日々の事から

日々のあれこれ
by Kirari

読書記録📖

2021-09-20 18:22:58 | 
『雨夜の星たち』 寺地 はるな 著 2021.9.20読了

230ページ弱の小説なので、休日なのをいいことに未明3時まで読み通してしまった(笑)
周囲と感覚が違うことを悩む主人公三葉雨音が、前職をやめて引っ越してきたアパートの大家に、やってみないか?と持ちかけられて始めた介護サービスの人間模様。
現代は子育てもそういう時間いくらのサービスがあるくらいなので需要があると思う。身内に頼みづらくても、他人にお金を出した方が頼みやすいという心理があるようだ。
確かに、遠くの親戚より隣の知人...っていう言葉もあるくらいだもんね。育児は相手が心配で使わなかったが、介護なら私も利用する口かもしれない。実際、同居してるが仲が芳しくない嫁の代わりに介護タクシーを頼めないかと思っているもんね。
腰が90度曲がった義母を車で通院に送らないことを悩まない人間はいるのだ。
生活上、困っている老人は多いんじゃないだろうか。

三葉は、さっぱりした性格である。融通がきかないともいう。人の想いを酌んだりすることがない。
私もそういう性格が元だから解らないではないけど、周囲の反応を見るにつけ矯正せざるを得ず今に至る。
何で他人の気にすることを酌んであげなきゃならないの?って思う。でも、世の中はそうしないと人間関係がうまくいかなかったりする。私はメンドクサイ空気が嫌で妥協してきた。
クレーマーなんかもそうだろう。人に譲歩できないから堂々と嫌な場面を展開できる。回転寿司で、隣に座った女二人は凄かった。喉頭ガンなのか、頼んだ味噌汁の温度が温すぎると言って3回も呼びつけて取り替えさせていた。『大丈夫か?この店。』と言い続け、温度を感じない自分が危険とは思わないようだった。
三葉はそれほど嫌なやつだとは思わない。こういう商売は、際限なく、して欲しいことを言い出す気がするから、割りきった方がいいと思うし。

雇い主の家主との関わりも面白い。こういう性格で困っている人もいるだろうから読みごたえはある小説だ。
展開が気になって読みふけってしまったぐらいだもの。
もう少し周囲に合わせた方が過ごしやすいかもしれないが、まあ、三葉らしく生きていけばいいね。



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2021-09-20 18:01:21 | 
『正しい愛と理想の息子』 寺地 はるな 著 2021.9.19読了

寺地さんの書く、珍しくフィクションらしいフィクションだった(笑)
ドキュメンタリーじゃないので、そりゃどれもフィクションなんだが、小さい頃から悪い親に詐欺師紛いのことをさせられて、悪い仲間と詐欺を働いて生きているハセもどこか素直だし、ハセが何かと庇う沖という後輩も、常識がないと言えばないが、相棒として仕事をさせてもどんくさいところがあったり、厳しかった母が認知症になっていくのを見ていられなくなり、世話をしてやっているところなんか、本当に素直で好青年である。
私が昔住んでいた団地には、環境に恵まれない子供たちが何人もいた。
金はあるが親の愛がない家では、子供が存在価値を探るあまりチンピラ紛いの生活をしていたり。
みんないいやつなのに、本当に育った環境が悪かった。気の毒なことだ。

貧乏でも心は錦、である。
貧乏しててもしっかり勉強して志を高く持っていればいつか実が成る。そういう忍耐がやつらにはなかった。
面倒を見る大人がいればうまく育ったかもしれない。私が接する時もそう感じて、色眼鏡はかけなかったから仲良くできていた。
この小説の二人も、いい親に恵まれていれば曲がったことをやっていかずに済んだのになあ。

フィクションだと感じるのは、本当のチンピラならもっと性格が嫌らしいってことだ。ねちっこくずる賢い要素が含まれる。隙を見せればいつまでも絡み付かれる。
そんな空気がない分、無難な小説に仕上がっている。
中学まで点在する団地の学区に住んでいたので、友達を選ばないと平穏な毎日は過ごせなかった。悪どいやつはとことん悪どい。

ハセと沖は普段は清掃や介護施設で働くなど根はいいやつなので、これからは恵まれた人生に成るといい。意に反して恵まれない家庭に生まれた私の同級生たちも、今後は幸せな人生になっているといい。


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2021-09-18 20:33:09 | 
『ぼくの守る星』 神田茜 著 2021.9.18 読了

主人公の翔(かける)は中学生。生まれつき一般的な情報を覚えにくい障害を持つ。
親は、自分の息子は素晴らしい才能を持つはずだ、としか思っていないので、本人は随分悩んでいたようだ。
自分の身近にも時々いたが、天然と言われるああいう人のことをいうのだろうか?
彼を天然としか思っていない山上という友人が一緒に漫才をやろうって誘ったりしたお陰で、クラスからはそんなに浮かずに済んだのではないだろうか。
逆に女子の中で大人しくて浮いていた女子とコミュニケーションを取ったりするところが素晴らしい。
周囲が意味するところが汲めないために、勉強もなかなか思うように進まず苦労しているが、偏見なく人と接することができる人間は素晴らしい。
今の職場に、まずいところを何度も何度も言って孤立させようとする男性がいるが、そんな人間は本当に醜い。いじめ体質なんだと思うが、明らかに逸脱したことをしているわけでなく、単にお互いの声かけをすれば済むことだ。偏見は最初の自分の疑問が解消されていないことから始まり、勝手な憶測が増幅すると思う。後は個人の意地の悪い性格か。
あと、いつも疑問なんだが、大人しい人間を輪に入れない世の中の人たち。大人しい人間は、周囲に怯えて声が出せない訳ではない。まあ、中には生活環境のせいで怯えてる子もいるだろうけど。
どちらかというと、周囲が空気が読めずにいつまでも騒ぐとか、テンションが違いすぎて一緒に居たくないとか、話題の内容に興味がないとかっていう理由なだけだ。図に乗って虐めたりしていると、後で後悔することにも繋がるから気を付けた方がいいんじゃない?
その人を観察し、ちゃんと判断して接してほしいものだ。いつも騒ぐとか、主導権握りたい人間って思慮深くないからメンドクサイ。
翔はそういう差別をせず、大人しい まほりちゃんの性格をしっかり掴んで仲良くなっていく。いっそ、将来、結婚できるといいのにね。

小説では、いろんな出来事が起こり、それを体験する翔の成長が頼もしい。
知識が薄いことは、世の中で生きるには不利なことも多いが、彼なら正面からぶつかって解決できるだろう。現実ではそううまくはいかないが、清々しい小説だと思う。



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2021-09-12 02:14:37 | 
『ふたり』 神田茜 著 2021.9.11 読了

ここに感想を書いてしまうと内容が分かってしまってつまらないけど、読み始めは、性格の違うクラスメイト同士のストーリーかと思った。粗雑な女子と真面目な女子との。
読み進むうち、どうやら二重人格の人の話なのが分かってきた。
そして、それが話が進むと、実はもっと幾人かを形成している。
その人体の持ち主は『ちえ』。幼少期のつらい体験により、人格の分離が起こってしまったようだ。

私も軽く二重人格だと思う。親が厳しくて結婚するまでは緊張を強いられる生活だったため、つらい部分は他人事のように切り替える術が身についた。
私はたまたま人格分離まではせず、叱られていても態度では相手に反省しているように見せることでその場をやり過ごすことができたから、この形で済んだのかもしれない。
てっきり双子座生まれだから二面性があるのかと思って生きてきた(笑)
パッと見、『おとなしい人』に見える風貌らしいので、そう感じる人にはイメージを壊さないように接する。ズルいようだが仕方ない。そうしないと『そういうとこ、あるんだ』って、さもガッカリしたかのように意見されてメンドクサイ。あんたに私の何が解ってんの?と言いたいが、見透せない人間とはそれだけの付き合いだから構わないのだ。
親兄弟だってそう思ってるようだから、それでいい。自分の理想の姿まで押し付ける相手にはそう接するしか仕方ないのだ。
厳しい親に言いたいが、あんたらのエゴを押し付けるな、ということ。子供は小さい人であり、生まれた時から既に個性がある。
人として生きる術を伝えるのは親の役割だが、子供の個性を無視することは許せない。傲慢だ。個性を良く引き出すことが役割だと思って子育てしてほしいものだ。

私の本来の性格である『活発さ』を知ってる知人とは、気兼ねなくそういう自分で接する。やんちゃな部分を出してもそのまま受け入れてくれるから とても楽だ。楽しいなって思える。そういう時間が一番自分らしいと思う。
申し訳ないが普段も相手で態度を変化させるので、だんなには『八方美人』だと言われたことがある。仕方ないじゃん。相手が気分よく居られないらしいからさ。

私のは、自分の知らないところで切り替わらずコントロールできるから、『多重人格』とは診断されないだろう。
でも、人格形成上は自分でも切り替えちゃってるなって分かってるもの。多かれ少なかれ誰でもやってるとは思うけど。

この小説は、ちえという女性が完全に分離した人格を一人にするまでの苦しみが書かれている。
面白い部分もあり、読みごたえある1冊だった。




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2021-09-12 02:11:26 | 
『ムーンライト・イン』 中島京子 著 2021.9.5頃 読了

人にはいろんなラブストーリーがある。主人公は東京での生活に疲れて寂れた高原観光地にやって来た若い男性か?
登場人物全員が主人公かもしれない(笑) 冒頭で男性の人生の展開が始まると思ったら、導入の素材だけのようにも扱われているし。
夜になると人気がない駅周辺をさ迷うが、住む人のない家ばかりで困っていたら、ある家の灯りが見えた。
これが彼の人生の岐路だった。
訪れた家には初老の男性と女性、中年の女性と若めの女性の4人が住んでいた。
初老の男性が気がいいため、暫く住まわせてもらえるようになったが、毎日いろんな出来事があり、また、住まう人たちのそれぞれの事情から来るそれぞれのストーリーが挟まり、この小説の面白味となっている。
若い女性はもうじきビザの期限で帰国せねばならないフィリピン人。ある意味さっぱりとした性格で、片言のような日本語が想像できて、ストーリーにいい味を加えている。
中島京子さんの小説は、淡々と話が運ぶ部分と、人間味ある部分、なんだかドライな部分が合わさっての独特さがある。そこがいい。
この小説は5人のそれぞれの都合が随所で絡み合い、面白いものができている。
ぜひ続編も書いてほしい作品と感じた。
小説の中身は、どうぞ一度読んでみてくださいね(*´・ω-)b



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