日々の事から

日々のあれこれ
by Kirari

読書記録📖

2022-02-26 21:09:58 | 
『わたしの良い子』 寺地はるな 著 2022.2.26 読了

妹が産んだ男の子を姉が代わりに育てる話である。
姉はすごくドライな人で、人としてあるべき一般常識を他人に押し付けない性格のようだ。
私もそういう考え方には違和感を持つ方なので同調できるかと思いきや、『や。そこは言った方がいいんじゃない?』とか、『え、それでいいの?』と思う場面がしばしば。まあ、いろんな考え方の人がいるってことかね。小説だから、実際いるかもわからないし。
心配になるのは、妹の言動である。周囲の考えを押しきって父親のいない子を産んだ上に、姉に預けてなんで平気で好きなことやっているんだ。
完全に無責任な態度に腹が立つ。
あと、姉の学生の頃の同級生だった男。夫婦で地元に戻って子育てを始め、自分達は幸せで立派な家族ですアピールをするが、妻は完全に情緒不安定で娘も級友に意地悪をするっていう...
私も意地悪をする級友がいたが、親が理不尽を押し付けるとそうなるんだよねー。
親の前でお利口にしてる子って、本当に恐ろしい。
『わたしの良い子』なんて、そんな親の押し付けがましい子育て本かと思ったが、そうでなくってホッとした。
乳児から2年生になるまで母親が一緒に住んでくれなかった男の子が、2年生になって一緒に住めることになってどう成長するか心配になってしまうが、これは小説。
帰って来た母を一心に見つめる少年の眼を信じて祈ろう。


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2022-02-23 23:16:09 | 
『水を縫う』 寺地はるな 著 2022.2.12 読了

男の子が縫い物をしてはいけないの?
男の子が料理に興味を持っちゃいけないの?
男の子がピンクの服着ちゃいけないの?

そんな昨今のジェンダーとか話題になりそうな問いがしたくなる。
男の子が縫い物をしなかったら、王様の仕立て屋は女ばかりだった?
男の子が料理しなかったら、有名レストランのシェフは女ばかり?
男の子が明るい色の服を着たって、似合うと思うよ。

何も特別なことじゃない。
既に前から実績のある人たちが頑張ってるじゃないか。
偏見を持つ人は、心が狭いことに気づいてほしい。

小学生の頃、弟が赤い半ズボンをはいていたら、しつこくからかった男子がいた。
私は5歳年上なので、チビに対して酷かと思ったが、『そんなにしつこく言うなら、お前、大人になっても絶対赤いズボンはくなよ! ズボンだけじゃないぞ!赤いもの着るなよ!』と怒鳴り付けたことがあった。
色差別より、性根が腹立たしかった。
赤い半ズボンは、収入が少ない家計をやりくりした結果、母が弟に手作りしてはかせていたズボンだったのだ。
あいつ、赤を着ずに済んだんだろうか。訊いてみたいものだ。

話が逸れたが、この小説は素敵だ。
縫い物が好きな男子の話。
残念だったのは、この男の子の母が、夫の良さをカバーできず離婚しているところ。
でも、全体によくまとまっている。
家族というもの、それぞれ足りないところを補ってまとまった感じ。


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2022-02-23 22:57:47 | 
『蜜蜂と遠雷』上・下巻 恩田陸 著 2022.2.23 読了

ブームとなった時期は遥かに過ぎて手に取った。なぜなら、私、あまのじゃくで流行りものが嫌いなのだ。
確か、この本で恩田陸という作家を知り、興味を持ち、読もうと思ったんだったと思う。
素直に読み出せなかったが、どこかで最初の方を読み進んだ記憶はあった。立ち読みだっただろうか。
読んでしまうと意に反するので、縁があればまた読むだろうと思いつつ、面白さを感じ始め、あった場所に置き直したのを覚えている。

そうしてようやく今、手に取った。
かつて、どこまで読んだのだろう...と思って読み始めたら、意外にも40ページくらいは読んでいた。どこでこんなに読んだんだろう? 立ち読みにしては結構読んでいる(笑)
初めて接する小説家の本の選び方は、急に開いたページの文が面白味を感じるか、読みやすい言い回しか、で決める。
恩田さんは聞いてはいたものの情報がなく、おっかなびっくり手に取った。
てっきり男性だと思っていた。
冒頭で面白味を感じても1冊通して読めない人もいるなか、恩田さんは裏切らなかった。
時々間延びした小説もあるが、それは私の感覚が悪いのだろうと思っている。多分、書かれている方面の知識がないのだろう。
間延びと感じる部分の良さを語ってくれる人がいるといいんだけど...

蜜蜂と遠雷は、裏切らないストーリーだった。緩急あり、引き込まれる部分があり。何より良いのは、天才的才能を自然に書いてくれているところ。
個性や資質はきっかけによって伸び幅が変わると私も信じている。
そういう考え方を『根拠がない』と否定しない感じがすごくいい。

人には無限の可能性がある、と思わせてくれる夢のある小説だ。
実際、そんな世の中ならいいのにね。
才能があっても、傍にいる大人がそうでないとそのまま埋もれて死んでいく。
活かされたい才能に気づかず過ぎていく平凡な人生。もったいないこと、この上ない。
大したことがない自分をアピールする場合もある。あれは痛々しい。

分厚い本なので、間に数冊読んでいる。時間のあるときにじっくり読むといい。






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2022-02-13 15:38:13 | 
『バスクル新宿』 大崎梢 著 2022.2.12 読了

大崎さんの『めぐりん』シリーズかと思って手に取った。めぐりんっていうのは、移動図書館のこと。それを運営する側と借りる側の些細な推理もので、本当に推理小説が好きな人だと物足りないかも知れないけど、日常のなかにある『あれ?』っていう感覚とそれに気づくか、それに関わるか、それを解明するか、何てことは誰にでもあるもので、それを、うまくストーリーにできるのが大崎さんだと思う。結構読みごたえがあると思っている。
時々、小説だからできる展開があったりして、そこが分かるのも面白いし、まあ、小休止的な気分で読んでもいいかもしれない。

今回のバスクル新宿というのは、新宿にある各地方向けのバスの発着ターミナルを中心に、利用者それぞれの物語が少しずつ書かれ、最後に合わさる流れである。
ここも自分で読み進むと、あれ?短編なのか?と思うので、本当はネタバレさせちゃいけないんだけど。
キーパーソンも出てくる。
大崎さんは各登場人物の絡ませ方と背景の盛り込み方が本当にうまい。

今回も大いに読みごたえある本なのでぜひ読んでみてほしい。


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2022-02-06 16:50:12 | 
『今日のハチミツ、あしたの私』 寺地はるな 編 2022.2.5 読了

結末まで読めば、偶然が重なった展開と思う。でも、読み始めに主人公・碧が中学でいじめを受け、人を避けていた時期に会った子連れの女性が人生の支えになったことで彼女の生き方も変わったことに安堵する。
中学生は残酷だ。
小学生...つまり、ガキの性質が抜けきらないうちに、周囲から大人の準備に引き込まれるから、いじめもゲーム感覚でやる奴がいる。
表向きは普通に過ごしているようで、他人を思いやる力のない人間がたくさんいる。
学力がある人間は高校へ行けば、学力が同じくらいの集団になるから少し落ち着くこともある。

読み進んで、碧に恋人ができていて安心した。そういう人間関係も築けない人はたくさんいる。
でも、相手に思ったことが言えない関係って言うところがつらい。
遠慮遠慮、相手の望まない言葉...そういう積み重ねが大きな鬱憤を生じる。
少しこっちが気づかないふりすれば良いから...そう思う人は多いと思う。
でも、そういうのってホントじゃないよね。
私が以前付き合っていた男性が少々常識はずれで、一緒にいて恥ずかしいってことが多かった。その場で他人のふりをしたり、年齢的に未熟なんだな...と思ってやり過ごしていたが、向こうはこっちをどんどん非難するようになる。
あんたの方が恥ずかしいわって言い返せば身も蓋もないので黙っていたが、黙っていれば、こっちの事がイラつくようになったらしい。
そうなったら別れるのが一番だ。話にはならない。『なんか言ってみろよ』 とか、ドラマのようなセリフを思い描くが、言っても反感持つだけで直りはしないから。結婚をゴールに擂るならなおのこと別れた方がいい。
日本はまあ、離婚するまで一緒にいないといけないから、早々に目につくことは長年我慢ならないと思われる。
こっちがどんなことを我慢しているかも知らずに、こっちの不満な点をあげつらう人間などお呼びではない。

この本は、主人公の分別と我慢の境目を絶妙に書いている。だいたい、自信がなくて行動できない奴が恋人にフォローを頼るって構図は馬鹿馬鹿しいのだ。
相手がこっちの支えもできていれば別だけど。
恋人の安西は、決めつける父親を恐れ、毅然とした態度が取れない。
ワンマン親父はたくさんいると思うけど、周囲にもそうしろっていう態度は許せんね。
安西が勝手にもう終わりだって碧に告げるが、相手が見えていない男だなって思う。

碧は思うように行動してえらいと思う。友達の真百合も友達甲斐があるね。
あと、冒頭で出る場面。これはこの小説にどう出てくるのか。
これは読んでみて欲しいね。
なかなか読みごたえのある展開だった。
素晴らしい人間だけが出てくる訳じゃないところがいいね。

出版社は角川春樹事務所。


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