テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

紙の月

2022-08-09 | サスペンス・ミステリー
(2014/吉田大八 監督/宮沢りえ、池松壮亮、小林聡美、大島優子、田辺誠一、近藤芳正、石橋蓮司、中原ひとみ、平祐奈/126分)


 J-comチャンネルで放送されたので録画して観る。
 「紙の月」=「ペーパー・ムーン」ですな。中身は全然違うけど、主人公が詐欺をするのは同じ。角田光代(「八日目の蝉」etc)の同名小説が原作だ。
 銀行に勤める主婦が横領事件を起すという現実にもあった様な話なんだけど、動機がちょっと変わってるのが異色に感じるね。

*

 まずはストーリー紹介だが、ウィキを一部拝借して加筆修正する。

 バブル崩壊直後の1994年。夫と二人暮らしの主婦、梅澤梨花は、銀行の契約社員として外回りの仕事をしている。細やかな気配りや丁寧な仕事ぶりによって顧客からの信頼を得、上司からの評価も高い。何不自由のない生活を送っているように見えた梨花だったが、自分への関心が薄い夫との間には空虚感が漂いはじめていた。
 そんなある日、デパートで化粧品を買おうとした梨花は手持ちのお金が不足していた為、ふとその日預かっていた顧客の預金に手をつけてしまう。この時は1万円だけで、これはすぐに駅中のATMを使って返却した。
 梨花の担当する一人暮らしの老人で前の担当者も嫌っていた高慢な態度の男の家で、その孫という大学生の光太と逢う。後日駅で何度か再会し、やがて光太の好奇の眼差しを感じる内に彼女から誘うようにホテルに入ってしまう。
 老人から公太が借金を抱えている事を聞いた梨花は彼に返済の手助けを申し出るが断られる。折から老人の現金を預かる事になった梨花は、銀行と老人を欺き、公太に自分からだと渡してしまう。
 『但し、あげるんじゃないわよ、無利子で貸すの。2年間できっちり返してね』
 公太は『こんな事をすると二人の関係も変わっていくよ』と言うが、梨花は『変わらないわよ。なんならお爺様から借りたと思えばいいじゃない』と言う。
 こうして少しずつ彼女の金銭感覚と日常が歪み出し、次第に後戻りの出来ないまでになってしまうのだが・・という話。

*

 梅澤梨花に扮するのは宮沢りえ。ショートカットとスレンダーなスタイルに銀行の制服が似合っていて清潔感が増し増しになっている。おかげで、この後の公太との不倫の展開が少し不自然にも感じるくらいだった。1回目の鑑賞では、洋画で言えばキム・ノヴァクがお似合いの役をオードリー・ヘプバーンにやらせている感じだなと思ったネ。
 <夫との間には、空虚感が漂いはじめていた>と書いてるけど、夫役が温和な印象の田辺誠一なので深刻さが感じられずに、この点も不倫への展開に性急感を覚えた。

 さて、梨花の横領事件は現在の話で、映画では途中彼女の過去のエピソードが所々に挿入される。
 それは彼女がミッション系一貫校の中学校に通っている頃の事で、「愛の子供プログラム」という慈善活動の様子である。それは生徒が自分の出来る範囲で東南アジアの恵まれない子供たちにお金を送るというもので、梨花は「人は施しを受けるよりは与える方が幸せである」というシスターの教えを実感を持って受け止めるのである。
 梨花は後日シスターから叱責を受ける程にこの活動にのめり込むんだが、それは現在の話である横領事件に結び付く。
 つまり、横領事件の始まりが公太への施しになっているからだ。彼女がそれに気付いているかどうかは分からないままだが、作者の意図はそういう事だと僕は思った。

 お薦め度は★二つ半。「桐島、部活やめるってよ」と同じく吉田監督の語り口はちゃんとしてるんだが、肝心の梨花の動機やら心情の動きが不明確に感じるんだよね。
 結末もスッキリしないし。





・お薦め度【★★=語り口は、悪くはないけどネ】 

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