南の海のワナビ

小説家を目指す「南野海」の野望ははたして達成されるのか?

「ボトルネック」はちょっと痛すぎ

2007-08-25 14:18:07 | 読書
 ちょっと前の記事にも書いておきましたが、米澤穂信さんの「ボトルネック」読了しました。
 ううむ。これ、ミステリーじゃねえ。
 そもそもこれに出てくる青春は、今まで米澤穂信が描いてきた青春じゃねえ。
 なんかそういう感想を持ってしまいました。
 なんていうか、痛すぎます。しかもまちがいなくそれを狙ってやっている。
 まあ、版元が今まで書いたことのない新潮社ですから、担当の編集者の意向か、あるいは米澤さん自身が今までとちがうことを積極的にやろうとしたのかわかりませんが、今までの作品の中でもっとも異色です。
 この物語は絶望が漂っています。
 しかも、ラストにそれが消え失せるどころか、クライマックスからラストシーンにかけてたたみかけるように主人公を絶望が襲います。
 これはないだろうと、思わず言いたくなってしまいます。

 っていうか、そもそもこの本の帯にはこんな台詞が書かれてありました。

 懐かしさなんかない。爽やかでもない。
 若さとは、
 かくも冷徹に痛ましい。
 ただ美しく清々しい青春など、どこにもありはしない――。

 まさしくそのとおりの内容です。
 これはある意味、今まで書いてきた他の物語の否定とも取れる言葉で、そういう内容のものにあえてチャレンジしたんでしょう。

 いや、つまらないわけじゃありません。十分おもしろい話だと思います。
 ただ、今までのファンの中には拒否反応を示す人も少なくないかもしれません。
 それほどラストは衝撃的です。

 物語は、主人公がパラレルワールドに移動してしまうことからはじまります。
 そこには自分が存在せずに、かわりに死んだはずの姉が生きている。
 しかしちがっているのはそれだけではありませんでした。
 崩壊した家族が、こっちの世界ではうまくいっている。
 死んだ兄がこっちでは生きている。
 他にも、つぶれた店がやっていたり、なにより、死んだ恋人が生きている。
 そういう話です。
 
 そして、なぜ、世界がそれだけ変わったのか? 自分はなぜこっちの世界に来たのか? その謎がクライマックスに解き明かされます。

 ……痛いです。

ボトルネック
米澤 穂信
新潮社

このアイテムの詳細を見る




ブログランキングに一票お願いします
  ↓ 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする