突入していく20年代の終わりのスペインで作られた点は何かを教唆するだろう>という見方は、完全に一人相撲であって、お金持ちの坊ちゃん育ちのブニュエルさんとダリさんですから、お遊び感覚で作ったのかも知れない・・・という考え方もまた一人相撲なのですが。^^

 全編入ったYouTube(↓)は、ツイート通りレンタルDVDとはBGMが違うので、若干雰囲気は違いますが、実験の習作ですからこれでも鑑賞としてはOKではないかと思います。
 解説通りショッキングな映像も(少しですが)ありますので、ご覧になる方は心してスタートボタンを押して下さい。





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フェリーニのローマ

2009-02-03 | ノンジャンル
(1972/フェデリコ・フェリーニ監督・共同脚本・ナレーション/撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ/音楽:ニーノ・ロータ/ピーター・ゴンザレス、ブリッタ・バーンズ、フィオナ・フローレンス、アンナ・マニャーニ、デニス・クリストファー/120分)


 これ、カテゴリーが迷う映画です。迷うというか既存のジャンルには該当するものが無い。「allcinema-online」では“アート”としていましたが、それもしっくりこないのでとりあえずノンジャンルと致しました。

 フェリーニがナレーションをしながら彼なりの“ローマ”を紹介する映画で、冒頭で彼自身語っているように、これは通常の劇映画のような巧妙なプロットも無いし主人公もいない。さりとてドキュメンタリーというわけでもない。イタリア北部の町リミニで生まれたフェリーニが、子供の頃に学校でローマについて学ぶシーンや、十代の終わり頃にローマにやって来て下宿を始めるシーンが前半にあるので、そういう意味ではフェリーニが主人公と考えて良いでしょう(勿論フェリーニは俳優が演じています)。極めて私的な映画で、そのつもりで観ないとガッカリすること間違いなしです。
 いわゆる劇映画を期待する向きにはお薦め度は★一つ。しかし、フェリーニらしい躍動感溢れる映像は圧倒的で、時に幻想的な面持ちながら、その臨場感たるや尋常ではない。我ながら、ちょっと大袈裟な表現ですが、まあ、映像派の(映像美ではなく、映像の生命力を楽しむ)皆さんには一見の価値ある作品ではありましょう(★★★)。

 妖しげな下宿屋の描写や、夜の賑やかしいオープン・レストランでの食事風景。若きフェリーニは勿論出てくるのですが、彼を中心にしたストーリーがあるわけではなく、騒々しくも生き生きとしたローマの人々をカメラはスケッチしていきます。つまり、フェリーニの目に映ったローマを表現しているわけです。
 お察しの通り、猥雑な娼館のシーンもたっぷり描かれます。何故か現実の奥さんとは違った太った女性がお好みと言われてましたが、その通り、パーツだけではなくどこもかしこもでかい女性達が現れます。

 その後、時は30年後にも飛び、映画監督となったフェリーニがロケ隊を引き連れてローマを撮影するシーンも出てきます。ここでも俳優が扮したフェリーニが出てきますが、彼が何かを演じるようなシチュエーションはありません。あくまでもローマが主体なのです。
 土砂降りの高速道路での撮影風景の迫力(ちょっとしつこいけど)。
 地下鉄工事を取材していたロケ隊は、遺跡発掘の現場にも遭遇する。壁面のフレスコ画が外気に触れて消えていく様子は哀しくて幻想的。
 聖職者用のファッション・ショーなんていう、ホントか嘘か知らないけれど、そのシーンには怪奇趣味というかそんな雰囲気もありました。
 時間旅行のように、現在と過去が行ったり来たり。
 そうそう。初めの方の子供の頃のシーンでは、家族で映画館に行くシーンもありました。

 ラストは夜のローマ。
 突然、懐かしい女優さんが出てきます。アンナ・マニャーニ。
 『彼女こそ、ローマの象徴だ。ローマは純血の処女、雌オオカミや貴族、道化師に例えられ・・・』
 カメラに向かってフェリーニの言葉を遮り、彼女はドアの向こうに消えていきます。
 アンナに振られたフェリーニが更に呟く。
 『この時間の散歩は最高だ。誰一人いない素晴らしい静寂。聞こえるのは泉の音だけ』

 すると、街中(まちなか)に沢山の光の列が現れ一斉に動いて行きます。それはもの凄い数の暴走族のオートバイで、先のフェリーニのナレーションをあざ笑うかのように、けたたましいエンジン音を鳴らしながら夜のローマを走って行くのでした。
 古代建築の姿を残す美しい街並み、通りのアチコチにはライトアップされた彫像が並ぶ古都。その間をおぞましい数のバイクのライトが通り過ぎて行く。フェリーニの愛した美しいローマは何処へ・・・。

 1972年のカンヌ映画祭でフランス映画高等技術委員会賞というのを受賞したそうです。

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