「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の、(現在僕が所有している)15のヴァージョン。
その、間奏のYUI・MOAの「バトル」をあらためて観なおしてみよう。
BABYMETALの演奏(楽器隊)の際立った特徴が、超絶的な安定性、だ。
ライヴにおいて、その場その場のフィーリングに任せた演奏を(放埓に)行なうのではなく、とんでもない速さの重爆音を一糸乱れずに演奏し続ける。それも、ライヴならではのドライヴ感をいきいきと纏わせながら。
それは、SU-・YUI・MOAの舞踊を支えるための必然、だ。
ソロ(「Mischiefs of metal gods」や「Catch me if you can」のアタマ)を除いては、神バンドはその超絶的な演奏技術をあくまでも舞踊を支えるために使用し、舞踊に奉仕するバックバンドに徹する。
(この関係性が、とりわけおやじメタルヘッズたちの、胸を熱くするのだろう。)
また、SU-・YUI・MOAの舞踊そのものも、細部まで彫琢されたものであり、何度繰り返し見ても(繰り返し見れば見るほど)、その精密な工芸品のような完成度に、目を奪われる。(とりわけ、YUIMETALの動きには、たびたび唖然とさせられる。例えば『赤い夜』の「ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト」のゾンビ・ダンスの手足の動きは、アニメーションの早送りとしか思えないとんでもない高速で動く。なんじゃ、こりゃ、と、ゾッとしてしまう。童顔とのギャップがありすぎる。…顔と動きとのギャップ?って論理的には意味不明だが、でも、実際にそう感じてしまうのだ)
BABYMETALの「演」奏とは、楽器隊も舞踊も、その日その日のインプロヴィゼーションではほとんど全くなく、むしろ「完璧」な再現を指向するものだろう。
もちろん、型にはまった「完璧」をめざすために動きが死ぬ、などということはない。溌溂とした「生」の動きにおいて、理想形としての「完璧」へと、求心的に七人が高度な技術を組み合わせ「演」じる、というものだ。(と書いたが、実は、かなり開放的な自由を感じさせもするのだが。このへんの魔術についてはまたいつか考察してみたい)
そうしたBABYMETALの「演」奏のなかで、ダントツに即興性の高い箇所が、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」での、YUI・MOAのバトルだ。
もちろん、2人での掛け合いだから、全くのその場での即興ではなく、あらかじめ打ち合わせはするのだろうが、他の曲やこの曲の他のパートの音や舞踊の動きがきっちりとできあがっているのに比べると、たいへん自由度が大きく、今度の「演」奏はどんなだろう、とワクワクさせられる最大の要素だ。
(近年は、デフォルトとも呼べる、ある基本形はあるようだが、それも順を追って考えていこう)
BABYMETALの「演」奏の、インプロヴィゼーション、アドリヴ。それは、楽器隊以上に、YUI・MOAが担っている。いわば、完璧な「演」奏の、フリルの役割を、YUI・MOAは果たしているのだ。
「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の、三人がサムアップで歩み寄り、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」とポーズを決めた後からが、YUI・MOAの「バトル」であり、SU-METALが仲裁(?)に入るところまで、16小節ある。
(以前の回で、パートⅤ 間奏その2 14:J バトル(8小節)左右入れ替わる(8小節)と記していたところだ。)
「バトル」は、さらに4分割すると、その構造をつかみやすい。
基本の動きは次のようになっている。
a.4小節( C#m |A B|C#m |E G#m/D# )
a① MOAの攻撃をYUIが受ける a② YUIの攻撃をMOAが受ける
転調し、
b. 4小節( Fm |D♭ E♭|Fm |A♭ )
b① MOAの攻撃をYUIが受ける b② YUIの攻撃をMOAが受ける
c.4小節( D♭ | E♭| A♭ |Cm )
c YUI・MOAが剣豪どうしの睨みあいのように間合いをはかりながら、左右入れ替わる
d.4小節( D♭ | E♭| Fm |E♭ )
d MOA・YUIが両側からパンチ・キック・キツネサインのさざれ打ち
この後、SU-METAL(a①の第一拍のギターの音に合わせてダメポーズをしたままdまで動かないでいた)がYUIにキック→YUIがダメポーズで受けとめ、MOAにキック→MOAがダメポーズで受けとめ→3姫のダメ・ジャンプのユニゾン→MOA・YUIがクルクルと独楽廻り
で間奏終わり、「いとしーくてー」と続く。
間奏前半の、abcdをここでは「バトル」と呼んでおくが、そのなかでcd(「バトル」後半)はどのヴァージョンでもそう変わらないように見える。
ヴァージョンごとに(時には全く)異なるのが、abだ。
a①での、MOAの攻撃の仕方、それのYUIの受け方(尻餅をつくか?)
a②での、YUIの攻撃の仕方、それのMOAの受け方(尻餅をつくか?)
b①での、MOAの攻撃の仕方、それのYUIの受け方(尻餅をつくか?)
b②での、YUIの攻撃の仕方、それのMOAの受け方(尻餅をつくか?)
このように書くと、aとbとは対称的(リフレイン)になっているように見えるが、転調をしているので楽曲としても単純な繰り返しではないし、「バトル」の動きは全く異なる。
以前にも書いたが、本当にこの曲は、様々なパーツが精緻に複雑に組み合わされたプログレ(それでいて、冒頭からラストまで一つの世界観を保ったまま疾走する哀愁のスピードメタル)なのだ。
(尻餅をつくか?)と書いたのは、これが、BABYMETALの舞踊の大きな特質のひとつだと感じるからだ。音楽番組などでたまたま目にする他のアイドルの振りやダンスユニットのダンスと、BABYMETALの舞踊の大きな違いのひとつに、この”地べた”との関係がある。
Resistance、という概念とも関わるだろうし、YUI・MOAの舞踊がヘヴィメタルの「演」奏だ、という実感の基礎にもなっているのが、”地べた”に崩れ落ちたり、這いつくばったり(例えば、土下座ヘドバン)、寝そべったり(例えば、ドキモ)という、動きだ。
いわば、泥臭い、あえて言えばダサい、野蛮な、動き。
都会風の洗練されたフェミニンな優雅なダンスではなく、ヘヴィ・メタルを少女の身体の動きによって「演」奏している、そのことが、とりわけ鮮明になるのが、”地べた”に身体ごと触れ合うさまざまな動きだ。
その典型的なひとつが、ここでの尻餅(あるいは、つんのめり、等、身体を地べたに乗せる動き)だし、「バトル」の肉体表現としての説得力(リアルというのは言い過ぎになるだろうが)を感じさせるものだ。
これは全くの個人的印象だが、この尻餅は、初めから、<尻餅をつく振り付け>として練習を重ねた、ということではないように思う。
<尻餅をついてもいいから、本気で闘う(本気で攻め、本気で逃げる)>というコンセプトのもとの、YUI・MOAのインプロヴィゼーションによる「演」奏が、結果的に尻餅(やつんのめり)になっている、というように見える。
言うまでもないが、本気の「バトル」を振り付けにした、本気で戦う美少女という舞踊は、アイドルにもヘヴィメタルバンドにもない、BABYMETALの唯一性だ。
「カワイイ(kawaii)」の究極形(のひとつ)が、このYUI・MOAの「バトル」なのだ。
長文になるので、ヴァージョン1からの具体的な分析(「バトル」の変遷)は、次回(以降)きちんと順を追って考えてゆく。
その、間奏のYUI・MOAの「バトル」をあらためて観なおしてみよう。
BABYMETALの演奏(楽器隊)の際立った特徴が、超絶的な安定性、だ。
ライヴにおいて、その場その場のフィーリングに任せた演奏を(放埓に)行なうのではなく、とんでもない速さの重爆音を一糸乱れずに演奏し続ける。それも、ライヴならではのドライヴ感をいきいきと纏わせながら。
それは、SU-・YUI・MOAの舞踊を支えるための必然、だ。
ソロ(「Mischiefs of metal gods」や「Catch me if you can」のアタマ)を除いては、神バンドはその超絶的な演奏技術をあくまでも舞踊を支えるために使用し、舞踊に奉仕するバックバンドに徹する。
(この関係性が、とりわけおやじメタルヘッズたちの、胸を熱くするのだろう。)
また、SU-・YUI・MOAの舞踊そのものも、細部まで彫琢されたものであり、何度繰り返し見ても(繰り返し見れば見るほど)、その精密な工芸品のような完成度に、目を奪われる。(とりわけ、YUIMETALの動きには、たびたび唖然とさせられる。例えば『赤い夜』の「ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト」のゾンビ・ダンスの手足の動きは、アニメーションの早送りとしか思えないとんでもない高速で動く。なんじゃ、こりゃ、と、ゾッとしてしまう。童顔とのギャップがありすぎる。…顔と動きとのギャップ?って論理的には意味不明だが、でも、実際にそう感じてしまうのだ)
BABYMETALの「演」奏とは、楽器隊も舞踊も、その日その日のインプロヴィゼーションではほとんど全くなく、むしろ「完璧」な再現を指向するものだろう。
もちろん、型にはまった「完璧」をめざすために動きが死ぬ、などということはない。溌溂とした「生」の動きにおいて、理想形としての「完璧」へと、求心的に七人が高度な技術を組み合わせ「演」じる、というものだ。(と書いたが、実は、かなり開放的な自由を感じさせもするのだが。このへんの魔術についてはまたいつか考察してみたい)
そうしたBABYMETALの「演」奏のなかで、ダントツに即興性の高い箇所が、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」での、YUI・MOAのバトルだ。
もちろん、2人での掛け合いだから、全くのその場での即興ではなく、あらかじめ打ち合わせはするのだろうが、他の曲やこの曲の他のパートの音や舞踊の動きがきっちりとできあがっているのに比べると、たいへん自由度が大きく、今度の「演」奏はどんなだろう、とワクワクさせられる最大の要素だ。
(近年は、デフォルトとも呼べる、ある基本形はあるようだが、それも順を追って考えていこう)
BABYMETALの「演」奏の、インプロヴィゼーション、アドリヴ。それは、楽器隊以上に、YUI・MOAが担っている。いわば、完璧な「演」奏の、フリルの役割を、YUI・MOAは果たしているのだ。
「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の、三人がサムアップで歩み寄り、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」とポーズを決めた後からが、YUI・MOAの「バトル」であり、SU-METALが仲裁(?)に入るところまで、16小節ある。
(以前の回で、パートⅤ 間奏その2 14:J バトル(8小節)左右入れ替わる(8小節)と記していたところだ。)
「バトル」は、さらに4分割すると、その構造をつかみやすい。
基本の動きは次のようになっている。
a.4小節( C#m |A B|C#m |E G#m/D# )
a① MOAの攻撃をYUIが受ける a② YUIの攻撃をMOAが受ける
転調し、
b. 4小節( Fm |D♭ E♭|Fm |A♭ )
b① MOAの攻撃をYUIが受ける b② YUIの攻撃をMOAが受ける
c.4小節( D♭ | E♭| A♭ |Cm )
c YUI・MOAが剣豪どうしの睨みあいのように間合いをはかりながら、左右入れ替わる
d.4小節( D♭ | E♭| Fm |E♭ )
d MOA・YUIが両側からパンチ・キック・キツネサインのさざれ打ち
この後、SU-METAL(a①の第一拍のギターの音に合わせてダメポーズをしたままdまで動かないでいた)がYUIにキック→YUIがダメポーズで受けとめ、MOAにキック→MOAがダメポーズで受けとめ→3姫のダメ・ジャンプのユニゾン→MOA・YUIがクルクルと独楽廻り
で間奏終わり、「いとしーくてー」と続く。
間奏前半の、abcdをここでは「バトル」と呼んでおくが、そのなかでcd(「バトル」後半)はどのヴァージョンでもそう変わらないように見える。
ヴァージョンごとに(時には全く)異なるのが、abだ。
a①での、MOAの攻撃の仕方、それのYUIの受け方(尻餅をつくか?)
a②での、YUIの攻撃の仕方、それのMOAの受け方(尻餅をつくか?)
b①での、MOAの攻撃の仕方、それのYUIの受け方(尻餅をつくか?)
b②での、YUIの攻撃の仕方、それのMOAの受け方(尻餅をつくか?)
このように書くと、aとbとは対称的(リフレイン)になっているように見えるが、転調をしているので楽曲としても単純な繰り返しではないし、「バトル」の動きは全く異なる。
以前にも書いたが、本当にこの曲は、様々なパーツが精緻に複雑に組み合わされたプログレ(それでいて、冒頭からラストまで一つの世界観を保ったまま疾走する哀愁のスピードメタル)なのだ。
(尻餅をつくか?)と書いたのは、これが、BABYMETALの舞踊の大きな特質のひとつだと感じるからだ。音楽番組などでたまたま目にする他のアイドルの振りやダンスユニットのダンスと、BABYMETALの舞踊の大きな違いのひとつに、この”地べた”との関係がある。
Resistance、という概念とも関わるだろうし、YUI・MOAの舞踊がヘヴィメタルの「演」奏だ、という実感の基礎にもなっているのが、”地べた”に崩れ落ちたり、這いつくばったり(例えば、土下座ヘドバン)、寝そべったり(例えば、ドキモ)という、動きだ。
いわば、泥臭い、あえて言えばダサい、野蛮な、動き。
都会風の洗練されたフェミニンな優雅なダンスではなく、ヘヴィ・メタルを少女の身体の動きによって「演」奏している、そのことが、とりわけ鮮明になるのが、”地べた”に身体ごと触れ合うさまざまな動きだ。
その典型的なひとつが、ここでの尻餅(あるいは、つんのめり、等、身体を地べたに乗せる動き)だし、「バトル」の肉体表現としての説得力(リアルというのは言い過ぎになるだろうが)を感じさせるものだ。
これは全くの個人的印象だが、この尻餅は、初めから、<尻餅をつく振り付け>として練習を重ねた、ということではないように思う。
<尻餅をついてもいいから、本気で闘う(本気で攻め、本気で逃げる)>というコンセプトのもとの、YUI・MOAのインプロヴィゼーションによる「演」奏が、結果的に尻餅(やつんのめり)になっている、というように見える。
言うまでもないが、本気の「バトル」を振り付けにした、本気で戦う美少女という舞踊は、アイドルにもヘヴィメタルバンドにもない、BABYMETALの唯一性だ。
「カワイイ(kawaii)」の究極形(のひとつ)が、このYUI・MOAの「バトル」なのだ。
長文になるので、ヴァージョン1からの具体的な分析(「バトル」の変遷)は、次回(以降)きちんと順を追って考えてゆく。
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