南の海のワナビ

小説家を目指す「南野海」の野望ははたして達成されるのか?

米澤穂信のミステリー最高傑作は「犬はどこだ」だと思う

2007-08-07 22:19:24 | 読書
 角川学園大賞でデビューして、今や青春ミステリーの分野ではトップクラスの米澤穂信さんの最高傑作はなんだろうと考えたところ、キャラクター小説としては「小市民シリーズ」、ミステリーとしては「犬はどこだ」ではないかというのが南野の考えです。

 「犬はどこだ」をちょっと読み返してみたんですが、ふたつの事件が微妙に絡み合いつつ、意外な展開を見せるこのストーリーはすばらしく、密室殺人も、アリバイ崩しも、見立て殺人も出てきませんが、ミステリーとしてはじつにすばらしいと思います。
 キャラとしても、体をこわしてリハビリのために探偵をはじめた(もともとは犬探しのはずだった)紺屋長一郎と、ハードボイルドにあこがれるフリーター、ハンぺー(半田平吉)のふたりのコンビはなかなか楽しいです(美少女成分が抜けてますが)。
 この人のテイストはライトノベルのそれとはやはりどこかずれていて、一般ミステリーの分野に移ってきて正解だったような気がします。
 無理にライトノベルを意識して書いた、古典部シリーズよりも、東京創元社で出しているシリーズのほうが面白いと思います(内容はあまり変わらないという気もしますが)。
 とくに、ミステリーとして見てしまうと、やはり「犬はどこだ」は古典部シリーズなどよりはるかに出来がいいとしか言えません。
 たとえば、第一作目の「氷菓」などは、ちいさな事件の短編集なのですが、やはり小粒な感じがしますし、なによりタイトルになった氷菓の意味が、これはないだろうって感じです。
 もっとはっきり言うならば、おまえは郁恵ちゃんかと?
(若い人には意味不明かもしれませんが、むかし「夏のお嬢さん」という曲がありまして……)

 「犬はどこだ」の主人公コンビは、年齢がすこし上なため、他の作品に比べれば、青春成分が不足かもしれませんが、南野などから見ると、ドロップアウトしたサラリーマン(彼の場合は銀行員)は、ちょっと変な高校生より感情移入できてしまうのです。
 ただ一般的にはキャラのおもしろさとしては、小市民シリーズの方が上かもしれません。ちょっと現実離れしてますが、やっぱりあのふたりは見ていて楽しいですからね。

 ライトノベルから入った十代の読者のかたには、ちょっと取っつきにくい話かもしれませんが、ぜひ読んでみてください。
 おもしろいですから。

犬はどこだ
米澤 穂信
東京創元社

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