テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

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昔は梅雨が明けると待ちに待った暑い夏!と嬉しくなったもんですが、近頃はさっぱりですな。
この殺人的な暑さに恐怖すら覚えます。
梅雨が明けそうな今日この頃、願うのは曇り空と優しい雨のほうです。

ボルベール <帰郷>

2024-07-04 | ドラマ
(2006/ペドロ・アルモドバル監督・脚本/ペネロペ・クルス、カルメン・マウラ、ロラ・ドゥエニャス、ブランカ・ポルティージョ、ヨアンナ・コボ、チュス・ランプレアベ、アントニオ・デ・ラ・トレ/120分)


 ペドロ・アルモドバル監督の「ボルベール<帰郷>」を観る。
 アルモドバルといえば以前「オール・アバウト・マイ・マザー」を面白く観たけれど、これも面白かったな。どちらも普通の人々が描かれていると思って観ていたら、あれよあれよという間に数奇な人生に巡り合ってしまうというストーリーだった。

*

 オープニングシーンがマドリードから180キロ程離れたラ・マンチャ地方の霊園で大勢の女性達がお墓の掃除をしている所で、墓所の手入れはどうやらこの地方の風習らしい。日本でいえばお彼岸みたいなもんでしょうか。
 そんな女性たちの中に、マドリードに住むソーレとライムンダの姉妹がいた。もともとはラ・マンチャの生まれだが訳あって故郷を離れ、必要な時にはこうしてまだ知り合いの多い田舎町に帰ってくるのだ。
 姉妹は墓所清掃の帰りにラ・マンチャに住む伯母さんの家も訪ねた。4年前に死んだ母イレーネの姉だが眼も殆ど見えず痴呆も始まっているので心配して様子を見に来たのだ。
 目が不自由な割には生活には困っていないらしく、ライムンダの一緒にマドリードで暮らそうという誘いも断る伯母だった。

 ラ・マンチャとマドリードとの車の行き帰りのシーンが何回か出てくるが、大地にそびえたつ風力発電の風車が並ぶ風景が印象深い。

 さて、姉妹の話。
 姉のソーレは2年前に喧嘩した後に夫が家を出、以来夫とは音信不通だった。アパートで無許可で美容院をやっているが、近所のお馴染みさんのおかげで生活には困っていない。
 一方の妹ライムンダには夫パコと14歳の娘パウラが居た。ライムンダとパウラが墓所清掃から帰って来るとパコの様子がおかしい。パコは勤め先を解雇されたのだ。次の日からライムンダはパートの仕事を増やし、夜遅く帰宅することになった。
 次の日、遅くにバスで帰ってきたライムンダを待っていたのは、雨のバス停で濡れ鼠になって立っていたパウラだった。
 「どうしたの?」ライムンダが尋ねるもパウラは黙ったまま。
 アパートに入ったライムンダが見たのは、キッチンの床に血まみれになって息絶え横たわるパコの姿だった。

 普通ならこの後は【ネタバレ注意】書きにする所ですが、もっとややこしいネタが満載なのでもう少し書いておきます。

 パウラの話はこうでした。
 一人でキッチンにいた所パコが後ろから抱きついてきたのでびっくりして止めてと言ったが、パコは俺とお前は本当の親子じゃないからコレは悪いことじゃないんだと再び抱きつこうとした。なのでパウラは包丁を持って脅かしたのだが、パコは止めず、仕方なく刺してしまった。
 ライムンダは「パコを刺したのはあなたじゃない」とパウラに言い聞かせ部屋に戻らせると黙々とパコの遺体の周りの血を拭き取っていった。

 死体遺棄は犯罪ですけどね、アルモドバルの描き方には「犯罪上等」とでもいうような雰囲気がありますし、ストーリーが進んでゆくにしたがってこのライムンダの行動も納得してしまうようになります。

 で、仮の遺体隠蔽処理が終わった頃にソーレから電話が入ります。
 それはラ・マンチャの伯母さんが亡くなったという連絡でした。
 パコの件がまだ途中のライムンダは、パコが会社を首になった事で大喧嘩して家を出て行った、色々と忙しくて葬儀には行けそうにないと答えます。
 翌日、一人伯母さんの家に行ったソーレ。死体や幽霊が苦手な彼女は、あろうことか、そこで4年前に死んだ母親イレーネの幽霊に声を掛けられるのだった・・・。

*


▼(ネタバレ注意)
 ね、大変でしょ。
 勿論、幽霊はソーレの勘違いで、実は母親は死んでいなかったんですが、この母親の死にまつわる事件も大きなシークエンスでして、その後母イレーネはライムンダに内緒でソーレのアパートに転がり込みます。

 4年前、母親は父親と一緒に山小屋で焼死体で見つかったのだが、イレーネが生きているのなら“あの母親”は誰なのか?
 パコとパウラは実の親子ではないというパコの話が本当ならば、パウラの父親は誰なのか?

 思春期以降ライムンダとイレーネは折り合いが悪く、再会の時はなかなか訪れませんが、全ての謎が解けた時には母と娘の間のわだかまりも解けていくようでした。
▼(解除)


 お薦め度は★四つ。「オール・アバウト・マイ・マザー」と同じくこれも女性賛歌の作品ですね。
 ライムンダに扮したペネロペ・クルスが米国アカデミー賞で主演女優賞にノミネートされたそうです。
 ラ・マンチャの伯母さんの向かいの家で暮らすアグスティーナのエピソードも本筋に絡んできて面白かったです。生と死が交錯して、ラストはしみじみとしますな。





・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて】 テアトル十瑠
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夫の隣で出ています 【Portrait Q -№205】

2024-07-01 | Who is・・・?
 ポートレイト問題、第205弾。





 1936年4月、ロンドン生まれ。
 この方のファンには申し訳ないですが、僕はご本人よりは旦那さんの作品でよくお見かけするので覚えている方ですネ。
 可愛いお名前は、ミドルネームを取った本名らしいです。
 実は共演作の多い旦那さんは2度目の結婚の方で、最初の方も俳優さんでした。
 セレブ好きだったのかな?
 1990年5月に54歳で亡くなっています。乳癌だったそうです。
コメント (4)
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ぎょろ眼の博士ちゃん 【Portrait Q -№204】

2024-06-01 | Who is・・・?
 ポートレイト問題、第204弾。





 1952年10月、ピッツバーグ生まれの71歳。
 一見ヨーロッパか中東の人かと思う風貌ですな。
 70年代にアルトマン監督にスカウトされたのが本格的な映画デビューとか。
 80年代半ばに主演したホラー映画がヒットし、以降スピルバーグのシリーズ物にオファーされたりのセレブです。
 夕べもTV放送してましたな。
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ロリータ

2024-05-27 | コメディ
(1961/スタンリー・キューブリック監督/ジェームズ・メイソン、スー・リオン、シェリー・ウィンタース、ピーター・セラーズ/153分)


 スタンリー・キューブリックの「ロリータ【原題 LOLITA】」を観る。
 数年前に確かブック・オフの1コイン・コーナーで見つけたDVDで、キューブリック作品と知っていたので迷わず買ったが、実は内容については知らなかった。
 “ロリコン”=“ロリータ・コンプレックス”の語源となった小説の映画化でありますな。原作者はロシア系アメリカ人のウラジミール・ナボコフ。この映画の脚本もナボコフが書いています。事前の印象ではキューブリックにロリコンは似合わないと思っていたけれど、中盤以降の毒気の出し方にはキューブリックらしさを感じましたな。
 「スパルタカス」の翌年、「博士の異常な愛情」の3年前の作品であります。

*

 主人公はジェームス・メイスン扮するヨーロッパの文芸作家ハンバート・ハンバート。苗字と名前が同じという変な奴だが、フランスの詩集の英訳が評判となりアメリカの大学に講師として呼ばれた中年男であります。
 大学が始まるまでの間、避暑の出来る地方の町に下宿を探しているシーンからストーリーは始まります。

 ハンバートが訪ねたのがシェリー・ウィンタース扮するシャーロット・ヘイズの一軒家で、若いシェリーさん、まだまだ往年のようには太っていなくてセクシーであります。
 このシャーロットさん、妙に馴れ馴れしくて身体を摺り寄せてくるので変な空気になるがハンバートもまんざらではない様子。ハンバーㇳは一年前に離婚、シャーロットは七年前に未亡人になってお互いに独り身であることが分かり、ますます艶笑喜劇みたいな感じになっていきます。
 でもなんといってもハンバートが下宿先をココに決めたのは、突然現れたシャーロットの高校生の娘ドローレス、愛称ロリータの魅力的な水着姿の日光浴を見たから。完全なるロリコン男ハンバーㇳはロリータに恋をしてしまうのです。

 ストーリーの始まりは下宿探しのシーンからと書きましたが、実はその前に153分の結末部分が数分流れます。そこではハンバートがとある屋敷に入って行って、家主のピーター・セラーズに銃をぶっ放すシーンがありまして、その後「その4年前のこと・・・」と字幕が入って過去話としてロリータとのあれこれが語られるのです。
 原作では刑務所に繋がれたハンバーㇳが我が罪について告白をするシーンから始まるらしいので映画もそれに倣ったんでしょうな。

 セラーズ扮するテレビ作家クィルティが、ロリータをハンバーㇳよりも先に弄んだのかなと推測してしまいますが、お話の軸はハンバートの恋物語なので、ロリータとクィルティの関係は曖昧なままなんですよね。クィルティが神出鬼没でキャラクターも謎すぎるのでも少しクィルティのシーンを削ったら映画も締まったんじゃないでしょうかね。

 お薦め度は★二つ半。クィルティのシーンだけじゃなく、全体的にも長すぎますね。

 60年以上前の映画だけどスー・リオン扮するロリータは現代の娘と云われてもオジサンには違和感無し。
 wikiによると97年のエイドリアン・ラインのリメイクの方が原作に忠実らしいけど、ナボコフが脚本を書いたのはこっちなのにね。
 DVDのジャケットはカラーですが、本編はオズワルド・モリスの美しいモノクロ映像でした。






 2006年にシェリーさんの訃報を記事にしてますが、その中で既に観ている作品名にこの「ロリータ」が入っていました。18年前の記憶の方が正しいでしょうから、観ていたんでしょう。う~ン、・・消えてる・・。


・お薦め度【★★=悪くはないけどネ】 テアトル十瑠
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我が道を行く 【Portrait Q -№203】

2024-05-08 | Who is・・・?
 ポートレイト問題、第203弾。





 Windows11の最新ノートPCでの最初の投稿です。
 ベテランさんには楽勝問題ですね。
 タイトルは「女性闘士」とかの案もあったんですが、決めつけるのもアレかなと思いましてね。
 1937年1月、ロンドン生まれ。
 お祖父ちゃんに父親、母親、弟に妹、二人の娘も全て俳優という芸能一家の美人女優さんです。ついでに最初の旦那さんは映画監督で、今のご亭主は俳優です。
 
 革新的なダンサーの半生を描いた作品で主演オスカー候補になって、彼女らしい役だったけど僕にはあまり面白い映画じゃなかったな。
 ジェーン・フォンダと共演した女流作家の自伝的ドラマは、まさに「女性闘士」という役で見事助演オスカーを勝ち取りましたね。
コメント (4)
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■ Information&Addition

※gooさんからの告知です:<「トラックバック機能」について、ご利用者数の減少およびスパム利用が多いことから、送受信ともに2017年11月27日(月)にて機能の提供を終了させていただきます>[2017.11.12]
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●映画の紹介、感想、関連コラム、その他諸々綴っています。
●2007年10月にブログ名を「SCREEN」から「テアトル十瑠」に変えました。
●2021年8月にブログ名を「テアトル十瑠」から「テアトル十瑠 neo」に変えました。姉妹ブログ「つれづる十瑠」に綴っていた日々の雑感をこちらで継続することにしたからです。
●コメントは大歓迎。但し、記事に関係ないモノ、不適切と判断したモノは予告無しに削除させていただきます。
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◆【管理人について】  HNの十瑠(ジュール)は、あるサイトに登録したペンネーム「鈴木十瑠」の名前部分をとったもの。由来は少年時代に沢山の愛読書を提供してくれたフランスの作家「ジュール・ヴェルヌ」を捩ったものです。
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テアトル十瑠★ バナー作りました。リンク用に御使用下さい。時々色が変わります。(2009.02.15)