テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

■ YouTube Selection (songs & music)


おもいでの夏

2005-09-08 | 青春もの
(1970/ロバート・マリガン監督/ジェニファー・オニール、ゲイリー・グライムズ/105分)


 よくお邪魔するブログ、anupamさんの“シネマトリックス”の「冒険者たち」の記事の中で、主演のジョアナ・シムカスと同じ“さわやか美しい系”の女優として名前が挙がっていたジェニファー・オニールが、今回の「おもいでの夏」の主演女優である。
 同じマリガン監督の「アラバマ物語」の記事の中でも、いつかこの映画についても書きたいと言っていたが、レンタルビデオもないみたいだし、いつ再見できるかも分からないので、思い出の作品として書いてみようと思う。

 ハーマン・ローチャーの原作で、脚本も彼が書いている。1942年、第二次世界大戦まっただ中のアメリカ東部の避暑地、ニューイングランドに住んでいる男子高校生ハーミーが主人公で、数十年後の彼がこの地を訪れて、当時を思い出すという形式で始まったと思う。【原題:SUMMER OF '42

 二人の友達がいて、一人はジャイアンのように体が大きい少年で確か名前はオジー。もう一人はハッキリ覚えていないが、理系の本好きの少年(ベンジーという名)だったと思う。今から思えばまるで、「どらえもん」の三人組のようである。

 男の子たち、というかオジーとハーミーはその年頃の少年にありがちのように、頭の中の半分以上は女の子のことだらけ。
 ある夜、二人の女の子と砂浜でダブルデートのような状況になるが、それは砂浜の倒木に腰を掛けて、マシュマロを焼きながらのデートであった。しばらくすると、オジーとそのお相手は少し離れた場所へ移動していく。ハーミーのカップルは高校生らしく普通におしゃべりをしているが、オジーとお相手は高校生にあるまじき交際を始めてしまう。それは、オジーの計画通りであった。
 オジーは、時々ハーミーのところに戻ってきては状況説明のようなことをする。お相手はオジー以上にすすんでいて、オジーは持ち合わせのコンドームを使い切ってしまい、ハーミーにお前の分もよこせと言う。ハーミーが『一体どこまでいったんだ?』と聞く。『AもBもすんだ。C(?)、D(?)・・・もうどこだかわから~ん!』
 そんな、オジーの初体験や、この直前にドラッグストアで二人がコンドームを買うエピソードなんかが、おかしく、また懐かしさを想起させながら語られていく。

 しかし、それにしても名手ロバート・サーティースの映像はノスタルジックな美しい絵画を見てるようだし、ミシェル・ルグランのピアノの旋律は泣きたくなる程に切ない。

 ジェニファー演じるドロシーも、旦那さんと二人で戦火を避けてこの地へ引っ越して来た女性で、船から降りてくる美しいドロシーを見たハーミーは、頭の中が彼女で一杯になってしまう。
 軍人である旦那さんが出征した後、ドロシーと知り合いになったハーミーは、時々その海辺の高台にある彼女の家に寄っては家事を手伝ったりするようになる。
 オジーはずっと年上の女性に惹かれているらしいハーミーの気持ちが分からなかったが、ハーミーは彼女といっしょにいるだけで幸せな気分でいられるのだった。

 しかし、ある事件をきっかけに二人に別れが訪れる・・・。

▼(ネタバレ注意)
 ある夜、何かの用事でドロシーの家へ行くと、彼女の姿が見えない。テーブルの上には開かれたまんまの手紙が置いてある。なんと、それはドロシーのご亭主の戦死の知らせだった。

 外で泣きながらタバコを吸っていたドロシーは、黙ってレコードをかけ、音楽に合わせてハーミーと無言で踊る。ドロシーに声をかけることもできないハーミー。やがて二人はどちらが誘うともなくベッドの上に横たわる・・・。

 次の日、前夜の事のあと一旦家に帰ったハーミーがドロシーの家に来てみると、そこには一枚の手紙がピンでドアに留めてあった。『ハーミーへ』。
 何と書いてあったかは忘れてしまった。『(ハーミーに)後悔しないで欲しい・・・』というような文言ではなかったかと思う。
 それ以来、ハーミーはドロシーと会っていない。
▲(解除)

 当時は映画は一回しか観てないが、原作の方を何回も読んだので、思い入れが映画の方なのか本の方なのか自分でも分からなくなっている。
 ジェニファー・オニール演じるドロシーが、淡い色のカーディガンを着ているスチール写真が大好きで、しばらく部屋に飾ってました。48年生まれだから還暦が間近ですが、もう随分と彼女の噂は聞かんですなぁ。

 ゲーリー・グライムズは、ちりちり頭の真面目な少年という雰囲気。この後の、ディック・リチャーズの「男の出発(たびだち)(1972)」でも好演を見せていた。

 1971年のアカデミー賞では、脚本賞、撮影賞、作曲賞、編集賞にノミネートされ、ルグランが作曲賞に輝いた。このテーマ曲も、何度も何度も聞きましたな。

 尚、1973年製作の「続・おもいでの夏」という作品があるが、これは高校を卒業したハーミーのその後のカレッジ・ライフを描いたものらしい。ローチャーの脚本で、ハーミーやオジー役は同じだが、監督はポール・ボガートに変わっていて、内容も前作とは違った雰囲気らしい。勿論、ドロシーは出てこない。こちらは未見です。





 ・ハーミーとドロシーの後日談について

 ・2007年、再見記事

 ・テーマ曲「♪Summer of '42」はコチラ

・お薦め度【★★★=あの夏が思い出したい人、一度は見ましょう】 テアトル十瑠
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

フラッシュダンス

2005-06-04 | 青春もの
(1983/エイドリアン・ライン監督/ジェニファー・ビールス、マイケル・ヌーリー、リリア・スカラ、サニー・ジョンソン、カイル・T・ヘフナー、リー・ヴィング)


 映画でも音楽でも一発屋という人がいますが、この映画のジェニファー・ビールスもそんな一人ですな。エール大出身という知的さと、ちょっと色の浅黒い所がセクシーで気になっていたんですが、その後の活躍が全然分からなかった。で、今回ネットで調べてみると、なんと、この映画以降も毎年のように映画に出ていました。ところが、いかんせん話題になった作品がない。
 初主演作がこんなに大ヒットした為もあるのでしょうが、私のように“一発屋”と思いこんでいる人が沢山いるんでしょうな。

 今年3月の(福岡の)地震の後、不要なモノを片付けようとしていたらこの映画のミュージックテープが出てきて、以来時々聞き直しています。映画も何度か観ているので、今回思い出の作品として書いてみましょう。

 プロのダンサーを目指している女性が、昼間は鉄工所で溶接工として働き、夜はナイトクラブでダンスを披露しているという設定の話。彼女の生い立ちとか、そんなものは語られていないと思った。ひょんな事から鉄工所の若社長と知り合い愛し合う。ただ、ダンサーの夢は忘れておらず、恋にのめり込むことはない。
 同じようにプロのアイススケーターになろうとしている女友達や、コメディアンを目指す男性なども出てきて、彼等が挫折を味わう場面もあり、そういう青春映画の側面もある。
 最後のオーディションをみると、舞台のクラシカルな劇団に入ろうとしているようだが、途中のダンスの練習風景ではBGMはほとんどがロック等のポピュラーミュージックだった。

 オープニングがナイトクラブでのセクシーなダンスシーンで、流れるのは「He's A Dream /by Shandi」。かっこよかった。そう。この映画は、まるでミュージカルのように音楽とダンスが沢山出てきて、そのシーンが非常に印象的な映画です。
 主題歌「Flashdance...What a Feeling」以下ノリのいい曲ばかりで、せっかくですから、ココに書き留めておきましょう。

 1 Flashdance...What A Feeling - Irene Cara
 2 He's A Dream - Shandi
 3 Love Theme From Flashdance - Helen St. John (インストルメンタル)
 4 Manhunt - Karen Kamon
 5 Lady, Lady, Lady - Joe Bean Esposito
 6 Imagination - Laura Branigan
 7 Romeo - Donna Stoneman
 8 Seduce Me Tonight - Cycle V
 9 I'll Be Here Where The Heart Is - Kim Carnes
10 Maniac - Michael Sembello

▼(ネタバレ注意)
 オーディション場面では1の主題歌を使い、最後にはブレイクダンスを見せる。ダンス自体は男性のダンサーが踊ったらしいですが、審査員の女性がブレイクダンスに感動して思わず拍手をしてしまうというシーンもあり、ここは私も感動しました。

 恋人の社長のバックアップに反撥したりするが、最後はオーディションに(多分)合格した彼女と彼が、路上でしっかりと抱き合うという爽やかなラストシーンでありました。
▲(解除)

 恋人の社長を演じたのは、「小説家を見つけたら」にも出ていたマイケル・ヌーリー。
 監督は「危険な情事(1987)」が有名なエイドリアン・ライン。この監督、私はしばらく女性の監督だと思いこんでいました。あの「ロッキー(1976)」の最後の叫びが、そう思わせたのでしょうな。

 日本でも大ヒットした主題歌「Flashdance...What a Feeling」は、1983年のアカデミーゴールデングローブで、共に歌曲賞を獲った。作曲はジョルジオ・モロダー

・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて、ダンス好きなら】 テアトル十瑠
コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

いちご白書

2005-04-30 | 青春もの
(1970/スチュアート・ハグマン監督/ブルース・デイヴィソン、キム・ダービー、バッド・コート)


 35年前の映画。30数年ぶりにレンタルで観た。
 ユーミンが作った“♪「いちご白書」をもう一度”で、名前だけはポピュラーになっているが、私の記憶の中では、CSN&Y(クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング)の“僕たちの家”と、ラストのジャンピング・シーンでグッときた映画。事前にネットで調べたら、主題歌が“♪サークル・ゲーム”だったのを思い出した。ジョニ・ミッチェルが作った歌だが、インディアンの血を引くバフィ・セント・メリーが唄って大ヒットした。映画では、オープニングとラストに流れた。

 大学の学園紛争の中でのボーイ・ミーツ・ガールの話で、西海岸の大学だと思っていたら、コロンビア大学だった。宇多田ひかるが行ってて、野村サッチーの学歴詐称でも話題になったニューヨークの大学。かなり優秀な学生が集まることでも有名ですな。

 1968年に実際にあった学園紛争で、その渦中にいたジェームズ・クーネンという男子学生の体験記を土台にして作られた映画。大学のそばにある公園をつぶして軍事関連の施設を作るという政策に反対したことが始まりらしいが、黒人差別の問題やら色々と複合的な感じである。
 学生寮にはロバート・ネケディのポスターが貼られてあったりして、そういえば、彼が暗殺されたのが68年の6月だった。

 主人公は地質学を専攻するボート部の学生サイモンで、演じるのはブルース・デイヴィソン。前年の「去年の夏」で初めて見た俳優で、話題になったネズミが人を襲う「ウィラード(1971)」は観てないんだが、印象としては線の細い頼りなげな感じ。
 ブルー・ジーンズにアーミー・ジャケットで登場した時は懐かしかったなあ。中村雅俊やら吉田拓郎やら井上陽水、泉谷しげるもこんな格好してた。

 サイモンは紛争には全然興味が無かったんだが、寮で相部屋の男の子のガール・フレンドが紛争に参加していて、その娘の話を聞いて好奇心から見物に行く。そこで、可愛らしい女の子を見つけ、軽い下心から参加していくことになる。学生サイドにも、紛争に参加するもの、参加する奴は共産主義者だとか言って反対するものなど、様々な感じだった。

 サイモンが惹かれる娘リンダに扮するのはキム・ダービー。これも前年の西部劇「勇気ある追跡」で初めて見た女優で、ちなみに、この西部劇はジョン・ウェインがオスカーをとった作品だ。監督はヘンリー・ハサウェイだった。懐かしい!
 「勇気ある追跡」では気が付かなかったが、背が高く、現代劇のこの作品ではミニスカートでスタイルのいいところを見せていた。

 激しいズームやパンをつかったカメラワークは若々しい感じが伝わってきたが、今見るとちょっと古くさい印象も残る。複雑で混乱している学生達の風景を描くのには適していたのかも知れない。街を俯瞰で撮るロングショットなどが時々入っていて、それがリズムを落ち着かせていた。

 アメリカン・ニューシネマの一作には間違いないが、映画のスタイルとしては好きな方ではない。現実と空想とごっちゃになっているシーンがあるんだが、区分が分かりにくい。
 前出の“♪僕たちの家”が流れるのは、サイモンとリンダが、取り壊し寸前の公園のグルグル回る乗り物で遊んでいるシーンで、似たような映像をその後よく見かけた気がする。この映画が先駆けかどうかは知らないが・・・。

 終盤の、校舎を占拠している学生達を学校側が依頼した警察隊が排除するシーンは、この映画のハイライトで、モンタージュによる緊迫感がよく出ていた。ただ、私は政治的な人間ではなく、こういう若者のやり方には賛同できないので、彼等が催涙ガスの中で警官ともみ合うシーンは長すぎる印象をもった。

 警察が入る前には学生達がジョン・レノンの“♪平和を我らに”を唄っていた。懐かしい。
 この時代の映画らしくポピュラーソングが色々と流れていたが、ニール・ヤングの“♪ヘルプレス”も効果的な場面で使われていた。占拠した校舎の中で、一夜を明かす学生達を映すシーンで流れた。

 尚、“♪僕たちの家”も“♪ヘルプレス”も、CSN&Yの傑作アルバム「デジャ・ヴ」の中に収録されている。

 監督のスチュアート・ハグマンは、この時27歳くらいで、カンヌ国際映画祭で審査員賞を獲ったが、その後の活躍はほとんど聞かない。次年(1971)に同じスタッフで作った「さらば青春の日」(主演:ジャクリーン・ビセット、マイケル・サラザン)も、評判はよくなかったと記憶している。

・お薦め度【★★★=一度は見ましょう、私は二度見ましたが】 テアトル十瑠
コメント (13)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

イージー・ライダー

2005-04-09 | 青春もの
(1969/デニス・ホッパー監督/ピーター・フォンダ、デニス・ホッパー、ジャック・ニコルソン)


 「さすらいのカウボーイ(1971)」を観たら、その原点とも言うべきコチラを観たくなりました。なにせ、歩いて1分の所にビデオ屋さんがあるもんですから。
 実に35年ぶり。途中で何度かTV放送があったと思うんですが、お茶の間でご家族でって作品じゃないですから、通して見ることはなかったと思います。懐かしく、又改めて意外にも良くできた映画だったと再認識しました。

 メキシコで安く仕入れた麻薬を国内の組織に高く売る。その密売でもうけたお金をガソリンタンクに詰め込んで、LAからニューオリンズまでの気ままなバイクの旅に出る二人の男。“キャプテン・アメリカ”とビリー。「さすらいの・・」の後にコレを観ると、バイクで旅をするという発想の元はP・フォンダではないかと思いましたな。

 旅のスタートでは、フォンダはアメリカ国旗をデザインした黒革の上下に、細身の身体を包んで真にカッコイイ。更にヘルメットにもバイクのボディにも星条旗が描かれている。
 “キャプテン・アメリカ”とビリーは呼んでいたが、最後のクレジットをみると、フォンダの役名は「ワイアット」となっていました。“アメリカ”だけでなく、「荒野の決闘」でワイアット・アープを演じた父、ヘンリー・フォンダへの強烈な皮肉でありましょう。

 旅のお供はロック・ミュージック。ステッペンウルフザ・バンドザ・バーズジミヘンなど当時のロックファンにはたまらない曲が流れてきます。「世界の車窓から」じゃないですが、ロード・ムービーに音楽は有効なアイテムで、私なんぞはロック嫌いじゃないですから楽しく観れましたが、嫌いな人にはどう映ったんだろう?

 途中でヒッチハイカーを拾って三人旅になる。自然回帰主義者のコロニーのようなものを創っている人物のようで、そのコロニーにも“イージー・ライダー”達は立ち寄る。今も似たような団体があると思うが、当時はこんな具合だったんでしょう。あのコロニーの代表者をやってたのは、確かロバート・ウォーカー・Jrですな。ヒッチコックの「見知らぬ乗客」で殺人者を演じた同名の俳優の息子。よく似てました。
 このコロニーでは、ライダー二人は一宿一飯のお礼に、女性と水浴びもする。当時は“フリーセックス”なんて言葉もありました。

 このコロニーを出た後、ある町でパレードを茶化した為に牢屋に入れられるが、そこで知り合うのがジャック・ニコルソン扮する弁護士ジョージ。アカデミー助演男優賞にノミネートされたジャック・ニコルソンの演技は、この映画をキリッと締めました。「ファイブ・イージー・ピーセス(1970)」や「カッコーの巣の上で」に通じる人物像が既に出来上がってました。野宿の夜に彼が話すアメリカの暗部は、この作品のラストを予感させました。

 南部に入ると、BGMにはジミヘンが流れてきて、ちょっと不穏な空気が流れてきます。
 そういえば、この映画ではシーンの繋ぎにフラッシュバックを使っているが、それは過去の記憶を呼び起こしたようなものではなく、次のシーンをフラッシュさせていて、そこに、ちょっとイヤ~なムードは出てましたな。
 麻薬中毒の幻覚症状にもフラッシュバックはあるそうです。
 裕福な白人の邸宅といかにも貧しそうな黒人の家々。“保守的なアメリカ南部”というのは既成事実なんでしょうか。作者たちの嫌悪感は伝わってきました。

 ジミヘンだけでなく、この映画に使われているロックの歌詞の意味が分かれば、もっとメッセージが掴めたのかも知れません。

▼(ネタバレ注意)
 衝撃のラストは皆さんご存じの通りですが、今回見直すと、最初のビリーへの発砲は本当に脅しのものだったと思いましたな。それが、間違って当たってしまった。で、しょうがなく、口封じのためにワイアットまで撃ってしまった、ということでしょう。
 突然このシーンになると不自然ですが、その前にジョージもリンチのようにして殺されているんで、ラストの暴力も納得してしまいました。
▲(解除)

 69年のアカデミー賞では、脚本賞にもノミネート(フォンダ、ホッパー、テリー・サザーン共作)されたが、当時のインタビューでは、基本的な筋書きはあったが、細かいところはその時その時に話し合いながら作ったと語っていました。
 ラズロ・コヴァックスは、この後「ファイブ・イージー・ピーセス」「ペーパー・ムーン(1973)」「未知との遭遇(1977)」なんかを撮ってます。
 ニューオリンズの娼婦役にカレン・ブラックが出てましたが、この後ニコルソンと「ファイブ・イージー・ピーセス」で共演したんでした。

 酔いどれ弁護士のジョージが語る、『自由を語るのは好きだが、ホントに自由な人間を見るのは嫌いな“アメリカ”』。この辺は、現在にも通じるテーマのような気がします。アメリカじゃなく、人間のね。ただ、この作品のライダー達の自由は犯罪で儲けたお金でのものですから、ライダーの存在も恥部といえなくもない。
 <本作の大ヒットは、低予算で現実的な作品でも優れた商品になる事をハリウッドに知らしめた。>そうです。

・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて】 テアトル十瑠
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

冒険者たち

2004-07-02 | 青春もの
(1967/ロベール・アンリコ監督/アラン・ドロン、リノ・ヴァンチュラ、ジョアンナ・シムカス)


 双葉十三郎さんが傑作と書いていたので見たが、それほどではない。氏の基準でいえば、65点か70点でよいのではないかと思っている。
 NHK衛星放送で(ドロン特集をやっていたんだろう)、「地下室のメロディー」の後にやっていて、録画していたもの。見ているうちにかつて見ていた事を思い出した。後半の撃ち合いの部分など。

 飛行機で凱旋門をくぐって、それをマスコミに売って一儲けしようとするマヌー(ドロン)とスポーツカーに載せる凄いエンジンを開発して、大会社からの特許の買い取りを狙うローラン(バンチェラ)、この二人が主人公。試験飛行の直前、ローランの自宅兼工場にレティシア(シムカス)がやってくる。廃車のボディなどを使ったオブジェを作っている、いわゆる前衛アーティストの彼女は、オブジェの素材を購入に来たのだが、人手が足りないので、急きょ試験飛行の手伝いをする。試験飛行は成功し、二人の男性に気に入られたレティシアは、オブジェの製作にこの工場の一角を貸してもらうことになった。ここが導入部。

 凱旋門の件は、誰かに騙されていた模様(この辺の事情はよく飲み込めなかった)で、決行日には大きなフランス国旗がはためいていて、くぐり抜け飛行は出来なくて、しかもマヌーは飛行免許まで停止になってしまう。
 騙したヤツをとっちめようとしたら、そいつが、コンゴ沖の海底にある富豪が飛行機もろとも墜落して、その時結構な金品も一緒に沈んだらしいという”宝の地図”話をする。
 マヌーとエンジン開発に失敗したローランと、オブジェの個展の評判が宜しくなかったレティシアの3人は、コンゴに宝探しに出かける。

(複葉機の曲芸飛行なんかが出てくるので、双葉さんは気に入ったんだろうか。)

 大きなヨットを借りて宝探しをしていると、一人の男が近づいてくる。最初は物取りかと思われたが、実はそいつは、件の墜落飛行機のパイロットだった。お宝の場所を教えるので、一緒に探そうという。
 しっかり場所を覚えていたので、飛行機もお宝も見つかった。しかし、そこにもう一組お宝を狙う連中がいた・・・。

 アラン・ドロン、リノ・バンチェラ、ジョアナ・シムカスの3人が、船の上で楽しく騒いでいるシーンは、クロード・ルルーシュ系列の描き方。「明日に向って撃て!」で、ニューマンキャサリン・ロスが自転車で遊んでいて、「雨に濡れても」が流れるシーンと同じ。しかし、何故かフランス映画のこの手の映像は、軽く感じられるなあ。
 意外と「明日に向かって撃て」はこれを参考にしたのかも知れない。

 前半は、ブツブツとカットが繋げてあって、映像にリズムがないと感じた。ストーリーがまとまっているので、最後までみれたが、人間の描き方が軽いですな。ジョゼ・ジョヴァンニの原作で、脚本もジョゼ・ジョヴァンニとロベール・アンリコピエール・ペルグリの3人で書いてる。

 ラスト、双葉氏によると、ギャング一味はあれで全滅したらしいのだが、機関銃まで持っていた連中のあれが全部であろうか。まだ、組織の上の人間がいるような気がするので、落ち着かない結末にも思えた。

 ジョアナ・シムカス、この頃は人気がありましたなあ。今は、どうしているんだろう。ネットで調べると、1945年カナダ生まれ。「冒険者たち」の他には「若草の萌えるころ(1968)」「オー!(1968)」などのアンリコ作品に立て続けに出て、1969年の「失われた男」で共演のシドニー・ポアチエと結婚した(ポアチエは再婚)。来年60歳になるんだね。

・お薦め度【★★★=一度は見ましょう】 テアトル十瑠
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

陽だまりのグラウンド

2003-08-31 | 青春もの
(2001/ブライアン・ロビンス監督/キアヌ・リーヴス、ダイアン・レイン)


 タイトルから思い浮かぶのはスポーツ青春映画だが、主演のキアヌ・リーブスの役は、ギャンブル狂いの青年コナー・オニール。
 ギャンブルの借金がたまってにっちもさっちもいかなくなったコナーは、友人にある少年野球チームのコーチをしてくれたら給料を払うと言われ渋々引き受ける。気乗りしない青年が、子供たちの意気込みに引かれ熱心になっていく、といえば何度も見飽きたシチュエーションだが、このコナーはそんなに引かれていっている感じはしない。ギャンブルにのめり込んでいる様子が何度も出てくるので、熱血先生ぶりはない。
 子供たちもスラムの黒人がほとんどで、そんなに野球に熱心でもないし、タイトルに偽り有りです。

 ダイアン・レインは小学校の先生役で、コナーは彼女に惹かれるがこの辺も筋書き通り。

 というわけで、取り立ててどうこういう作品ではありません。

・お薦め度【★=お薦めしません】 テアトル十瑠
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

17歳のカルテ

2003-06-16 | 青春もの
(1999/ジェームズ・マンゴールド監督/ウィノナ・ライダー、アンジェリーナ・ジョリー、ウーピー・ゴールドバーグ、バネッサ・レッドグレイブ)


 アンジェリーナ・ジョリーがアカデミー助演女優賞をとった作品ということでレンタルしてみました。タイトルからいわゆる青春映画のひとつかと思ったら、精神病院が舞台の実話が元ネタで、意外としっかりした2時間作品でした。映画館ではどうか分かりませんが、ビデオでは特にたるんだ所はなく、脚本も良くできていたと思います。
 スザンナ・ケイセンという女性の自己体験に基づく本の映画化。主演のウィノナ・ライダーがプロデューサーを兼ねています。

 1960年代の終わり頃の話で、オープニングにはS&Gの「♪旧友」が流れるし、ペトゥラ・クラークの「♪恋のダウンタウン」は主題歌のように使われているし、途中でザ・バンドも流れてくる。懐かしく、又、確かにあの頃は、こういう精神不安定な時代だったなあ、なんて思いました。キング牧師の暗殺事件がTVのニュースで流れたり、ベトナム戦争の徴兵があったりして。

 スザンナは高校を卒業したばかりだが、ある日アスピリンを一瓶、ウォッカと一緒に飲み込み病院にかつぎ込まれる。本人は自殺ではないというが、両親は彼女が日頃から情緒不安定なため、近くの有名な精神病院に入院させる。この病院には同じ様な年頃の少女達が入院していて、大体二人一組で個室が与えられている。ここで自殺する子もいるし、脱走を企てるものもいる。ひどい分裂症のような人は見当たらなかった。スザンナが、ここでの生活で色々な他人と関わり合い、また新たな自分の発見などして、精神的にたくましくなって退院するまでを描く。

 質の悪い「カッコーの巣の上で」の少女版だなんていう評価があります。「カッコーの巣の上で」は見よう見ようともう数十年思い続けて、未だに見ていないのでなんとも言えません。質はともかく、話としては一人の少女の成長記として、実話ながらよく出来たストーリーでした。前半で、フラッシュバック等を多用して入院するまでの経緯の説明があり、小気味よい編集でありました。

 上記の4人以外にも患者役で色々出てきて、やはりジョリーの演技を誉める批評が多いですが、ウィノナ・ライダーも上手かったと思います。しかし、ジョリーの表情は本当に父親(ジョン・ボイト)にそっくりでした。
 主人公の、高校を卒業しても進路がはっきりしないところや、同級生の父親であり、両親と親交のある夫婦の亭主と肉体関係をもつなんて話は、「卒業」に似ているし、「アメリカン・ビューティー」みたいでもある。自由ゆえの病んでるアメリカってところか・・・。

 ウーピー・ゴールドバーグよりバネッサ・レッドグレイブの方がもうけ役だったような気がします。冒頭にでてくる精神科の医者に「ロボコップ」の悪役が出ていました。あの人はこういう堅い役も多いですよね。

・お薦め度【★★★=アンジーの演技、一度は見ましょう】 テアトル十瑠
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

卒業

2002-11-14 | 青春もの
(1967/マイク・ニコルズ監督/ダスティン・ホフマン、キャサリン・ロス、アン・バンクロフト) 


 見直さなくてもコメントをかける作品のひとつです。
 日本では青春恋愛映画ですが、アメリカではコメディに入るようです。向こうはコメディといっても、ハチャメチャからシニカルなものまで幅広く捉えるみたいで、ただの青春映画としている方がちょっとどうかな?と私は思います。一歩引いて見れば、結構悲惨な話なんですよね。そこを、笑わせながらみせる。そこんとこの演出力がアカデミー賞を取らせたのでしょう。作品賞は「夜の大捜査線」にさらわれましたけど。

 アメリカン・ニューシネマの先駆けのひとつなんですが、青春まっただ中にいた私としては、主人公ベンジャミンに感情移入するところが多くて、なんともやるせない、胸のキューンとしてしまうところが多い作品です。それは、恋愛感情とは別で、大学は卒業したけれど、はてさてこれからどうしよう?というベンの気持ちです(私はそんな年ではなかったんですが、何故か共感出来たんですよね)。この時代はこういう先の見えないというムードをもった作品が多かったです。
 オープニングの、帰省してきた空港内部を移動するベンの横顔に、「サウンド・オブ・サイレンス」が流れているところから滲んできています。そして、次のカットの、自宅の自室のベッドに横になって所在なげにしている横顔にも・・・。

 原作では空港のシーンはなく、すぐに部屋のシーンになるんですが、空港の何気ない描写がこの映画の導入としてとても効果的だったと思います。

 ミセス・ロビンソンとの密会を決意させたのは、息子の気持ちに鈍感な両親に愛想を尽かしてからですが、それはプールの底でのつぶやきシーンに現れています。

 印象的なシーンは、ミセス・ロビンソンとの最初の密会で、ホテルのクローク(この映画の脚本も書いたバック・ヘンリー)とベンとのやりとり。ミセス・ロビンソンとのベッドで昔話をするとき。エレーンと最初のデートで喧嘩して仲直りしたときに、何か飲もうとそのホテルに誘われ、エレーンにそういう関係の女性がいたことがばれるところ。その相手が、自分の母親だとエレーンにばれるところ。
 しかし、ラストの、バスが出ていった後の二人の顔が、笑い顔からシリアスな顔になるところが一番印象的です。

 サイモン&ガーファンクルの数々のヒット曲がとても効果的でした。

 この後、ダスティン・ホフマンキャサリン・ロスの映画についてはよく観たものです。
 マイク・ニコルズ作品もこの後だいぶ追いかけましたが、「ワーキング・ガール」 まで、好きな作品は出てきませんでした。

2008年6月 再見記事 (“お薦め度”修正しました)
2010年2月 つぶやき記事から (動画付きです)
2012年10月 面白シーン from 「卒業 (1967)」 (動画付きです)

・お薦め度【★★★★=ユニークな人間描写、友達にも薦めて】 テアトル十瑠



[追記:2005.06.14 Tue]
 「奇跡の人」の記事のコメントに返事をしていて思い出したことがありました。
 「卒業」のベンジャミン役には、D・ホフマンの前にロバート・レッドフォードにも声がかかったらしいんですが、レッドフォードが『自分が童貞の青年を演じても説得力がない。』と断っていたとの事。ずっと昔に、映画雑誌で読みました。説得力があるかどうかは分からないが、あのD・ホフマンのとぼけた味は出なかったでしょうな。コメディタッチがなくなった、ただのほろ苦い青春映画になったりして・・・。
 K・ロスとレッドフォードの共演としては、「明日に向って撃て!」より早まるわけですがね。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

■ YouTube Selection (予告編)


■ Information&Addition

※gooさんからの告知です:<「トラックバック機能」について、ご利用者数の減少およびスパム利用が多いことから、送受信ともに2017年11月27日(月)にて機能の提供を終了させていただきます>[2017.11.12]
*
●映画の紹介、感想、関連コラム、その他諸々綴っています。
●2007年10月にブログ名を「SCREEN」から「テアトル十瑠」に変えました。
●2021年8月にブログ名を「テアトル十瑠」から「テアトル十瑠 neo」に変えました。姉妹ブログ「つれづる十瑠」に綴っていた日々の雑感をこちらで継続することにしたからです。
●コメントは大歓迎。但し、記事に関係ないモノ、不適切と判断したモノは予告無しに削除させていただきます。
*
◆【管理人について】  HNの十瑠(ジュール)は、あるサイトに登録したペンネーム「鈴木十瑠」の名前部分をとったもの。由来は少年時代に沢山の愛読書を提供してくれたフランスの作家「ジュール・ヴェルヌ」を捩ったものです。
◆【著作権について】  当ブログにおける私の著作権の範囲はテキスト部分についてのみで、また他サイト等からの引用については原則< >で囲んでおります。
*
テアトル十瑠★ バナー作りました。リンク用に御使用下さい。時々色が変わります。(2009.02.15)