何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

世代と世界をつなぐⅠと愛

2018-06-13 17:00:00 | 
「passion for anonymity①」 「知性に裏打ちされた’’愛’’」 「passion for anonymity②~根っこはⅠ心は愛」より

「passion for anonymity①」の末尾で、(非力ながら)理念を記しておきたい」などと書いたが、改めて本を読み返し、何かを記そうとすると、ネット上の怪しげな動きが脳裏をかすめ、なかなか言葉が浮かばない。

例えば戦後の日本の外交指針である「吉田ドクトリン」について勿論 詳細に書かれているが、それが役割を終え新たなステージに入っていく過程などについては、世界情勢なかんずくアメリカの政治経済力の相対的な低下や、日本の政府・外交関係者に衝撃を与えたアメリカによる日本はずしのニクソン訪中(著書ではその日付まで記されているほどに衝撃は強かったものと思われる)、ロシアや中国のプレゼンスの増加など、歯に衣着せず記されている。
また、日本の安全保障という点と地政学的意味合いとしての安全保障、更には日本が果たすべき役割や国際協力という点から、9条の解釈や運用にも踏み込んで記されている。

小和田氏は外交について、「権謀術策うごめくマキャベリズム的なものでもなく、話せば分かるというユートピア的なものでもなく、その中道にある」と何度か記されているが、氏が志向される中道は、私が拝察するに、ネットで云々かんぬんされるものでは(絶対に)ない。
だが、国土が焦土と化した戦争、敗戦とそれにつづく勝者による一方的な占領と裁判を目の当たりにされた経験は、平和を第一に希求する姿勢を確立させた(と拝察される)。
その姿勢は現在、安全保障にとどまらず、疾病や環境など地球規模の問題を克服し、地球市民が平穏に暮らせるシステムの構築に及び、そのためには積極的な(ある種の)力を用いた国際協力が必要だという認識に至られたように拝察される。
それ故に、必要とあらば かなり強硬な姿勢で臨まれることがあることは、「外交は、別の手段による戦争にほかならない」(「外交とは何か」より)という言葉からも伺える。
だが、だからと云えマキャバリズムにはまるのではなく、その手段として信用し求められたのが、国際法なのだと拝察している。

ただ、それが伺える箇所を引用しようとすればあまりに膨大になるし、だからと云え、私の我流の解釈をこれ以上記して誤解を生じさせてはならないと思うので、そのような姿勢の小和田氏が、次代を継いでいく若き職員に『どのようなことを頭に置いて仕事をし、外交官としてまた人間として生きて欲しいか』を語られたものを記しておきたい。(「参画から創造へ」「外交とは何か」で同様のことが記されているが、ここでは「外交とは何か」から引用する)

小和田氏は、外交に携わる人間には「四つの愛」が必要だと語られている。

『「四つの愛」というのは、誠実(Integrity)、洞察(Insight)、知的好奇心(Intellectual curiosity)、個性(Individuality)を愛する心です。
「誠実」とは人間として首尾一貫しており、信頼できるということです。手練手管が外交の神髄のように考えている人が多いですが、実際は相手の信頼をかち取り、誠実な人間関係を作らなければ、外交交渉はうまくいきません。
「洞察力」はものごとの本質を見抜く力です。外交交渉はコンピューターと違って、いつも一定の答えが出てくるものではありません。相手の心理状態や国民感情を的確に判断して、具体的な状況のなかで相手の反応を正しく予測することが、交渉を成功に導く鍵となります。
そういう判断力を育てるには、何でも体験しようという「知的好奇心」が欠かせません知識ばかり詰め込んでも、体験が伴わなければ賢明な判断はできません。
「個性」というのは自分を豊かにして、多面的な人間になることです。日本はよく「顔のない国」といわれますが、「顔のない外交官」は外交官として失格です。
以上の四つを大切にして、これを愛することが「四つの愛」なのですが、そのいずれも英語では「Ⅰ」で始まる言葉です。』

中でも一番大切なものは、「integrity」(誠実)だと「外交とは何か」で言い切っておられる。

この四つの愛は、雅子妃殿下をつうじて敬宮様に確実に受け継がれていると、私は信じている。

そんな敬宮様は、この夏 学習院の教育プログラムを利用し、ウィリアム王子やヘンリー王子をはじめ上流階級の優秀な子弟が学ぶ伝統と格式あるイートン校に夏季留学をされる。

知性に裏打ちされた’’愛’’で海外と手を携えられる皇太子御一家の新しい時代がすぐそこまできていることに、喜びと期待を感じている。

資料
「参画から創造へ -日本外交の目指すもの-」(小和田恒)
「外交とは何か」(小和田恒 聞き手=山室英男)
「平和と学問のために ハーグからのメッセージ」(小和田恒 ロザリン・ヒギンズ・・訳・中坂恵美子)

追記
小和田氏の著書には、あらゆる問題の対処を考える際に、「ゼロサムゲームではない」という表現が何度も登場する。
だが、近年の皇室と皇室報道はゼロサムゲームに拘泥し、結果として皇室本体を徹底的に痛めつけてしまった。
東宮に世継ぎとなる男児がいないという状況から生じたゼロサムゲーム。
それによりイジメ抜かれた皇太子御一家が、この負の遺産を これから迎える困難な時代に解消していかねばならないことは筋違いだと思うが、だからこそ、これからの25年も心をこめて応援していこうと思っている。

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